好きを自覚していない話と、自覚する話
おなまえ
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自覚してない九条天
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「…キミも来たんだ」
「あ、九条さん。そうなんです。陸さんにお会いした時に、百さん共々お誘いいただきまして」
もはや恒例となりつつある、アイドリッシュセブンの事務所での打ち上げ…という名の飲み会に新顔を見つけた。
名前の挙がった百さんは既に出来上がっているメンバーに合流しており、変な絡まれ方をしないようにと誰もいない方へ呼び寄せる。
「大丈夫だと思うけど、酔っ払いは何をしでかすか分からないから」
「あ、あはは…。確かに、普段とはその…雰囲気の違う方がちらほらいらっしゃいますね」
大口を開けて笑う二階堂大和に、方言丸出しでもはや何を言っているのか分からない龍、そんな龍を椅子替わりにしている逢坂壮五…と、彼女が見ている方向には「良くない酔っぱらいの典型例」達がたくさん集まっていた。
近くにあった度数の低い缶チューハイをみょうじさんに差し出し、小さく乾杯をする。
「九条さんはお酒、強い方ですか?」
「どうかな、普通なんじゃない?…あんな激しい酔い方はしないけど」
「ふふ、そうなんですね。でも、激しく酔っ払った九条さん…少し見てみたいかもしれません」
一体、彼女の頭の中で出来上がった想像上のボクは何をしでかしているんだろう。
口元を押さえてくすくすと笑う彼女を見つめながら、「良くない酔っぱらいの典型例」達よりはマシであることを切に願った。
「キミはどうなの?お酒、強いの?」
「私は…普通より少し弱い、かもしれません。両親共、あまり強くないですし」
実はあまり飲んだことがないので、と恥ずかしそうにしていたが、女の子ならむしろそれくらいの方が安全で良いんじゃないか。
取り返しのつかない失敗をしてから後悔するよりは、余程。
「少し飲んだだけですぐ赤くなるので、それが若干コンプレックスなんですよね」
まだ一缶を飲みきったかどうか、といったところだが、パタパタと手で自身を扇ぐ彼女の頬はほんのり赤く色づいていた。
「いいんじゃない?か……いや、実際よりも酔ったフリをして、誰かにお酒を追加されずに済むじゃない」
「わぁ、ナイスアイデアですね!もしそういうピンチに陥った際は、九条さんの案を採用させていただきますね」
楽しげに笑う彼女から少し視線を外して、手元に残った酒を一気に飲み干し、空になった缶をその場に置いた。
可愛い、なんて柄にもないことを口にしそうになったのは、たった一杯の酒が回ったせいだろうか。
その赤い頬を他のメンバーに「可愛い」と言われ、はにかむ彼女の表情を見て1人苦々しい感情に陥ったことだって。
飲み込んだ「可愛い」を、もしボクが口にしていたら彼女はどんな顔をしたのか考えてしまったことだって、きっと。
その全ては酒のせいなのだと、そう思うことにした。
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「…キミも来たんだ」
「あ、九条さん。そうなんです。陸さんにお会いした時に、百さん共々お誘いいただきまして」
もはや恒例となりつつある、アイドリッシュセブンの事務所での打ち上げ…という名の飲み会に新顔を見つけた。
名前の挙がった百さんは既に出来上がっているメンバーに合流しており、変な絡まれ方をしないようにと誰もいない方へ呼び寄せる。
「大丈夫だと思うけど、酔っ払いは何をしでかすか分からないから」
「あ、あはは…。確かに、普段とはその…雰囲気の違う方がちらほらいらっしゃいますね」
大口を開けて笑う二階堂大和に、方言丸出しでもはや何を言っているのか分からない龍、そんな龍を椅子替わりにしている逢坂壮五…と、彼女が見ている方向には「良くない酔っぱらいの典型例」達がたくさん集まっていた。
近くにあった度数の低い缶チューハイをみょうじさんに差し出し、小さく乾杯をする。
「九条さんはお酒、強い方ですか?」
「どうかな、普通なんじゃない?…あんな激しい酔い方はしないけど」
「ふふ、そうなんですね。でも、激しく酔っ払った九条さん…少し見てみたいかもしれません」
一体、彼女の頭の中で出来上がった想像上のボクは何をしでかしているんだろう。
口元を押さえてくすくすと笑う彼女を見つめながら、「良くない酔っぱらいの典型例」達よりはマシであることを切に願った。
「キミはどうなの?お酒、強いの?」
「私は…普通より少し弱い、かもしれません。両親共、あまり強くないですし」
実はあまり飲んだことがないので、と恥ずかしそうにしていたが、女の子ならむしろそれくらいの方が安全で良いんじゃないか。
取り返しのつかない失敗をしてから後悔するよりは、余程。
「少し飲んだだけですぐ赤くなるので、それが若干コンプレックスなんですよね」
まだ一缶を飲みきったかどうか、といったところだが、パタパタと手で自身を扇ぐ彼女の頬はほんのり赤く色づいていた。
「いいんじゃない?か……いや、実際よりも酔ったフリをして、誰かにお酒を追加されずに済むじゃない」
「わぁ、ナイスアイデアですね!もしそういうピンチに陥った際は、九条さんの案を採用させていただきますね」
楽しげに笑う彼女から少し視線を外して、手元に残った酒を一気に飲み干し、空になった缶をその場に置いた。
可愛い、なんて柄にもないことを口にしそうになったのは、たった一杯の酒が回ったせいだろうか。
その赤い頬を他のメンバーに「可愛い」と言われ、はにかむ彼女の表情を見て1人苦々しい感情に陥ったことだって。
飲み込んだ「可愛い」を、もしボクが口にしていたら彼女はどんな顔をしたのか考えてしまったことだって、きっと。
その全ては酒のせいなのだと、そう思うことにした。