6日目
おなまえ
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「みょうじちゃんお待たせー!…って、寝てる?」
みょうじの個室を勢いよく開いた王馬は、すやすやと寝息を立てて眠る彼女の姿を確認して扉をそっと閉めた。
未だほんのりと熱の残った彼女の頬にはうっすらと赤みが差しており、普段の幼稚な言動を繰り返す様子からはかけ離れた年相応の大人びた雰囲気を感じた。
黙っていればそれなりに見れるものなんだな、などと本人に知られたら失礼だなんだと大騒ぎされそうな感想を抱く。
とはいえ王馬としては、いつも通り馬鹿みたいな顔をして馬鹿正直に騙されて、馬鹿みたいに大騒ぎする彼女が見たいのであった。
異性に対して求めるものといえば可愛らしさや色気といったものが一般的かもしれないが、生憎彼にとってはそんなものは二の次の要素で、突然そんな女らしい部分を発見したからといってそれ以上特に何かを思うこともなかった。
「待っててって言ったのになー、まぁいいけど」
ぶつぶつと文句を言いながら倉庫から取ってきたタオルを濡らし、それをみょうじの額にそっと乗せる。
突然の冷たさに目を覚ました彼女と視線がかち合った。
「おはよー」
「う…ん、おはよ…?」
寝ぼけたような彼女の様子がおかしくて笑ってしまう。
王馬がベッドの端に腰掛けて「寝ぼけてるの?」と声をかけるが、みょうじは首を傾げるばかりだ。
「また、夢か…」
ぼんやりとした表情のまま、彼女がぽつりとそう呟く。
夢とは何の話なのだろう。王馬には心当たりがなかった。
「にしし、夢でも見ちゃうくらいみょうじちゃんはオレのことが好きなわけ?」
「…好きじゃない」
みょうじは王馬の目を見つめながら冷静にそう返事をして、一拍おいてからまた口を開く。
「…と、思う」
「なにそれ」
「知らない」
みょうじはそう言って布団をずり上げ顔を隠してしまった。
その間際、一瞬だけ見えた彼女の表情には何かに動揺する様子が感じられた気がして、王馬は確かめてやろうと布団の縁に手をかける。
みょうじなりに懇親の力を込めているのか、彼女の顔は簡単には出てこない。
強く抵抗されると意地になってきて、そこまでして確かめてどうするのだろうかと思いながらも王馬は力を緩めることはしなかった。
そうこうしているうちにみょうじの方に先に限界がやって来て、ちらりと彼女の瞳が覗く。
勝利を確信した王馬が一気に力を強めると、困ったように揺れる視線を向ける彼女の表情がさらけ出された。
「…は、オレの勝ちだね」
「ち、近いよ」
顔を寄せながらそう声をかけると、みょうじは顔を逸らしながら不満を洩らす。
それもそうかと身体を離そうとした時、ふと何かを思い出しかけた気がした。
こんなに近くで彼女と会話をしたことはないはずなのに、どうしてそんな気がするのか不思議でならない。
「…ねぇみょうじちゃん、前にもこんなことってあった?」
王馬がそう尋ねると、みょうじは逸らしていた視線をゆっくりと彼に向けた。
向けられた彼女の瞳を見ていると、やはりこれを見るのは初めてではないようなデジャビュのような感覚がある。
それと同時に、何か柔らかいものの感触があったような…。
王馬は吸い込まれるように、半ば無意識に彼女に顔を近づけていた。
みょうじも逃れようとすることなく彼を見つめたまま、2人の唇が触れ合う。
それは一瞬のことだったが、リアルな感触に一足先に我に返った王馬が慌てて身体を離す。
みょうじはぽかんとした表情のままぼーっとしていた。
今、オレ何した…?
