本編【全16話】
おなまえ
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
キーボくんととばっちり
※キーボ視点
デートチケットというものを使えばこの空間では任意の相手と2人で過ごすことができます。
でもボクはロボットですから、生憎恋という感情が分かりません。
つまり、誰と過ごせばいいのか分からないんです。
こんな時はボクの繊細なAIを用いた……消去法で行きましょう。
まずこの場にいる人は…入間さん、真宮寺クン、アンジーさん……なんだかアブノーマルな恋しか学ぶことが出来なさそうです。
どうしたものかと悩み、もういっそ自室に戻ろうかと思っていた時でした。
「あっ、みょうじさん!すみません、少しいいですか?」
「キーボくん、大丈夫だよー。どうかした?」
「えっと…あの、これを…」
どんな風に誘うものなのかよく分からず、デートチケットをみょうじさんに差し出してみました。
明らかに言葉は足りていませんが、どうやら彼女はそれだけで察してくれたようです。
「わぁ、キーボくんから誘ってくれるなんて珍しいね。もちろんいいよ、どこへ行こうか?」
「ありがとうございます!それでは中庭を散歩しましょうか」
「うん、そうしよー」
みょうじさんはこれまでの独自のリサーチにより、この色の濃い面々の中では比較的スタンダードな人です。
それに怒っているところを見たこともありませんし、きっと優しい人です。
ボクのような恋について学びたいロボットには、こういう初心者向けな相手がうってつけだと思いました。
「みょうじさんはデートチケットを使ったことはあるんですか?」
「うん、あるよ。だってそれが無いと遊べない場所があるからねー」
「なるほど、言われてみればそうですね。よく遊ぶ人はいるんですか?」
「うーん。楓ちゃん…夢野さん…茶柱さん……あ、あと王馬くんかな」
ボクの中に残っているみょうじさんのメモリーを確認してみれば、確かにその面々と行動を共にしていることが多いのは事実なようです。
ふむふむ、とボクがデータの照合をして納得しているとみょうじさんは隣でくすくす笑い始めました。
「な、なんですか!ボクは何か変なことしていましたか?」
「ふふ、ううん。なんでもないの、ごめんね。ただ…何だか事情聴取みたいでおかしくて」
言われてみれば確かにそうかもしれないと思いました。
みょうじさんに質問してばかりで、これでは会話とは言えないですね。
「すみません、では今度はみょうじさんがボクに質問して見てください。答えられるものは全て答えてみせますよ」
「そうだなぁ…じゃあ、キーボくんは何かを食べてみたいって思ったことある?」
「えぇと…そもそもボクはロボットですから、飲食の必要がありません。なのであまり考えたことがないですね」
「そっかー、まぁそうだよね。変なこと聞いちゃったね」
「…どうして、そんなことを聞いたんですか?」
みょうじさんは少し残念そうに笑っています。
先程質問のターンを交代したばかりでしたが、ついその理由が気になってボクはまたみょうじさんに質問してしまいました。
「私はお菓子を作るのが好きだから、もしキーボくんが物を食べてみたいって思っていたとしたら…いつか、一緒にお菓子を食べられる日が来るかなーって思っただけだよ」
えへへ、と笑いながらみょうじさんがボクにそう答えました。
なんだか少し、心臓部のパーツに熱が篭もっているのを感じます。故障でしょうか?
なんだか… みょうじさんの笑顔見ていると、ボクもいつか今のお話のような夢を見てみたい…そう思えてきます。
「みょうじさん、あの…」
「どうしたの、キーボくん?」
「これからも時々、一緒に…」
「みょうじちゃん見ーっけ!」
ボクと遊んでくれませんか?
