6日目
おなまえ
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薬を飲んでひと眠りすると、先程まで感じていた気だるさを忘れるくらい元気になっていた。
とはいえ「油断は禁物よ」と東条さんに諭されたため、今日は1日個室でゆっくりしていようと思う。
退屈するんじゃないかと思ったけれど、午前に引き続き登場した王馬くんの存在によってそれどころではなくなった。
「…ねぇ、私もう看病必要ないよ?」
「んー?別に看病しに来たわけじゃないから大丈夫だよ!」
「あー…ばっちり病み上がりなんで看病以外の用事なら帰ってください!お引取りを!」
「ウソウソ!ちゃんと看病しに来てあげたんだから通してよー」
「最初に言ったじゃん!もう看病は必要ないんだって!」
「ねぇ、みょうじちゃんさっきから言ってることめちゃくちゃなの気づいてる?」
押し問答の末に“お見舞い”という名目に落ち着かれてしまい、半ば強制的に部屋に上げることになってしまった。
一応上げる前に、ぶり返した場合は東条さんや茶柱さんに言いつけてやる!と宣言しておいたから、きっと変なことはしてこないはずだ。
「で、何しに来たの?」
「お見舞いでしょ」
「どうせそれだけじゃないくせに…」
「にしし、すっかり疑り深い子になって…そんな子に育てた覚えないんだけどなー」
「育てられた覚えもないよ」
王馬くんを見ていると、どうにも午前中に思い出しかけた記憶の断片が頭をよぎってしまう。
悟られないようにと普段以上に悪態をつきながらベッドに腰掛けると、彼が懐から何かを取り出して受け取れとジェスチャーをしてきた。
どうせろくでもないものだろうけど、受け取る受け取らないの攻防戦に発展したとしても勝ち目はないので素直にそれを受け取っておく。
「ガチャガチャの景品?」
「うん。オレは要らないからあげる」
体良くゴミを押し付けられたのではないかと思いながらカプセルを開けると、中にはしょうが湯が入っていた。
変なイタズラ道具か何かだろうと思っていた分、かなりまともなアイテムの登場にかえって驚いてしまう。
「渡すもの間違えてない…?」
「間違えてないよ」
「そ、そう…ありがとう」
「にしし、どういたしまして!」
ちゃんとお見舞いらしいことできるんだ。
そういえば午前中も結構まともに看病してくれてたし、王馬くんって実は思ってたよりまともな人なのかな?
一瞬そんなことを考えたけれど、それ以外の思い出はかなりめちゃくちゃなものばかりだったのでそんなこともないかと思い直す。
私って案外人が良いんだろうか。
ちょっと優しくしてもらっただけで良い人?なんて思っていたら、この先とんでもない騙され方をしてしまいそうだと自分に対して不安を抱いた。
「それ、風邪予防に良いらしいよ」
「じゃあ意味ないじゃん…」
「でもさー、みょうじちゃんって風邪引かなそうじゃん?今回のも多分風邪じゃないだろうし、変に弱ったところでホントに風邪引いちゃったら可哀想だからさ!」
「なんで風邪じゃないって結論づけてるの!しかも理由が風邪引かなそうだからって何?」
「え、そこ聞いちゃう…?」
「えぇ…う、うん…一応ね」
王馬くんは困ったような表情を浮かべ、私の耳に顔を寄せて囁いた。
「だってほら…馬鹿は風邪引かないって言うでしょ?」
「誰が馬鹿よ!」
聞き捨てならない言葉に王馬くんの顔をじっと睨みつければ、彼は「冗談だってば!」と嘘か本当か分からないようなことを言いながら笑っていた。
「そんなに賢くもないけど馬鹿でもないわ!通知表に1なんて付けられたことないんだからね!」
「別に学力の話なんかしてないじゃん」
「じゃあ何の話をしてるのよ」
「さぁね!ご想像にお任せしますってやつだよ」
澄まし顔で微笑む王馬くんに舌打ちでもしてやりたい気分になったが、それはなんとなくやめておいた。
決してあとが怖いからなんて理由ではない。
代わりにこれ見よがしに大きなため息をついてみれば、不思議と少しだけ気分が落ち着いた。
そして、はたと気付く。
先程彼が私の耳に顔を寄せて来た時から今に至るまで、私達がかなりの至近距離で会話をしていたことに。
じわじわと身体の奥から何かが込み上げてきて、全身に熱が広がっていく。
王馬くんはと言えば、突然ものを言わなくなった私を見て首を傾げていた。
「みょうじちゃん、ちょっとそのままでいてね」
「へっ…!?」
王馬くんの手が私に伸びてきて、彼のひんやりとした手のひらが額に触れる。
冷たくて、ちょっと気持ちいいかも。
なんて思ったのは一瞬のことで、更に近づいた距離に頭の中の熱が上がったような気がした。
「うわ、熱上がったんじゃない?寝てた方がいいかもね」
「え…あ…そう?」
「顔も赤いしね。冷やせるもの持ってくるよ」
「あ、ありがと…」
王馬くんはそっと私を寝かせると、待っててねと言って個室から出ていった。
まだ少し触れられた感触が残る額に自分の手を当ててみると、確かにそこは熱かった。
やっぱりまだ本調子じゃなかったのか、それともこれは別の理由で…?