自分の行いに自分でついていけなくなった王馬は珍しく動揺していた。
何を言えばいいか分からずまごついている彼と対照的に、みょうじは何も言わずただ冷静な様子で彼を見つめている。
その視線に耐えかね、王馬は「お大事に!」と声を掛けて逃げるようにその場を後にした。
自室に駆け込み、あのリアルな感触を思い出してしまいベッドになだれ込む。
「あーーー!何してんのホント!」
枕に顔を埋め、わざと大きな声を出してみる。
少しは気が紛れるかと思ったが、そう上手く落ち着きを取り戻すことは出来なかった。
どうやって誤魔化そうかと考えあぐねていたが、その後の夕食時に出会ったみょうじはいつもと変わらない様子だった。
もしかして、寝ぼけていて何も覚えていないのではないか。
それならもう全力でその状況に便乗しようと、王馬はとにかく早く忘れてしまおうと思った。
そうして意識してしまっているうちは、そう簡単には忘れられないという事実に気付かないふりをして。
みょうじの個室を勢いよく開いた王馬は、すやすやと寝息を立てて眠る彼女の姿を確認して扉をそっと閉めた。
未だほんのりと熱の残った彼女の頬にはうっすらと赤みが差しており、普段の幼稚な言動を繰り返す様子からはかけ離れた年相応の大人びた雰囲気を感じた。
黙っていればそれなりに見れるものなんだな、などと本人に知られたら失礼だなんだと大騒ぎされそうな感想を抱く。
とはいえ王馬としては、いつも通り馬鹿みたいな顔をして馬鹿正直に騙されて、馬鹿みたいに大騒ぎする彼女が見たいのであった。
異性に対して求めるものといえば可愛らしさや色気といったものが一般的かもしれないが、生憎彼にとってはそんなものは二の次の要素で、突然そんな女らしい部分を発見したからといってそれ以上特に何かを思うこともなかった。
「待っててって言ったのになー、まぁいいけど」
ぶつぶつと文句を言いながら倉庫から取ってきたタオルを濡らし、それをみょうじの額にそっと乗せる。
突然の冷たさに目を覚ました彼女と視線がかち合った。
「おはよー」
「う…ん、おはよ…?」
寝ぼけたような彼女の様子がおかしくて笑ってしまう。
王馬がベッドの端に腰掛けて「寝ぼけてるの?」と声をかけるが、みょうじは首を傾げるばかりだ。
「また、夢か…」
ぼんやりとした表情のまま、彼女がぽつりとそう呟く。
夢とは何の話なのだろう。王馬には心当たりがなかった。
「にしし、夢でも見ちゃうくらいみょうじちゃんはオレのことが好きなわけ?」
「…好きじゃない」
みょうじは王馬の目を見つめながら冷静にそう返事をして、一拍おいてからまた口を開く。
「…と、思う」
「なにそれ」
「知らない」
みょうじはそう言って布団をずり上げ顔を隠してしまった。
その間際、一瞬だけ見えた彼女の表情には何かに動揺する様子が感じられた気がして、王馬は確かめてやろうと布団の縁に手をかける。
みょうじなりに懇親の力を込めているのか、彼女の顔は簡単には出てこない。
強く抵抗されると意地になってきて、そこまでして確かめてどうするのだろうかと思いながらも王馬は力を緩めることはしなかった。
そうこうしているうちにみょうじの方に先に限界がやって来て、ちらりと彼女の瞳が覗く。
勝利を確信した王馬が一気に力を強めると、困ったように揺れる視線を向ける彼女の表情がさらけ出された。
「…は、オレの勝ちだね」
「ち、近いよ」
顔を寄せながらそう声をかけると、みょうじは顔を逸らしながら不満を洩らす。
それもそうかと身体を離そうとした時、ふと何かを思い出しかけた気がした。
こんなに近くで彼女と会話をしたことはないはずなのに、どうしてそんな気がするのか不思議でならない。
「…ねぇみょうじちゃん、前にもこんなことってあった?」
王馬がそう尋ねると、みょうじは逸らしていた視線をゆっくりと彼に向けた。
向けられた彼女の瞳を見ていると、やはりこれを見るのは初めてではないようなデジャビュのような感覚がある。
それと同時に、何か柔らかいものの感触があったような…。
王馬は吸い込まれるように、半ば無意識に彼女に顔を近づけていた。
みょうじも逃れようとすることなく彼を見つめたまま、2人の唇が触れ合う。
それは一瞬のことだったが、リアルな感触に一足先に我に返った王馬が慌てて身体を離す。
みょうじはぽかんとした表情のままぼーっとしていた。
今、オレ何した…?
自分の行いに自分でついていけなくなった王馬は珍しく動揺していた。
何を言えばいいか分からずまごついている彼と対照的に、みょうじは何も言わずただ冷静な様子で彼を見つめている。
その視線に耐えかね、王馬は「お大事に!」と声を掛けて逃げるようにその場を後にした。
自室に駆け込み、あのリアルな感触を思い出してしまいベッドになだれ込む。
「あーーー!何してんのホント!」
枕に顔を埋め、わざと大きな声を出してみる。
少しは気が紛れるかと思ったが、そう上手く落ち着きを取り戻すことは出来なかった。
どうやって誤魔化そうかと考えあぐねていたが、その後の夕食時に出会ったみょうじはいつもと変わらない様子だった。
もしかして、寝ぼけていて何も覚えていないのではないか。
それならもう全力でその状況に便乗しようと、王馬はとにかく早く忘れてしまおうと思った。
そうして意識してしまっているうちは、そう簡単には忘れられないという事実に気付かないふりをして。
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