厄介な来客
おなまえ
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※甘くはないけど切なくもない
※夢主の常識が壊れてます
ピンポーンピンポーンピンポンピンポン
うるさい。こんな時間に非常識だ!って、別にまだ夜の8時なんだけどさ。
どこぞの名人よろしくインターホンを連打してる人物が誰なのかは大方想像がつく。
だからこそオレは居留守という選択肢をとる。
なんでかって?面倒臭いからだよ。
『あれー?おかしいなぁ、電気ついてるのに…部屋にいないのかなぁ』
うん、いないから帰りなー。
扉の向こうから聞こえる声に心の中でそう返事をしながら、オレはモノモノマシーンから入手した机上トラベル紀行のページをめくる。
あ、ここいいな。行ってみたい。
『仕方ない…奥の手を使うしかないなぁ…』
奥の手?今までにないパターンだな。
どうせ大したことない…と思いたいが少し嫌な予感がする。
カチャ…カチャ……
扉から鍵が差し込まれたような音が聞こえてぎょっとする。
慌てて自分の鍵を確認したところ、やはり無くしたわけではなさそうだ。
ということは…複製でも作られたか、モノクマを味方につけたかのどちらかだな。
気にかけていると思われると面倒なことになりそうなので、気にせずパラパラと冊子を眺める。
何やら激しく扉が開いた音がした気がするが、多分空耳だろう。
「あー!王馬くんやっぱりここにいた!今日も可愛いー好きー!」
「はいはい、ありがとー。それと勝手に入ってくるのは不法侵入って言うんだよー」
招かれざる客のくせに無遠慮にベタベタとオレの体を触ってくる。
こういう手合いは反応したら負けなんだよ。自分にそう言い聞かせながら、あらゆる感情を無に近づけることに努める。
「だって…王馬くんが入れてくれないから…」
「ごめんねー全然気づかなかったよー。なーんて嘘だよー」
「キレがない!嘘だよーはもっと元気に言って欲しい!」
「うるせーなぁ……嘘だよー!…はい、これでいい?」
「うっ…悔しいけど、可愛い…!」
元気に難癖を付けてくる厄介な女を一刻も早く追い返したい。
無視すればいいやって思ったこともあったけど、そうすると返事をするまで耳元にエンドレスで「ねぇねぇ」が聞こえてくる羽目になったことがあるから封印してる。
結局適当に相手をしながらあしらうのが一番楽だ。
「むぅ、王馬くんは私にだけ異常に冷たい」
「他のみんなは開口一番パンツくれだの、個室のゴミ袋を預かるだの、今みたいに不法侵入するだのしてこないからね」
「あれ、逆に考えれば私だけが特別扱い…?」
「おい聞いてんのか」
「もー王馬くんってば!そういうことなら私…今のままでも嬉しいよ!」
「うわー無駄にポジティブだ。いるよねーこういう事実をひん曲げてまで良い方向に解釈しようとする人」
不法侵入の現行犯はオレの話なんて聞いちゃいない。
1人で妄想に耽ってニヤニヤくねくねしている。
それなら自分の部屋でやってればいいのに。
「あ!いけない。私はそろそろお肌のケアをする時間だわ!」
「わー、最高に興味無いやー」
「名残惜しいけど…すっごく寂しいのは私も同じだからね…」
「んー?寂しいなんてオレ一言も言ってないよね。早く帰れよー」
「大丈夫だよ、王馬くん!私はまた来るからね!それじゃあねー!」
「はーい二度と来なくていいよー」
こうして今日の嵐は去った。
やりたい放題騒いで行ったもんだから、いなくなった後の部屋は必要以上に静かに感じる。
ま、だからと言って寂しいわけじゃないんだけど。
あの鍵は使えないように細工しといてやるかー、めんどくさいけど。
でもきっと何とかして入ってくるんだろうな。
にしし、あいつかオレか先に折れるのはどっちだろう。もちろん負けるつもりなんか毛頭ないけど。
どんな罠をしかけておいてやろうか、と。そんなことを考えてる時間は案外つまらなくないかもしれない。
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