1日目
おなまえ
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
1日目:午後
「みょうじちゃんさー、なんでそんなムスッとしてんの?もしかして生理?」
「はぁ!?違うし!ていうかデリカシーなさすぎでしょ、ホント信じらんない!」
これだから男子は。
その一言を添えると、何だか物真似みたいになる気がしたから言わないでおいた。
「にしし、ごめんごめん。でもさー、せっかくくじ引きでペアになったんだからちょっとくらい友好深めようとか思わない?ホントに今の時間の無駄になっちゃうよ?」
「別に、王馬くんと仲良くなるメリットが思いつかないからいい」
「たはー、ひどい言われようだなー!」
食堂で向かい合わせに座るこの男は王馬小吉というらしい。
突如として恋愛観察バラエティとやらに巻き込まれて、10日以内に誰かと結ばれなければここから出られないなんて意味のわからない条件を飲まされている不幸なメンバーの1人。
不本意ながら私もそのメンバーの中に入ってしまっている。
他にもメンバーは沢山いて、その人たちとの話し合いの結果一旦くじ引きでペアを決めて過ごそうということになってしまって今に至る。
まぁ確かに、そうでもしないと誰とも過ごさない人が出てきちゃうのは分かる。
そうなると卒業できない人が生まれちゃうのも分かる。
でも…なんでよりによって初回からこの人なんだ。
出会ってまだ数時間しか経ってないのに、この人は関わると面倒な人だと私の第六感が言ってる。
…本当はただ、自己紹介の時に悪趣味な嘘をかまされたせいで苦手なだけなんだけど。
あ、なんか考えてたらつらくなってきた。
「何死にそうな顔してんの?別に明日からは好きな相手誘えばいいんだから今日ぐらいいいじゃん」
「じゃあ今日はもう帰っていい?」
「だーめ。そしたらオレ今日一日暇になっちゃうじゃん!絶対やだ!」
「そんなの知らないよ!」
「ふーん、みんなで決めたことを初っ端から守れない人なんだって思われて、ひっそりと距離置かれてもいいんだね!だったら帰れば?」
「ぐぅ…」
「あらら、ぐうの音は出ちゃったね」
確かに私以外のみんなだってさほど仲良くもない人と一緒の時間を過ごして、多分少しでも仲良くなる努力をしているところなんだと思う。
それを私だけ無断で逃げ出してしまったら、なんのためにくじを引いたんだって話になっちゃうよね。
文句があるならくじを引く前に言うべきだし。
距離を置かれるのだって困る。
そうなったら、もしかしたら一生ここに閉じ込められてしまうかもしれないし。
普通に考えればありえない話だけど、モノクマならそういうこともやりかねないと思ってしまった。
つまり、今は我慢の時なんだ。
「…分かった、今だけは友好を深めるとしましょう」
「しょうがないなー、みょうじちゃんがどうしてもって言うから仲良くしてあげるだけなんだからね!」
「あー、やっぱり王馬くん嫌い!無理!チェンジ!」
「あはは!嘘だよー!…じゃあせっかくだからお互いにとって有益な話でもしようか」
ね?と言いながら王馬くんは首を傾けてにっこりと笑った。
不敵な笑みとまではいかないけど、なんだか裏があるような気がしてならない。
でもどうせ何か話さないといけないなら有益であるに越したことはない…そう思いなおして私は頷いた。
「みょうじちゃんは誰と卒業したい?」
「ぶっ…!」
「汚いなー」
「だっていきなり変なこと聞くから…」
「いきなりでもないよ。10日間って期限の中で誰かと結ばれなきゃいけないんだからさ、それこそ明日からでもちゃんと狙い定めないと行き遅れるかもよ?」
「それはそうだけど」
確かに10日で誰かと結ばれるなんてちんたらしていたら確実に無理だ。
お互いに好意があるところからのスタートならまだしも、私たちはお互いに初対面で好感度にプラスもマイナスもない。
フラットすぎて何をどうすればいいのか皆目見当もつかない状態だ。
「…というかそもそもの話聞いていい?」
「何?」
「みょうじちゃんって、男苦手でしょ」
