総統のつまらなくない1日
おなまえ
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ねぇなまえ、今日はちょっと寄り道して帰ろ?」
「え?うん、いいけど…私あんまりお金持ってないよ?今月は金欠ー」
「にしし、大丈夫だよ!お金なんて使わないとこだからさ!」
と、そう言われて王馬くんについてきたはいいものの。
なんだかさっきから路地裏みたいなところをぐるぐる回っていて、もはや帰り道がどこだか分からなくなってきた。
「ね、ねぇ…ホントにこっちで合ってるの…?」
とうとう不安が限界に達した私は、私の手を引いて少し前を歩く王馬くんに声をかける。
すると彼はピタリと立ち止まり、振り返ってにししと笑った。
もしかして、私また騙されてる?
そう思ったのもつかの間。
王馬くんが壁についていた操作パネルのようなものを素早い動きで操作すると、先程まで壁だと思っていたところに扉が出現した。
「え、なにその高度なテクノロジー」
「いいからいいから、行くよー」
王馬くんは目の前で繰り広げられる非現実的な光景に戸惑う私の背中を、その扉の中へと押しこんだ。
パーン!
足を踏み入れた瞬間、近くで破裂音のようなものが聞こえて咄嗟に目を細める。
暗いところから急に明るい場所に来たためまだ前がよく見えない。
「おかえりなさい、総統!そして…おいでませー!なまえー!」
男女複数名の明るい声が聞こえてくる。
ようやくピントが合い始めたため周りを見てみると、白い洋服に白黒の市松模様のスカーフ、それにピエロのお面というお揃いの格好をしたユニークな集団が、私たちに向けてクラッカーを向けていた。
「へ…?ここ、どこ?だれ?」
「にしし、ようこそなまえ!ここがオレたちDICEのアジトだよー!」
王馬くんの一声にユニーク集団…もとい、DICEのメンバーたちは歓声を上げる。
私はと言えば視界に映る情報量が多すぎて、未だに何が起こっているのか把握しきれていなかった。
「ちょっとちょっと総統、もしかして何も伝えずに連れてきたんっすか?」
「えー?だって何処に行くのか分かってたらサプライズにならないじゃーん」
「でもなまえ固まっちゃってるよ?どーしよー、つんつんしてみる?」
メンバーの中でも小柄で同い年くらいの女の子が、私の頬をぷにぷにとつつく。
その刺激でハッとした私は慌てて口を開いた。
「はっ!…え、えっとみょうじなまえです。はじめまして!」
「わーい、はじめまして!じゃあ、今からあたしがアジトの中を案内したげる!ついてきてー」
「えぇ!?あっ、はいぃ!」
グイグイと腕を引っ張られて建物の設備を順に案内される。
こういう強引なところ、ちょっと王馬くんに似てるかも。
「ねーねー、なまえは総統のどこが好きなの?」
「えぇっ?うーん、急に言われても…」
数々の用途の分からない部屋を紹介され、次が最後と宣言するその場所へ向かっている時、突然私の腕を引く小柄女子がそんなことを口にした。
驚きと質問の内容の恥ずかしさでついもじもじ口ごもってしまう。
「いーじゃん!今ここには総統もいないし、聞いてるのはあたしとなまえだけなんだから照れない照れない!」
「…いつも私のこと楽しませようとしてくれるところ、かな」
「なるほどー他には他には?」
「えっと…いつも強引なのに肝心なとこで優しくしてくれるところ…でも、強引なとこもちょっと好き…かもしれない」
「へぇ、そうなんだー。うふふ、なまえってば赤くなっちゃって可愛いね!じゃあここが紹介できる最後の部屋だよ~!」
開けてみて、と促されて今までよりも少し豪華に装飾されているその扉に手をかける。
「お邪魔しますー…?」
少しずつ扉を開きながら声をかけてみる。
開いた隙間がギリギリ人が通れそうかと思う幅になった時、部屋の向こうから腕が伸びてきて私を一気に中へと引き込んだ。
そのままの勢いで前のめりになった私を引きずり込んだ主が抱きとめる。
「最後の部屋は、オレの部屋だよー!」
「お、王馬くん!はぁ…びっくりしたー」
その部屋はゲームでよく見る王の間に、ごちゃごちゃと王馬くんの好きそうなおもちゃみたいな装飾を施した空間だった。
「にしし、どうだった?オレたちのアジト!」
「もう、想像以上にめちゃくちゃだよ」
「だけど、つまらなくないでしょ?」
「…ふふ。うん、そうだね。すごく王馬くんって感じ!」
その後どこからともなく隠れていたらしいメンバーさんたちが集まってきて、ちょっとした歓迎パーティを開いてくれた。
みんな王馬くんに負けず劣らずクセの強い人達だけど、とても賑やかで楽しい時間だった。
「ねぇなまえ、オレ知らなかったよー。なまえってオレの強引なところも案外好きでいてくれたんだねー」
「え、は?なんでそれ知って…」
「ここはオレのアジトだよ?知らないことなんかあるわけないじゃん!」
「でもあの時、聞いてるのは私とあの子だけって…あ!」
もしかして、嘘…?
そういえばこの人達って…王馬くんの組織の…そりゃあそういうイタズラと嘘が好きに違いない。
してやられたと項垂れる私に、今度はグラマラスな少しギャルっぽい雰囲気の女性が声をかけてくる。
「なまえ、ウチらの総統とはいつ結婚すんのー?てか実際ドコまで進んだ?総統ってば全然教えてくんないんだよねー」
「け、結婚!?どこまで…とか、そそそんなの教えられません!」
「あは、ウケるー」
そんな感じで代わる代わる色んな人に似たような質問責めを受けていると、王馬くんが突然声を上げる。
「お前ら、オレのなまえであんま遊ぶなよなー!」
「ぎゃー!総統のヤキモチ焼きー!」
「逃げろっすー!」
それぞれが散り散りに逃げ始め、突如として鬼ごっこが始まっていた。
慌ただしい人達だけど、王馬くんが王馬くんたる所以を見た気がする。
そんな様子を眺めながら、時に混ざりながら過ごした時間はあっという間に過ぎていった。
「あー、今日は楽しかった!なまえ、そろそろ送るよ」
「うん、ありがとう」
他のみんなにも挨拶をして、王馬くんに続いてコソコソとアジトを後にする。
外はすっかり暗くなっていて、ほんのり肌寒い。
だけど王馬くんに繋がれた右手は暖かくてそれが心地よかった。
「なまえ、さっきの話だけどさー」
「どの話?」
「ほら、オレの好きなところの話!」
「う、それはもう…忘れて下さい」
「にしし、忘れられるわけないじゃん!…ね、ちょっとこっちおいで」
長い路地の途中、王馬くんが行き止まりの曲がり角を指してそこへ向かわせる。
「ここにも何かあるの?」
「んー?別にないよ、ただ…」
その続きが気になって彼に顔を向けると、いつの間にか側まで近づいていた王馬くんの唇がそっと触れる。
「ん…どうしたの、急に」
「にしし、顔真っ赤になってるよ!」
「誰のせいよ!」
「オレのせいだよねー」
「わ、分かってるなら一々聞くな…」
「あー… なまえ」
「む…今度は何?」
「もう一回してもいい?」
耳元で囁かれた声に、私はこくりと頷いた。
色んな意味で刺激的な1日だったけど…こういう日ってつまらなくない、よね。
1/1ページ