そう続けたかった言葉は、少し離れたところから聞こえてきた大きな声に圧倒されて途切れてしまいました。
一体誰が…?薄々予想はできていましたが、声の聞こえた方を見ればやはりそこに居たのは王馬クンでした。
「わー、見つかっちゃった」
「にしし、じゃあ隠れんぼ勝負はオレの勝ちね!」
「ええっ、私って今王馬くんと隠れんぼしてたんだ!」
「嘘だよー!勝負はまだ始まってなかったよ!」
「あはは、また騙されちゃったー」
げんなりとしているボクを他所に、2人はゆるーい会話を展開しています。
会話というより、みょうじさんが王馬クンにからかわれているだけにも見えますが。
「あの、王馬クン…なんなんですか突然…」
「んー?キー坊いたんだ!ごめんごめん。オレって視界がサーモグラフィー式だから、体温のない心も冷たいロボのことは見えなかったんだよねー」
「なんですかその理由!そんな訳ないじゃないですか!というかさり気なくロボット差別するのはやめてください!」
「あはは、2人は仲良しさんなんだね」
これのどこが仲良しなんでしょう。
思っていたよりみょうじさんも変わった感性の人だったみたいです。
「さーてみょうじちゃん、隠れんぼの本番は今からだよ!今から1分数えるから、その間にオレに見つからないところに隠れてね!はいっスタート!」
「1分?あわわ、急がなきゃ…!あっ私隠れなきゃいけなくなっちゃったから、キーボくんまたねー!」
「え?ちょ、みょうじさーん!?」
みょうじさんは王馬クンの急な申し出に対して、素直に慌てた様子で校舎へ駆けて行きました。
あれを真に受ける人がいたことに驚きを隠せません。
呆然としている内にとうとうみょうじさんの姿はここから見えなくなりました。
「にしし、みょうじちゃんは素直だなー」
「王馬クン、あまりからかいすぎるのもよくないですよ」
「からかってるつもりは無いよ。ちゃんと後で探しに行くからねー」
「そういう問題じゃありません。そもそも彼女は今ボクとデートを…」
「あのさぁ」
そこまで言ったところで、王馬クンはボクの言葉を遮るように声を発しました。
なんでしょう、ボクは彼に恨みをかうようなことをした覚えはありませんがどうしてかほんの少しの恐怖を感じています。
「デートの邪魔されたくなかったら、次からはみょうじちゃん以外の誰かを選びなよ」
「え…?それはどういうことですか?」
言葉の真意が分からずに困惑していると、王馬クンはやれやれと言いたげにため息をついています。
「はぁ…これだから人の気持ちが分からないロボットは…」
「ま、またロボット差別をしましたね!?王馬クンひどいです!」
「にしし、冗談だって!とりあえず、キー坊のそのデートチケットは入間ちゃんにでも渡しておいで!」
「な、なんでここで入間さんを…」
「あー!そろそろ1分経つ頃だね!みょうじちゃんを探しに行かなきゃ!…ちなみに、さっきの忠告は冗談じゃないからよーく覚えといてね!」
王馬クンはろくにボクの話も聞かず、嵐のように去っていきました。
ボクはといえば去り際の彼の鋭い視線を受けて、ロボットなのに足がすくんで動けなくなったようです。
これがいわゆる気圧されるというやつでしょうか、とりあえず今後は言われた通り入間さんにデートチケットを渡してみようと思います。
何故かボクの高性能な人工知能が、そうしなければならないと警鐘を鳴らしているような…そんな気がしました。
※キーボ視点
デートチケットというものを使えばこの空間では任意の相手と2人で過ごすことができます。
でもボクはロボットですから、生憎恋という感情が分かりません。
つまり、誰と過ごせばいいのか分からないんです。
こんな時はボクの繊細なAIを用いた……消去法で行きましょう。
まずこの場にいる人は…入間さん、真宮寺クン、アンジーさん……なんだかアブノーマルな恋しか学ぶことが出来なさそうです。
どうしたものかと悩み、もういっそ自室に戻ろうかと思っていた時でした。
「あっ、みょうじさん!すみません、少しいいですか?」
「キーボくん、大丈夫だよー。どうかした?」
「えっと…あの、これを…」
どんな風に誘うものなのかよく分からず、デートチケットをみょうじさんに差し出してみました。
明らかに言葉は足りていませんが、どうやら彼女はそれだけで察してくれたようです。
「わぁ、キーボくんから誘ってくれるなんて珍しいね。もちろんいいよ、どこへ行こうか?」
「ありがとうございます!それでは中庭を散歩しましょうか」
「うん、そうしよー」
みょうじさんはこれまでの独自のリサーチにより、この色の濃い面々の中では比較的スタンダードな人です。
それに怒っているところを見たこともありませんし、きっと優しい人です。
ボクのような恋について学びたいロボットには、こういう初心者向けな相手がうってつけだと思いました。
「みょうじさんはデートチケットを使ったことはあるんですか?」
「うん、あるよ。だってそれが無いと遊べない場所があるからねー」
「なるほど、言われてみればそうですね。よく遊ぶ人はいるんですか?」
「うーん。楓ちゃん…夢野さん…茶柱さん……あ、あと王馬くんかな」
ボクの中に残っているみょうじさんのメモリーを確認してみれば、確かにその面々と行動を共にしていることが多いのは事実なようです。
ふむふむ、とボクがデータの照合をして納得しているとみょうじさんは隣でくすくす笑い始めました。
「な、なんですか!ボクは何か変なことしていましたか?」
「ふふ、ううん。なんでもないの、ごめんね。ただ…何だか事情聴取みたいでおかしくて」
言われてみれば確かにそうかもしれないと思いました。
みょうじさんに質問してばかりで、これでは会話とは言えないですね。
「すみません、では今度はみょうじさんがボクに質問して見てください。答えられるものは全て答えてみせますよ」
「そうだなぁ…じゃあ、キーボくんは何かを食べてみたいって思ったことある?」
「えぇと…そもそもボクはロボットですから、飲食の必要がありません。なのであまり考えたことがないですね」
「そっかー、まぁそうだよね。変なこと聞いちゃったね」
「…どうして、そんなことを聞いたんですか?」
みょうじさんは少し残念そうに笑っています。
先程質問のターンを交代したばかりでしたが、ついその理由が気になってボクはまたみょうじさんに質問してしまいました。
「私はお菓子を作るのが好きだから、もしキーボくんが物を食べてみたいって思っていたとしたら…いつか、一緒にお菓子を食べられる日が来るかなーって思っただけだよ」
えへへ、と笑いながらみょうじさんがボクにそう答えました。
なんだか少し、心臓部のパーツに熱が篭もっているのを感じます。故障でしょうか?
