本編【全16話】
おなまえ
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最原くんととばっちり
※最原視点
僕たちは今、あまり現実的とは言えない環境に身を置いている。
この世界にこんな技術があったのかと思うほどの最先端設備の数々、空から降ってくる建造物、見れば見るほどまるでフィクションの世界だ。
そんなフィクションのような世界に集められた僕ら17人の超高校級と呼ばれる高校生たちは、この異常な空間での恋愛を強要されている。
「はい、みょうじちゃん。あーんして!」
「あーん」
今日も食堂では朝から賑やかな声が聞こえてくる。
僕の斜め向かいで何やら楽しげに騒いでいるのは王馬くんだ。
みょうじさんに向かって食べ物を掬ったスプーンを向け、それに対して彼女はなんの躊躇いもなく口を開く。
なんというか、仲良いんだなこの2人…と、実はこれは毎朝行われている光景なのだが改めてそう思った。
ついでに言っておくと、別にこの2人は恋人関係というわけでもないらしい。
「なーんてね、嘘だよー!」
「わぁ、また騙されちゃったよー」
「にしし、みょうじちゃんってホントお馬鹿さんだよねー」
みょうじさんの口元までもうわずかというところで、王馬くんがそのスプーンを素早く引いて自分で咥えてしまった。
古典的なイタズラだなと思うけれど、たったそれだけで2人はケラケラ笑ってとても楽しげにしている。
みょうじさんって凄く優しい人なんだろうな。
毎度の茶番に飽きる様子を見せずに付き合えるって、そうそう出来ることではないだろう。
「あ、みょうじちゃんほっぺにご飯粒ついてるよ」
「本当?どこだろうーこの辺りかな?」
「違う違う!…そうだ、取ってあげるから目つぶっててー」
「ありがとう、お願いしまーす」
ご飯粒をとるのに何で目を閉じる必要があるんだ。
というかみょうじさんはみょうじさんで、あんなに騙され続けているのに何故言われるがまま目を閉じてしまうんだ。
きっとまた王馬くんが何かイタズラを企んでいるんだろうと思いつつ、心の中でそんな突っ込みを入れる。
特に気にしているわけではなかったけれど、今度は何をしでかすのだろうかと何気なく2人のいる方向に視線を向ける。
なんだか、王馬くんの顔が段々みょうじさんに近づいているような…。
まさか。
「ちょっと王馬くん何してるの!?」
気づけば僕は咄嗟に立ち上がって声を掛けていた。
「何って、みょうじちゃんのほっぺのご飯粒取ってあげようとしてただけだよ?」
「それならなんで手じゃなくて顔を近づける必要があるんだよ!?」
「にしし、最原ちゃん真っ赤だよー?なーんかヤラシイこと考えてる?」
王馬くんが意地悪く口角を上げる。
しまった、僕が見ていることに気がついててわざとやっていたんだな…。
というか、よく見たらみょうじさんにご飯粒なんて付いていないじゃないか。
知らぬ間にイタズラの標的にされていて、まんまと引っかかってしまうなんて…。
そんな事を考えて深くため息をつくと、おずおずとみょうじさんが口を開いた。
「な、何が起こってるの?私はもう目を開けていいのかな…?」
目を閉じたままあわあわとしているみょうじさんを見て、僕と王馬くんは顔を見合わせて吹き出してしまった。
「ぷ、あははは!みょうじちゃんってば最高!」
「っく、あはは。みょうじさん、もう目を開いても問題ないよ。というか、多分最初からご飯粒なんて付いてなかったんだと思うよ」
「えぇっ!そうなの!?…って、何で2人ともそんなに笑ってるの?何があったのか教えてよー!」
それからひとしきり笑った後、そのままあの2人と普通に談笑しながら食事を終えた。
みょうじさんに些細なイタズラを繰り返す王馬くんの気持ちが少しだけ分かったような気がする。
席を立ち、みょうじさんの後に続いて食堂から出ようとした時だった。
背後にいた王馬くんが、ちょいちょいと僕の肩をつつく。
何だろうと思い振り返ると、王馬くんはにっこり笑顔を浮かべたかと思うと意地悪く口角を歪めてこう言った。
「最原ちゃん、みょうじちゃんはオレの大事なオモチャなんだから手出さないでよね」
「なっ…」
僕が驚いて固まっていると、その隙に王馬くんは僕の脇をすり抜けて先に食堂を出ていってしまった。
少し離れたところからみょうじさんの名前を呼ぶ王馬くんの声が聞こえる。
これから不用意にみょうじさんに近づくのはやめておこう。
最後に見た王馬くんの、全く笑っていない目を思い浮かべながら僕は密かにそう誓った。
