番外編・その他
おなまえ
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王馬くんと仲良くなるまでの話
※本編開始前
※王馬視点
「みょうじちゃん…だっけ?ちょっとあっちで話そうよ」
「うん、いいよー」
自己紹介以外で初めて会話をした彼女は、少しの躊躇いもなく朗らかに笑ってオレの誘いを受けた。
過剰なまでに人が良さそうな顔されちゃうと、性根がどんなものなのか見てみたい気持ちになる。
人間誰しも心を開いてない内は良い顔をしがちだけど、ここまでニコニコと毒気のない素振りを見せる人は珍しいと思う。
だけどどうせ、この子も一皮むけば腹の中にどす黒い何かを持ってたりするんでしょ?
そういう意外な一面、みたいなのを暴くのって最高につまらなくないよね!
そんなことを考えながらオレはみょうじちゃんと中庭を散歩していた。
「あっ!王馬くん見てみてー」
「んー?何、いいもの見つけた?」
「紫色のお花。王馬くんの目と同じ色だね」
なんて名前の花なんだろう?
そう言いながらみょうじちゃんは小さな花びらを優しく撫でてふわりと笑った。
「汚い手で触るなーって、その花が怒ってるよ」
「ええっ?ご、ごめんなさい。さっき手を洗ったばかりだから汚くないよ?大丈夫だよ?」
オレの何気ない嘘を真に受けて、彼女は慌てた様子でその花に話しかける。
何この子、お馬鹿さんなの?
騙されたフリでもしてるのかと思ったけど、その瞳はまっすぐに花に向けられていて必死な気持ちを訴えかけてくる。
人が嘘をつく生き物ってこと、知らないのかな。
ましてや相手はオレだよ?
こんなに簡単に騙せるんじゃ、そのうち変な詐欺とかに引っかかって高額なツボでも買わされるんじゃないか。
…別に、そうなってもオレには関係ないけど。
「馬鹿だなー、そんなの嘘に決まってんじゃん!花の声なんて聞こえるわけないでしょ」
「嘘なの?なんだー…もう、焦っていっぱい謝っちゃったよー。ふふふ」
騙されてたと分かった途端、みょうじちゃんは安心したような顔をした後楽しげに笑っていた。
変なの、普通ムッとして怒るところじゃない?
結局その後も小さな嘘をついてはみょうじちゃんは見事に騙されて、種明かしをすればまた笑って。
王馬くんっておもしろいね、とか言っちゃって。
単純すぎて逆に何を考えているのか分からない、という未知の感覚。
次の日からもオレは、暇さえあればみょうじちゃんにちょっかいをかけて遊んだ。
からかってみたり、嘘をついて騙したり、裏をかいて全く嘘をつかずに過ごしてみたり。
わざと連続で同じイタズラを仕掛けたこともあったけど、それでも彼女はあっさりと引っかかった。
何したらあの子は怒るんだろう。何したらあの子は悲しむんだろう。何したらあの子は楽しいと思うんだろう。
だんだん頭の中でみょうじちゃんのことを考える時間が多くなっていった。
それを自覚しながらも、オレばっかりそんな風に思ってるなんて悔しくてそれを認められない。
もはや何と戦ってるのか分からないけど、そんな気持ちで日々を過ごしていた。
「みょうじちゃん、何してんの?」
「あ、王馬くん…。うん、ちょっと眠くて…ふぁ」
昼食後、寄宿舎前の藤棚でぼーっとしてるみょうじちゃんを見つけて声をかけた。
あくびをしながら目をこすって、ホントに眠そうな顔。
「あは、でっかいあくびー。そんなに眠いなら個室でお昼寝でもすればいいのに」
「ん…でも、もったいなくて」
「なにが?」
「今日は王馬くんが遊びに来てくれるんじゃないかって、そんな気がしてたから」
ふにゃっとした笑顔でそんなことを言われて、ちょっとだけ嬉しいと思った。
みょうじちゃん、オレといるの楽しいって思ってたんだなー…とかそんな童貞臭いことを考えて。
「馬鹿だなーみょうじちゃんは。どっちにしろそんな眠そうな顔してたら、遊べるものも遊べないでしょ?」
「うー…確かに。残念」
「…そんなにオレと遊びたかったの?」
「うん、だって…王馬くんと一緒が一番楽しいもん」
その言葉を掛けられた瞬間オレは、ずっと自覚していたはずのその気持ちを今度こそ認めざるを得ないような、そんな気がした。
嬉しさで緩みそうな頬を必死に押さえつけながら、しゅんと落ち込んだ様子のみょうじちゃんの隣になんでもない表情でそっと腰掛ける。
彼女はそんなオレを不思議そうな目で見つめていた。
「ちょっと寝てさ、目が覚めたら遊んであげる。もしオレが待ちきれなくなったら、その時は起こしてあげる」
「いいの?」
「オレがそう言ってるんだからいいの!ほら、気が変わらないうちに寝た寝た!」
「えへへ…おやすみなさーい」
みょうじちゃんはそう言ってオレの膝を枕にして眠りについた。
誰も膝を貸してあげるなんて言ってないんだけど。
すやすやと眠る彼女に向かってそんなことを言っても、返ってくるのは気持ちよさそうな寝息だけ。
文句の代わりにぷにぷにと頬をつつけば、みょうじちゃんはまたふにゃりと笑った。
「…ホント、みょうじちゃんって変わってるよねー」
オレと一緒が一番なんて、そんなの当たり前じゃん。だってそれはオレも同じだから。
もう自覚してしまったものは仕方がない。
でもさ、オレだけがキミを好きだなんてそんなの不公平だと思わない?