なんだか… みょうじさんの笑顔見ていると、ボクもいつか今のお話のような夢を見てみたい…そう思えてきます。
「みょうじさん、あの…」
「どうしたの、キーボくん?」
「これからも時々、一緒に…」
「みょうじちゃん見ーっけ!」
ボクと遊んでくれませんか?
そう続けたかった言葉は、少し離れたところから聞こえてきた大きな声に圧倒されて途切れてしまいました。
一体誰が…?薄々予想はできていましたが、声の聞こえた方を見ればやはりそこに居たのは王馬クンでした。
「わー、見つかっちゃった」
「にしし、じゃあ隠れんぼ勝負はオレの勝ちね!」
「ええっ、私って今王馬くんと隠れんぼしてたんだ!」
「嘘だよー!勝負はまだ始まってなかったよ!」
「あはは、また騙されちゃったー」
げんなりとしているボクを他所に、2人はゆるーい会話を展開しています。
会話というより、みょうじさんが王馬クンにからかわれているだけにも見えますが。
「あの、王馬クン…なんなんですか突然…」
「んー?キー坊いたんだ!ごめんごめん。オレって視界がサーモグラフィー式だから、体温のない心も冷たいロボのことは見えなかったんだよねー」
「なんですかその理由!そんな訳ないじゃないですか!というかさり気なくロボット差別するのはやめてください!」
「あはは、2人は仲良しさんなんだね」
これのどこが仲良しなんでしょう。
思っていたよりみょうじさんも変わった感性の人だったみたいです。
「さーてみょうじちゃん、隠れんぼの本番は今からだよ!今から1分数えるから、その間にオレに見つからないところに隠れてね!はいっスタート!」
「1分?あわわ、急がなきゃ…!あっ私隠れなきゃいけなくなっちゃったから、キーボくんまたねー!」
「え?ちょ、みょうじさーん!?」
みょうじさんは王馬クンの急な申し出に対して、素直に慌てた様子で校舎へ駆けて行きました。
あれを真に受ける人がいたことに驚きを隠せません。
呆然としている内にとうとうみょうじさんの姿はここから見えなくなりました。
「にしし、みょうじちゃんは素直だなー」
「王馬クン、あまりからかいすぎるのもよくないですよ」
「からかってるつもりは無いよ。ちゃんと後で探しに行くからねー」
「そういう問題じゃありません。そもそも彼女は今ボクとデートを…」
「あのさぁ」
そこまで言ったところで、王馬クンはボクの言葉を遮るように声を発しました。
なんでしょう、ボクは彼に恨みをかうようなことをした覚えはありませんがどうしてかほんの少しの恐怖を感じています。
「デートの邪魔されたくなかったら、次からはみょうじちゃん以外の誰かを選びなよ」
「え…?それはどういうことですか?」
言葉の真意が分からずに困惑していると、王馬クンはやれやれと言いたげにため息をついています。
「はぁ…これだから人の気持ちが分からないロボットは…」
「ま、またロボット差別をしましたね!?王馬クンひどいです!」
「にしし、冗談だって!とりあえず、キー坊のそのデートチケットは入間ちゃんにでも渡しておいで!」
「な、なんでここで入間さんを…」
「あー!そろそろ1分経つ頃だね!みょうじちゃんを探しに行かなきゃ!…ちなみに、さっきの忠告は冗談じゃないからよーく覚えといてね!」
王馬クンはろくにボクの話も聞かず、嵐のように去っていきました。
ボクはといえば去り際の彼の鋭い視線を受けて、ロボットなのに足がすくんで動けなくなったようです。
これがいわゆる気圧されるというやつでしょうか、とりあえず今後は言われた通り入間さんにデートチケットを渡してみようと思います。
何故かボクの高性能な人工知能が、そうしなければならないと警鐘を鳴らしているような…そんな気がしました。