本編【全16話】
おなまえ
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東条さんととばっちり
※東条視点
「それでね、ここをこうやってこうして…」
「なるほど…こうすると舌触りがより滑らかになるのね」
私は食堂でみょうじさんにパンケーキ作りのコツを教わっている。
ある程度のノウハウは叩き込んできたつもりだったけれど、私にもまだまだ学ぶべきところはあるみたい。
「うん、そうだよー。東条さんはさすが筋がいいねー」
「そんなことないわ。…でも、ごめんなさい。本来私はあなたに頼られるべき立場なのに」
「そんなことないよ!むしろいつも助けて貰ってることを考えたらまだまだ足りないくらいだよ」
「私はメイドだもの…あなた達のために尽くすのは当たり前のことなのよ」
メイドとして、仕えるべき相手に何かを教わるなど許されるものだろうか。
彼女は気にしていないみたいだけれど、やっぱりまずかったかしら。
とはいえこれはみんなに快適な生活を送って貰うための知識…。
私が悩んでいる表情をしてしまったためか、みょうじさんは心配そうに私を見ている。
いけないわ、これでは恥の上塗りね。
「みょうじさん、今日はありがとう。とても助かったわ」
「どういたしまして!私の方こそいつもありがとう、東条さん!」
「ふふ、いいのよ」
改めてお礼の言葉を述べると、彼女は笑顔を見せてくれた。
せっかくの気持ちを受け取らないなんて、その方が失礼にあたる行為だったわね。
自分の理念を気にしすぎるあまり目の前の相手のことが見えなくなるなんて、私もまだまだ修行が足りないわ。
「あ、あのね東条さん。実は私からもお願いがあって…」
「何かしら?依頼ならなんでも言ってちょうだい」
「えっと…」
*****
「こ、こう?」
「ええ、そうよ。あと少しだけ火を弱くした方がいいわ」
みょうじさんからの依頼は料理を教えて欲しい、ということだった。
料理と言っても幅広いものだから何を教えようかと迷ったけれど、卵焼きを作ってみたいという希望があったためそれを指南することになった。
先程の菓子作りの際はあんなに手際が良かったのに、工程としては簡単なはずの卵焼きに苦戦している。
少し意外、なんて言うと失礼かしら。
「うーん…ちょっとコゲちゃった…」
「初めてなんだもの、多少の失敗はつきものよ。それでもきちんと形になっているのだから落ち込むことはないわ」
「ふふ、ありがとう。でもやってみて思ったけど、やっぱり東条さんはすごいなぁ。あんなに美味しい料理が作れるんだもん」
「私は…経験があるだけよ。それに、お菓子を作ることに関してはあなたには及ばないわ」
「えへへ、それだけは負けるわけにいかないもんねー」
落ち込んでいた彼女が笑ってくれたことに安心する。
少しは力になれたのかしら…。
せっかく出来上がったのだからと味見をしようとしていると、食堂に誰かが入ってくる音がした。
「あれ?東条ちゃんとみょうじちゃんって珍しい組み合わせだね」
「あら、王馬君。ええ、少しみょうじさんに聞きたいことがあって時間を貰っていたのよ」
「それで今は私がお料理教えて貰ってたとこー」
王馬君は初めて見るものを見つけたような顔でこちらにやって来た。
「へー。みょうじちゃんがお菓子以外のもの作ってるの、そういえば見たことないや」
「あはは、だって初めてだもん」
「どんなの作ったの?見せて見せて!」
「えっと…この卵焼きみたいなもの、です」
みょうじさんは味見のために切り分けた卵焼きの乗ったお皿を差し出す。
王馬君はそれをまじまじと見つめたあと、ひょい、と指で摘んで口に入れてしまった。
「あ!王馬くん!」
「王馬君。食べ物を手で掴んで食べるのは良くないわ」
「にしし、ごめんごめん!ちょっとオレには甘すぎだけど…でも美味しかったよ!」
「ほ、ほんと…?」
「当たり前じゃん!オレがそんな嘘つくと思う?」
「思わない!良かったぁ」
「…思わないのね」
王馬君の行いについてはもう少し強く注意したいところだけれど、みょうじさんは味の感想を貰えたことに喜んでいるようだった。