うっかりまたあのリアルな夢のような記憶を思い出しそうになって、慌ててそれをかき消した。
どうしてかそれを思い出そうとすると私は熱が上がるらしい。
これ以上変なことを考えてしまわないようにと、脳内で羊を数えながら私はゆっくりと瞳を閉じた。
とはいえ「油断は禁物よ」と東条さんに諭されたため、今日は1日個室でゆっくりしていようと思う。
退屈するんじゃないかと思ったけれど、午前に引き続き登場した王馬くんの存在によってそれどころではなくなった。
「…ねぇ、私もう看病必要ないよ?」
「んー?別に看病しに来たわけじゃないから大丈夫だよ!」
「あー…ばっちり病み上がりなんで看病以外の用事なら帰ってください!お引取りを!」
「ウソウソ!ちゃんと看病しに来てあげたんだから通してよー」
「最初に言ったじゃん!もう看病は必要ないんだって!」
「ねぇ、みょうじちゃんさっきから言ってることめちゃくちゃなの気づいてる?」
押し問答の末に“お見舞い”という名目に落ち着かれてしまい、半ば強制的に部屋に上げることになってしまった。
一応上げる前に、ぶり返した場合は東条さんや茶柱さんに言いつけてやる!と宣言しておいたから、きっと変なことはしてこないはずだ。
「で、何しに来たの?」
「お見舞いでしょ」
「どうせそれだけじゃないくせに…」
「にしし、すっかり疑り深い子になって…そんな子に育てた覚えないんだけどなー」
「育てられた覚えもないよ」
王馬くんを見ていると、どうにも午前中に思い出しかけた記憶の断片が頭をよぎってしまう。
悟られないようにと普段以上に悪態をつきながらベッドに腰掛けると、彼が懐から何かを取り出して受け取れとジェスチャーをしてきた。
どうせろくでもないものだろうけど、受け取る受け取らないの攻防戦に発展したとしても勝ち目はないので素直にそれを受け取っておく。
「ガチャガチャの景品?」
「うん。オレは要らないからあげる」
体良くゴミを押し付けられたのではないかと思いながらカプセルを開けると、中にはしょうが湯が入っていた。
変なイタズラ道具か何かだろうと思っていた分、かなりまともなアイテムの登場にかえって驚いてしまう。
「渡すもの間違えてない…?」
「間違えてないよ」
「そ、そう…ありがとう」
「にしし、どういたしまして!」
ちゃんとお見舞いらしいことできるんだ。
そういえば午前中も結構まともに看病してくれてたし、王馬くんって実は思ってたよりまともな人なのかな?
一瞬そんなことを考えたけれど、それ以外の思い出はかなりめちゃくちゃなものばかりだったのでそんなこともないかと思い直す。
私って案外人が良いんだろうか。
ちょっと優しくしてもらっただけで良い人?なんて思っていたら、この先とんでもない騙され方をしてしまいそうだと自分に対して不安を抱いた。
「それ、風邪予防に良いらしいよ」
「じゃあ意味ないじゃん…」
「でもさー、みょうじちゃんって風邪引かなそうじゃん?今回のも多分風邪じゃないだろうし、変に弱ったところでホントに風邪引いちゃったら可哀想だからさ!」
「なんで風邪じゃないって結論づけてるの!しかも理由が風邪引かなそうだからって何?」
「え、そこ聞いちゃう…?」
「えぇ…う、うん…一応ね」
王馬くんは困ったような表情を浮かべ、私の耳に顔を寄せて囁いた。
「だってほら…馬鹿は風邪引かないって言うでしょ?」
「誰が馬鹿よ!」
聞き捨てならない言葉に王馬くんの顔をじっと睨みつければ、彼は「冗談だってば!」と嘘か本当か分からないようなことを言いながら笑っていた。
「そんなに賢くもないけど馬鹿でもないわ!通知表に1なんて付けられたことないんだからね!」
「別に学力の話なんかしてないじゃん」
「じゃあ何の話をしてるのよ」
「さぁね!ご想像にお任せしますってやつだよ」
澄まし顔で微笑む王馬くんに舌打ちでもしてやりたい気分になったが、それはなんとなくやめておいた。
決してあとが怖いからなんて理由ではない。
代わりにこれ見よがしに大きなため息をついてみれば、不思議と少しだけ気分が落ち着いた。
そして、はたと気付く。
先程彼が私の耳に顔を寄せて来た時から今に至るまで、私達がかなりの至近距離で会話をしていたことに。
じわじわと身体の奥から何かが込み上げてきて、全身に熱が広がっていく。
王馬くんはと言えば、突然ものを言わなくなった私を見て首を傾げていた。
「みょうじちゃん、ちょっとそのままでいてね」
「へっ…!?」
王馬くんの手が私に伸びてきて、彼のひんやりとした手のひらが額に触れる。
冷たくて、ちょっと気持ちいいかも。
なんて思ったのは一瞬のことで、更に近づいた距離に頭の中の熱が上がったような気がした。
「うわ、熱上がったんじゃない?寝てた方がいいかもね」
「え…あ…そう?」
「顔も赤いしね。冷やせるもの持ってくるよ」
「あ、ありがと…」
王馬くんはそっと私を寝かせると、待っててねと言って個室から出ていった。
まだ少し触れられた感触が残る額に自分の手を当ててみると、確かにそこは熱かった。
やっぱりまだ本調子じゃなかったのか、それともこれは別の理由で…?
うっかりまたあのリアルな夢のような記憶を思い出しそうになって、慌ててそれをかき消した。
どうしてかそれを思い出そうとすると私は熱が上がるらしい。
これ以上変なことを考えてしまわないようにと、脳内で羊を数えながら私はゆっくりと瞳を閉じた。