「苦手…かも」
「男友達は?」
「……いない」
「じゃあ彼氏がいたこととか」
「ないなぁ…」
「あは、なかなか絶望的な状況だね!」
「そうですね…はは…」
自分の経験値のなさを思い出して文字通り絶望。
誰がいいかなんて聞かれても何も思いつかないし、そういう意味で結ばれる前提だと考えれば寧ろ誰であっても割と嫌かもしれない。
事の重大さを痛感してガタガタ震えていると、王馬くんはそんな私を見て小さく笑ったあと、内緒話をするみたいに口元に手を当てて顔を寄せてきた。
「だったらさ、オレと組まない?」
「…はい?」
「だからー、オレと卒業しないかって意味」
「はぁぁああ?」
思わず大きな声が出て、王馬くんはうるさいとでも言いたげに耳を塞いで顔を離した。
いや、そんな訝しげな顔されてもそれは私のリアクションだから。
私も負けじと怪訝な顔をしていると、彼はやれやれと言いたげにため息をついた。
「別に好きになれなんて言ってないじゃん。ほら、契約みたいなもんだよ。オレもみょうじちゃんも卒業はしたい、でもキミには相手いないしオレは相手を探すのが面倒。それなら手を組んじゃえば早いよね?」
「いや、相手がいないのは今の話で…別に明日にはひょっこり出てくるかもしれないから…」
「へー、そうなんだ頑張れー。この話は他の人に持ちかけるからいいよー」
あっさりと話に決着がついて、ホッとしたと同時にこの先への不安がまた襲いかかってくる。
あれ、本当に時間が経てば相手見つかると思ってたのかな、さっきまでの私。
今の私にはとてもそうは思えないんだけど。
王馬くんはといえば涼しい顔で、さっきガチャガチャで手に入れてた生ぬるいタピオカジュースを飲んでいる。
賞味期限大丈夫なのかな…なんてどうでもいい事が頭をよぎって、そんな場合じゃないからと首を振った。
あれ、もしかしてさっきの王馬くんの提案を飲んだ方が安全なのでは?
結局何をどう考えてもその結論に行き着くような気がしてきて、おずおずと目の前の彼に声をかける。
「あ、あの…王馬くん」
「んー?」
「さっきの話なんだけど、やっぱり…その、手を組もうかなって…」
「えー?みょうじちゃんってばそんなにオレと卒業したいの?大胆だね!」
「ちがっ…!そういうことじゃなくて!…あれ?いや違わないかもしれないけど違くて!」
「ぶ…あっははは!分かってるよー。みょうじちゃんってからかいがいがあるんだね!」
「う…こんな状況じゃなかったら絶対仲良くなんかなりたくなかった!」
「はいはい、残念だったねー。…それじゃあ、さっきの話は交渉成立ってことでいい?」
別に喜んでそうするわけじゃないんだからな、という意志を込めて私は口をへの字に曲げたまま頷いた。
そんな顔してたらブスになっちゃうよ?あ、元からブスだったね!
と不愉快な声が聞こえた気がするが、怒るとシワが増えると言うし気のせいだったということにしておく。
この日王馬くんと話し合って決めたことは2つ。
1つ目は、1日2回の自由行動の内少なくとも1回は一緒に過ごすこと。これは表面上だけでいいらしい。同じ空間にいれば別々のことをしていてもOK。多分他のみんなから怪しまれないようにするためなんだろう。
2つ目は、もしもお互いに特別な相手が出来た時は速やかに相談すること。2人揃って別の相手が出来たなら円満に契約は解除。もしもどちらか片方だけだった時は要相談、ということで。
てっきり1回決めたことを撤回するなんて許されないかと思っていたけど、そこは案外良心的なんだな。まぁ、相談する機会なんて少なくとも私にはないだろうけど。
「卒業した後は、もう自由なんだよね?」
「そうだね。あ、でも別にその後も一緒に居たいって言うなら考えてあげないこともないよ!みょうじちゃんだったら組織に入れてあげてもいいかなーって思うし」
「ノーセンキュー。…ていうか、組織って?」
「にしし…聞いちゃったら拒否権なくなるけど大丈夫?」
「あ、結構です」
多分王馬くんが総統を務める組織のことなんだろうけど、そういえば彼は何の総統なんだ?