彼の行動をきちんと叱責するのはもう少し後でもいいかしら。
なんて、少し私らしくないかもしれないわね。
※東条視点
「それでね、ここをこうやってこうして…」
「なるほど…こうすると舌触りがより滑らかになるのね」
私は食堂でみょうじさんにパンケーキ作りのコツを教わっている。
ある程度のノウハウは叩き込んできたつもりだったけれど、私にもまだまだ学ぶべきところはあるみたい。
「うん、そうだよー。東条さんはさすが筋がいいねー」
「そんなことないわ。…でも、ごめんなさい。本来私はあなたに頼られるべき立場なのに」
「そんなことないよ!むしろいつも助けて貰ってることを考えたらまだまだ足りないくらいだよ」
「私はメイドだもの…あなた達のために尽くすのは当たり前のことなのよ」
メイドとして、仕えるべき相手に何かを教わるなど許されるものだろうか。
彼女は気にしていないみたいだけれど、やっぱりまずかったかしら。
とはいえこれはみんなに快適な生活を送って貰うための知識…。
私が悩んでいる表情をしてしまったためか、みょうじさんは心配そうに私を見ている。
いけないわ、これでは恥の上塗りね。
「みょうじさん、今日はありがとう。とても助かったわ」
「どういたしまして!私の方こそいつもありがとう、東条さん!」
「ふふ、いいのよ」
改めてお礼の言葉を述べると、彼女は笑顔を見せてくれた。
せっかくの気持ちを受け取らないなんて、その方が失礼にあたる行為だったわね。
自分の理念を気にしすぎるあまり目の前の相手のことが見えなくなるなんて、私もまだまだ修行が足りないわ。
「あ、あのね東条さん。実は私からもお願いがあって…」
「何かしら?依頼ならなんでも言ってちょうだい」
「えっと…」
*****
「こ、こう?」
「ええ、そうよ。あと少しだけ火を弱くした方がいいわ」
みょうじさんからの依頼は料理を教えて欲しい、ということだった。
料理と言っても幅広いものだから何を教えようかと迷ったけれど、卵焼きを作ってみたいという希望があったためそれを指南することになった。
先程の菓子作りの際はあんなに手際が良かったのに、工程としては簡単なはずの卵焼きに苦戦している。
少し意外、なんて言うと失礼かしら。
「うーん…ちょっとコゲちゃった…」
「初めてなんだもの、多少の失敗はつきものよ。それでもきちんと形になっているのだから落ち込むことはないわ」
「ふふ、ありがとう。でもやってみて思ったけど、やっぱり東条さんはすごいなぁ。あんなに美味しい料理が作れるんだもん」
「私は…経験があるだけよ。それに、お菓子を作ることに関してはあなたには及ばないわ」
「えへへ、それだけは負けるわけにいかないもんねー」
落ち込んでいた彼女が笑ってくれたことに安心する。
少しは力になれたのかしら…。
せっかく出来上がったのだからと味見をしようとしていると、食堂に誰かが入ってくる音がした。
「あれ?東条ちゃんとみょうじちゃんって珍しい組み合わせだね」
「あら、王馬君。ええ、少しみょうじさんに聞きたいことがあって時間を貰っていたのよ」
「それで今は私がお料理教えて貰ってたとこー」
王馬君は初めて見るものを見つけたような顔でこちらにやって来た。
「へー。みょうじちゃんがお菓子以外のもの作ってるの、そういえば見たことないや」
「あはは、だって初めてだもん」
「どんなの作ったの?見せて見せて!」
「えっと…この卵焼きみたいなもの、です」
みょうじさんは味見のために切り分けた卵焼きの乗ったお皿を差し出す。
王馬君はそれをまじまじと見つめたあと、ひょい、と指で摘んで口に入れてしまった。
「あ!王馬くん!」
「王馬君。食べ物を手で掴んで食べるのは良くないわ」
「にしし、ごめんごめん!ちょっとオレには甘すぎだけど…でも美味しかったよ!」
「ほ、ほんと…?」
「当たり前じゃん!オレがそんな嘘つくと思う?」
「思わない!良かったぁ」
「…思わないのね」
王馬君の行いについてはもう少し強く注意したいところだけれど、みょうじさんは味の感想を貰えたことに喜んでいるようだった。
彼の行動をきちんと叱責するのはもう少し後でもいいかしら。
なんて、少し私らしくないかもしれないわね。