だからいつか、キミもオレと同じ気持ちになってよね。
何も知らずに眠るみょうじちゃんを見つめながら、心の中でそう彼女に呟いた。
※本編開始前
※王馬視点
「みょうじちゃん…だっけ?ちょっとあっちで話そうよ」
「うん、いいよー」
自己紹介以外で初めて会話をした彼女は、少しの躊躇いもなく朗らかに笑ってオレの誘いを受けた。
過剰なまでに人が良さそうな顔されちゃうと、性根がどんなものなのか見てみたい気持ちになる。
人間誰しも心を開いてない内は良い顔をしがちだけど、ここまでニコニコと毒気のない素振りを見せる人は珍しいと思う。
だけどどうせ、この子も一皮むけば腹の中にどす黒い何かを持ってたりするんでしょ?
そういう意外な一面、みたいなのを暴くのって最高につまらなくないよね!
そんなことを考えながらオレはみょうじちゃんと中庭を散歩していた。
「あっ!王馬くん見てみてー」
「んー?何、いいもの見つけた?」
「紫色のお花。王馬くんの目と同じ色だね」
なんて名前の花なんだろう?
そう言いながらみょうじちゃんは小さな花びらを優しく撫でてふわりと笑った。
「汚い手で触るなーって、その花が怒ってるよ」
「ええっ?ご、ごめんなさい。さっき手を洗ったばかりだから汚くないよ?大丈夫だよ?」
オレの何気ない嘘を真に受けて、彼女は慌てた様子でその花に話しかける。
何この子、お馬鹿さんなの?
騙されたフリでもしてるのかと思ったけど、その瞳はまっすぐに花に向けられていて必死な気持ちを訴えかけてくる。
人が嘘をつく生き物ってこと、知らないのかな。
ましてや相手はオレだよ?
こんなに簡単に騙せるんじゃ、そのうち変な詐欺とかに引っかかって高額なツボでも買わされるんじゃないか。
…別に、そうなってもオレには関係ないけど。
「馬鹿だなー、そんなの嘘に決まってんじゃん!花の声なんて聞こえるわけないでしょ」
「嘘なの?なんだー…もう、焦っていっぱい謝っちゃったよー。ふふふ」
騙されてたと分かった途端、みょうじちゃんは安心したような顔をした後楽しげに笑っていた。
変なの、普通ムッとして怒るところじゃない?
結局その後も小さな嘘をついてはみょうじちゃんは見事に騙されて、種明かしをすればまた笑って。
王馬くんっておもしろいね、とか言っちゃって。
単純すぎて逆に何を考えているのか分からない、という未知の感覚。
次の日からもオレは、暇さえあればみょうじちゃんにちょっかいをかけて遊んだ。
からかってみたり、嘘をついて騙したり、裏をかいて全く嘘をつかずに過ごしてみたり。
わざと連続で同じイタズラを仕掛けたこともあったけど、それでも彼女はあっさりと引っかかった。
何したらあの子は怒るんだろう。何したらあの子は悲しむんだろう。何したらあの子は楽しいと思うんだろう。
だんだん頭の中でみょうじちゃんのことを考える時間が多くなっていった。
それを自覚しながらも、オレばっかりそんな風に思ってるなんて悔しくてそれを認められない。
もはや何と戦ってるのか分からないけど、そんな気持ちで日々を過ごしていた。
「みょうじちゃん、何してんの?」
「あ、王馬くん…。うん、ちょっと眠くて…ふぁ」
昼食後、寄宿舎前の藤棚でぼーっとしてるみょうじちゃんを見つけて声をかけた。
あくびをしながら目をこすって、ホントに眠そうな顔。
「あは、でっかいあくびー。そんなに眠いなら個室でお昼寝でもすればいいのに」
「ん…でも、もったいなくて」
「なにが?」
「今日は王馬くんが遊びに来てくれるんじゃないかって、そんな気がしてたから」
ふにゃっとした笑顔でそんなことを言われて、ちょっとだけ嬉しいと思った。
みょうじちゃん、オレといるの楽しいって思ってたんだなー…とかそんな童貞臭いことを考えて。
「馬鹿だなーみょうじちゃんは。どっちにしろそんな眠そうな顔してたら、遊べるものも遊べないでしょ?」
「うー…確かに。残念」
「…そんなにオレと遊びたかったの?」
「うん、だって…王馬くんと一緒が一番楽しいもん」
その言葉を掛けられた瞬間オレは、ずっと自覚していたはずのその気持ちを今度こそ認めざるを得ないような、そんな気がした。
嬉しさで緩みそうな頬を必死に押さえつけながら、しゅんと落ち込んだ様子のみょうじちゃんの隣になんでもない表情でそっと腰掛ける。
彼女はそんなオレを不思議そうな目で見つめていた。
「ちょっと寝てさ、目が覚めたら遊んであげる。もしオレが待ちきれなくなったら、その時は起こしてあげる」
「いいの?」
「オレがそう言ってるんだからいいの!ほら、気が変わらないうちに寝た寝た!」
「えへへ…おやすみなさーい」
みょうじちゃんはそう言ってオレの膝を枕にして眠りについた。
誰も膝を貸してあげるなんて言ってないんだけど。
すやすやと眠る彼女に向かってそんなことを言っても、返ってくるのは気持ちよさそうな寝息だけ。
文句の代わりにぷにぷにと頬をつつけば、みょうじちゃんはまたふにゃりと笑った。
「…ホント、みょうじちゃんって変わってるよねー」
オレと一緒が一番なんて、そんなの当たり前じゃん。だってそれはオレも同じだから。
もう自覚してしまったものは仕方がない。
でもさ、オレだけがキミを好きだなんてそんなの不公平だと思わない?
だからいつか、キミもオレと同じ気持ちになってよね。
何も知らずに眠るみょうじちゃんを見つめながら、心の中でそう彼女に呟いた。