こんな嘘つきでヘラヘラしてる高校生男子がトップの組織って……ろくなもんじゃないだろうな、うん。
深堀りはよそう…と心に決めて、どうか無事に卒業できますようにという祈りを捧げながらその日一日を終えた。
「みょうじちゃんさー、なんでそんなムスッとしてんの?もしかして生理?」
「はぁ!?違うし!ていうかデリカシーなさすぎでしょ、ホント信じらんない!」
これだから男子は。
その一言を添えると、何だか物真似みたいになる気がしたから言わないでおいた。
「にしし、ごめんごめん。でもさー、せっかくくじ引きでペアになったんだからちょっとくらい友好深めようとか思わない?ホントに今の時間の無駄になっちゃうよ?」
「別に、王馬くんと仲良くなるメリットが思いつかないからいい」
「たはー、ひどい言われようだなー!」
食堂で向かい合わせに座るこの男は王馬小吉というらしい。
突如として恋愛観察バラエティとやらに巻き込まれて、10日以内に誰かと結ばれなければここから出られないなんて意味のわからない条件を飲まされている不幸なメンバーの1人。
不本意ながら私もそのメンバーの中に入ってしまっている。
他にもメンバーは沢山いて、その人たちとの話し合いの結果一旦くじ引きでペアを決めて過ごそうということになってしまって今に至る。
まぁ確かに、そうでもしないと誰とも過ごさない人が出てきちゃうのは分かる。
そうなると卒業できない人が生まれちゃうのも分かる。
でも…なんでよりによって初回からこの人なんだ。
出会ってまだ数時間しか経ってないのに、この人は関わると面倒な人だと私の第六感が言ってる。
…本当はただ、自己紹介の時に悪趣味な嘘をかまされたせいで苦手なだけなんだけど。
あ、なんか考えてたらつらくなってきた。
「何死にそうな顔してんの?別に明日からは好きな相手誘えばいいんだから今日ぐらいいいじゃん」
「じゃあ今日はもう帰っていい?」
「だーめ。そしたらオレ今日一日暇になっちゃうじゃん!絶対やだ!」
「そんなの知らないよ!」
「ふーん、みんなで決めたことを初っ端から守れない人なんだって思われて、ひっそりと距離置かれてもいいんだね!だったら帰れば?」
「ぐぅ…」
「あらら、ぐうの音は出ちゃったね」
確かに私以外のみんなだってさほど仲良くもない人と一緒の時間を過ごして、多分少しでも仲良くなる努力をしているところなんだと思う。
それを私だけ無断で逃げ出してしまったら、なんのためにくじを引いたんだって話になっちゃうよね。
文句があるならくじを引く前に言うべきだし。
距離を置かれるのだって困る。
そうなったら、もしかしたら一生ここに閉じ込められてしまうかもしれないし。
普通に考えればありえない話だけど、モノクマならそういうこともやりかねないと思ってしまった。
つまり、今は我慢の時なんだ。
「…分かった、今だけは友好を深めるとしましょう」
「しょうがないなー、みょうじちゃんがどうしてもって言うから仲良くしてあげるだけなんだからね!」
「あー、やっぱり王馬くん嫌い!無理!チェンジ!」
「あはは!嘘だよー!…じゃあせっかくだからお互いにとって有益な話でもしようか」
ね?と言いながら王馬くんは首を傾けてにっこりと笑った。
不敵な笑みとまではいかないけど、なんだか裏があるような気がしてならない。
でもどうせ何か話さないといけないなら有益であるに越したことはない…そう思いなおして私は頷いた。
「みょうじちゃんは誰と卒業したい?」
「ぶっ…!」
「汚いなー」
「だっていきなり変なこと聞くから…」
「いきなりでもないよ。10日間って期限の中で誰かと結ばれなきゃいけないんだからさ、それこそ明日からでもちゃんと狙い定めないと行き遅れるかもよ?」
「それはそうだけど」
確かに10日で誰かと結ばれるなんてちんたらしていたら確実に無理だ。
お互いに好意があるところからのスタートならまだしも、私たちはお互いに初対面で好感度にプラスもマイナスもない。
フラットすぎて何をどうすればいいのか皆目見当もつかない状態だ。
「…というかそもそもの話聞いていい?」
「何?」
「みょうじちゃんって、男苦手でしょ」
「苦手…かも」
「男友達は?」
「……いない」
「じゃあ彼氏がいたこととか」
