夢の中の彼
おなまえ
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私、何かしたのかな。
何でそんなに冷たくされなきゃいけないんだろう。
ねぇ、ちゃんとこっちを見てよ。
だって私はこんなにも…あなたが好きなのに。
「…あれ…?」
ぱち、と目を見開くと一般的な家屋の天井とそこについている照明器具が視界に映る。
さっきまで何か違うことをしてたような。
思い出そうとしても思い出せない。夢を見ていたのかな。
「あ、起きてる。おはよーなまえ」
「お…はよ」
隣に寝そべっていた背中がくるりとこちらを向き、私を見てにっこりと笑う。
いつもの光景のはずなのに、なんだかそれをずっと昔から待ち望んでいたみたいな…そんな気がする。
「んー…って、なんで泣いてんの?」
「え、あれ?」
気がつけば私はぽろぽろと涙を流していて、彼はそれをそっと指の腹で撫でるように拭った。
まだあまり覚醒しきっていない頭で考える。
そうだ、私は夢を見ていて…。
こんな風に優しくされたいって望んでも叶わなくて、それで…。
「変な夢でも見た?」
「うん…そうみたい」
「ふーん、どんな夢?」
「……王馬くんに冷たくされる夢」
「ぷはっ、なんだよそれ。オレの夢見るんならもっと幸せなやつにしといてよ」
「私だって、どうせならその方がいいよ」
くすくすと肩を揺らして笑う彼に、私は口を尖らせながらそう答えた。
「あー、でもやっぱダメかも」
「何が?」
「夢の中とはいえ他の奴に幸せにされるとか許せないじゃん」
予想外の言葉に私は目を丸くする。
彼はまるで拗ねた子供みたいに不機嫌な顔をしていて、なんだかそれがたまらなく愛おしくなって思わず笑みがこぼれる。
「ふふ、何それ。きっと相手は王馬くんなのに?」
「だって夢じゃん、オレはここにいるオレだけだもん!だからさーなまえ、泣くのも笑うのも怒るのもぜーんぶ夢じゃなくて現実のオレにちょーだい」
「あはは、それは無理だよ」
「えー、ひどいよー!なまえの浮気者ー!」
「そんなこと言われても、夢なんて自分の意思で変えられないもん」
あまり現実的ではない彼の提案に笑いながらそう答えると、案外彼自身は本気だったようでどこか不満げな様子だった。
私の言葉を聞いて何か考えるような仕草をしたあと、突然閃いたように瞳を輝かせながらこちらを見つめてくる。
「いいこと思いついた」
「どんなの?」
「夢見る隙もないくらい、オレでいっぱいにしちゃえばいいじゃん」
「…もういっぱいなのに?」
「んー、多分まだどこかに別腹でもあるんじゃない?」
「ふふ、そんなの分かんないよー」
「いいよ、オレが探し当てて満タンにしといてあげるから」
サービスいいでしょ?なんて得意気に言ってくる王馬くん。
どこまで冗談のつもりなのかは分からないけど、何だかおかしくてまた笑ってしまった。
めちゃくちゃな話だけど、彼なら本当にやってのけるんじゃないかと思う自分がいる。
現に今、私は夢で感じた悲しい気持ちをもう忘れてしまっていたのだから。
「なまえ、おいで」
彼が私に向かって手を広げ、私はそれに答えるようにその両腕の間に頭を埋める。
言うことを聞いた犬を褒めるみたいにわしゃわしゃと頭を撫でてくるのは少し気に障るけど、徐々に不思議とそれも悪くないなという気持ちになってくる。
「こういうの、幸せっていうのかな」
「にしし、そう思うならそうなんじゃない?」
彼の体温の心地良さが微睡みを誘って、私はまたそっと目を閉じた。
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