※最原視点
僕たちは今、あまり現実的とは言えない環境に身を置いている。
この世界にこんな技術があったのかと思うほどの最先端設備の数々、空から降ってくる建造物、見れば見るほどまるでフィクションの世界だ。
そんなフィクションのような世界に集められた僕ら17人の超高校級と呼ばれる高校生たちは、この異常な空間での恋愛を強要されている。
「はい、みょうじちゃん。あーんして!」
「あーん」
今日も食堂では朝から賑やかな声が聞こえてくる。
僕の斜め向かいで何やら楽しげに騒いでいるのは王馬くんだ。
みょうじさんに向かって食べ物を掬ったスプーンを向け、それに対して彼女はなんの躊躇いもなく口を開く。
なんというか、仲良いんだなこの2人…と、実はこれは毎朝行われている光景なのだが改めてそう思った。
ついでに言っておくと、別にこの2人は恋人関係というわけでもないらしい。
「なーんてね、嘘だよー!」
「わぁ、また騙されちゃったよー」
「にしし、みょうじちゃんってホントお馬鹿さんだよねー」
みょうじさんの口元までもうわずかというところで、王馬くんがそのスプーンを素早く引いて自分で咥えてしまった。
古典的なイタズラだなと思うけれど、たったそれだけで2人はケラケラ笑ってとても楽しげにしている。
みょうじさんって凄く優しい人なんだろうな。
毎度の茶番に飽きる様子を見せずに付き合えるって、そうそう出来ることではないだろう。
「あ、みょうじちゃんほっぺにご飯粒ついてるよ」
「本当?どこだろうーこの辺りかな?」
「違う違う!…そうだ、取ってあげるから目つぶっててー」
「ありがとう、お願いしまーす」
ご飯粒をとるのに何で目を閉じる必要があるんだ。
というかみょうじさんはみょうじさんで、あんなに騙され続けているのに何故言われるがまま目を閉じてしまうんだ。
きっとまた王馬くんが何かイタズラを企んでいるんだろうと思いつつ、心の中でそんな突っ込みを入れる。
特に気にしているわけではなかったけれど、今度は何をしでかすのだろうかと何気なく2人のいる方向に視線を向ける。
なんだか、王馬くんの顔が段々みょうじさんに近づいているような…。
まさか。
「ちょっと王馬くん何してるの!?」
気づけば僕は咄嗟に立ち上がって声を掛けていた。
「何って、みょうじちゃんのほっぺのご飯粒取ってあげようとしてただけだよ?」
「それならなんで手じゃなくて顔を近づける必要があるんだよ!?」
「にしし、最原ちゃん真っ赤だよー?なーんかヤラシイこと考えてる?」
王馬くんが意地悪く口角を上げる。
しまった、僕が見ていることに気がついててわざとやっていたんだな…。
というか、よく見たらみょうじさんにご飯粒なんて付いていないじゃないか。
知らぬ間にイタズラの標的にされていて、まんまと引っかかってしまうなんて…。
そんな事を考えて深くため息をつくと、おずおずとみょうじさんが口を開いた。
「な、何が起こってるの?私はもう目を開けていいのかな…?」
目を閉じたままあわあわとしているみょうじさんを見て、僕と王馬くんは顔を見合わせて吹き出してしまった。
「ぷ、あははは!みょうじちゃんってば最高!」
「っく、あはは。みょうじさん、もう目を開いても問題ないよ。というか、多分最初からご飯粒なんて付いてなかったんだと思うよ」
「えぇっ!そうなの!?…って、何で2人ともそんなに笑ってるの?何があったのか教えてよー!」
それからひとしきり笑った後、そのままあの2人と普通に談笑しながら食事を終えた。
みょうじさんに些細なイタズラを繰り返す王馬くんの気持ちが少しだけ分かったような気がする。
席を立ち、みょうじさんの後に続いて食堂から出ようとした時だった。
背後にいた王馬くんが、ちょいちょいと僕の肩をつつく。
何だろうと思い振り返ると、王馬くんはにっこり笑顔を浮かべたかと思うと意地悪く口角を歪めてこう言った。
「最原ちゃん、みょうじちゃんはオレの大事なオモチャなんだから手出さないでよね」
「なっ…」
僕が驚いて固まっていると、その隙に王馬くんは僕の脇をすり抜けて先に食堂を出ていってしまった。
少し離れたところからみょうじさんの名前を呼ぶ王馬くんの声が聞こえる。
これから不用意にみょうじさんに近づくのはやめておこう。
最後に見た王馬くんの、全く笑っていない目を思い浮かべながら僕は密かにそう誓った。
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