「ないなぁ…」
「あは、なかなか絶望的な状況だね!」
「そうですね…はは…」
自分の経験値のなさを思い出して文字通り絶望。
誰がいいかなんて聞かれても何も思いつかないし、そういう意味で結ばれる前提だと考えれば寧ろ誰であっても割と嫌かもしれない。
事の重大さを痛感してガタガタ震えていると、王馬くんはそんな私を見て小さく笑ったあと、内緒話をするみたいに口元に手を当てて顔を寄せてきた。
「だったらさ、オレと組まない?」
「…はい?」
「だからー、オレと卒業しないかって意味」
「はぁぁああ?」
思わず大きな声が出て、王馬くんはうるさいとでも言いたげに耳を塞いで顔を離した。
いや、そんな訝しげな顔されてもそれは私のリアクションだから。
私も負けじと怪訝な顔をしていると、彼はやれやれと言いたげにため息をついた。
「別に好きになれなんて言ってないじゃん。ほら、契約みたいなもんだよ。オレもみょうじちゃんも卒業はしたい、でもキミには相手いないしオレは相手を探すのが面倒。それなら手を組んじゃえば早いよね?」
「いや、相手がいないのは今の話で…別に明日にはひょっこり出てくるかもしれないから…」
「へー、そうなんだ頑張れー。この話は他の人に持ちかけるからいいよー」
あっさりと話に決着がついて、ホッとしたと同時にこの先への不安がまた襲いかかってくる。
あれ、本当に時間が経てば相手見つかると思ってたのかな、さっきまでの私。
今の私にはとてもそうは思えないんだけど。
王馬くんはといえば涼しい顔で、さっきガチャガチャで手に入れてた生ぬるいタピオカジュースを飲んでいる。
賞味期限大丈夫なのかな…なんてどうでもいい事が頭をよぎって、そんな場合じゃないからと首を振った。
あれ、もしかしてさっきの王馬くんの提案を飲んだ方が安全なのでは?
結局何をどう考えてもその結論に行き着くような気がしてきて、おずおずと目の前の彼に声をかける。
「あ、あの…王馬くん」
「んー?」
「さっきの話なんだけど、やっぱり…その、手を組もうかなって…」
「えー?みょうじちゃんってばそんなにオレと卒業したいの?大胆だね!」
「ちがっ…!そういうことじゃなくて!…あれ?いや違わないかもしれないけど違くて!」
「ぶ…あっははは!分かってるよー。みょうじちゃんってからかいがいがあるんだね!」
「う…こんな状況じゃなかったら絶対仲良くなんかなりたくなかった!」
「はいはい、残念だったねー。…それじゃあ、さっきの話は交渉成立ってことでいい?」
別に喜んでそうするわけじゃないんだからな、という意志を込めて私は口をへの字に曲げたまま頷いた。
そんな顔してたらブスになっちゃうよ?あ、元からブスだったね!
と不愉快な声が聞こえた気がするが、怒るとシワが増えると言うし気のせいだったということにしておく。
この日王馬くんと話し合って決めたことは2つ。
1つ目は、1日2回の自由行動の内少なくとも1回は一緒に過ごすこと。これは表面上だけでいいらしい。同じ空間にいれば別々のことをしていてもOK。多分他のみんなから怪しまれないようにするためなんだろう。
2つ目は、もしもお互いに特別な相手が出来た時は速やかに相談すること。2人揃って別の相手が出来たなら円満に契約は解除。もしもどちらか片方だけだった時は要相談、ということで。
てっきり1回決めたことを撤回するなんて許されないかと思っていたけど、そこは案外良心的なんだな。まぁ、相談する機会なんて少なくとも私にはないだろうけど。
「卒業した後は、もう自由なんだよね?」
「そうだね。あ、でも別にその後も一緒に居たいって言うなら考えてあげないこともないよ!みょうじちゃんだったら組織に入れてあげてもいいかなーって思うし」
「ノーセンキュー。…ていうか、組織って?」
「にしし…聞いちゃったら拒否権なくなるけど大丈夫?」
「あ、結構です」
多分王馬くんが総統を務める組織のことなんだろうけど、そういえば彼は何の総統なんだ?
こんな嘘つきでヘラヘラしてる高校生男子がトップの組織って……ろくなもんじゃないだろうな、うん。
深堀りはよそう…と心に決めて、どうか無事に卒業できますようにという祈りを捧げながらその日一日を終えた。
1/1ページ