幸せの準備
おなまえ
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※ 「心の隅に※」→「我儘」→「夢見心地」の続き
※厳密には「未来の約束(R-18)」の続きですが、見てなくても支障ないです
※最赤要素あり
「うっ、うっ…楓ちゃん、おめでと…!すっごく綺麗だよ、幸せになってね…うわぁぁん」
真っ白なウェディングドレスに身を包み、最原くんの隣で幸せそうに微笑む楓ちゃん。
しっかり者で優しい、私の唯一無二の親友。
そんな彼女が目の前でこれまた優しく、美しく微笑むものだから、堪えきれずにぽろぽろと涙を零してしまった。
「ふふ、ありがとう!もう、私のお父さんより泣いてるじゃない。ほらほら王馬くん、キミの大事ななまえちゃんがボロボロになってるよ!」
「んー?…って、なまえ泣きすぎじゃない?あっははは!ひどい顔ー」
「ち、ちょっと王馬くん!?そこは慰めてあげるんじゃないの?」
「終一くん大丈夫だよ、この2人はいつもこうなんだから」
楓ちゃんの声に、すぐ近くで話していた小吉くんと最原くんがこちらを見る。
涙でびしょ濡れになった私の顔を見て爆笑している小吉くんに最原くんが戸惑って、それを宥める楓ちゃん。
びしっとした格好をしていつもより凛々しい雰囲気だった最原くんも、口を開けば当然ながらいつもの彼のままだ。
そのギャップがなんだかおかしくて、3人のやり取りを見ているうちに気がつけば笑ってしまっていた。
「ふ、ふふ…」
「あはは、良かったね王馬くん。最愛の彼女に笑顔が戻ったよ」
「ホント、手間のかかる子だよねー。やれやれだよ」
「そう言いつつ嬉しそうな顔してるけど…」
「最原ちゃんうるさいよ」
「そうだよ終一くん、それは当たり前のことなんだから。だって王馬くんは何年も何年も一途になまえちゃんのことを」
「ちょーっと赤松ちゃん!それ今言わなくてもいいよね!?さっきからちょこちょこ織り交ぜてきてたやつわざとスルーしてたって気がつかないかなぁ!?」
そろそろ2人は他所にも幸せのおすそ分けして来なさい、と王馬くんが新郎新婦を他の参列者のところへ行くよう促す。
また後で、と手を振って離れていく楓ちゃんの笑顔はやっぱり今までで一番輝いて見えた。
「ホント、赤松ちゃんてば油断も隙もないんだから」
「ふふ、ごめんね。私がつい喋っちゃったから」
「別に事実だからいいけどね。そもそも最初にけしかけたのも赤松ちゃんだし」
「あ…そうだったね」
「ある意味恩人かな。赤松ちゃんがあの時なまえにあんなこと言わなきゃ、オレたちって今こうなってなかったかもしれないし」
直接的ではないにせよ、楓ちゃんの一言で私が小吉くんを意識して…それがきっかけで今がある。
楓ちゃんもまた、私の幸せを近くで願ってくれていた人の一人だった。
小吉くんと付き合い始めたと報告をした時はまるで自分の事のように喜んでくれたし、同棲するとなった時には色々と共同生活のコツのようなものを教えてくれた。
そんな風に見守ってくれていた友人の結婚式。
キラキラと輝く彼女の姿を、感慨深く見守っていた。
*****
式を終え披露宴を終え、二次会も終わり。
楓ちゃんと最原くんの晴れ舞台には、高校の頃のクラスメイトが総動員で集まっていた。
久しぶりの揃って顔を合わせる機会にみんなの気分が上がらないはずはなく、大盛り上がりの楽しい時間を過ごした。
そんな時間の余韻に浸りながら、小吉くんと同じ帰り道を辿る。
「…なまえ、どうしたの?疲れちゃった?」
「え?ううん、大丈夫だよ。楽しかったなぁって」
「にしし…そうだね」
「ふふ、小吉くんは相変わらずキーボくんのことからかってばかりで」
「あれはキー坊が悪いでしょ!なまえに対してなんの気の迷いだとかなんとか、失礼すぎてさすがのオレもびっくりしちゃったよ」
ぶすっとした言い方だけど、小吉くんは楽しげな表情でそう言った。
なんだかんだ言ってそういうやり取りも楽しかったんだろうな、とそれを見て思う。
私たちの関係を打ち明けた時のみんなの反応は様々だった。
学生の頃からよく一緒にいたからとあっさり受け入れる人もいれば、相手が私だからと言うより小吉くんのイメージの問題か恋人がいるという事実そのものに驚く人もいた。
「でも、最終的にはみんな応援してくれてたよ?」
「まぁね。なまえがそれ取った時なんて、盛り上がり方がすごかったし」
それ、と小吉くんが指さす先は私の手元にある花束。
ブーケトスの時、一直線に私に向かって飛んできたものをキャッチした。
狙い通り、なんて言って綺麗なドレス姿に似つかわしくない勇ましいガッツポーズをする楓ちゃんの姿は多分一生忘れられない。
「招待状は早めに送ってね、なんて言ってくれちゃってさ。赤松ちゃんらしいけど」
「そ、そんなこと言ってたの?知らなかった…」
「あは、だってオレだけに言ってきたからね」
それってつまり、楓ちゃんは私たちが結婚するのを待ってるってこと…なんだよね。
小吉くんはそれを聞いてどう思ったんだろう。
どんな顔をしているのか気になってちらっと視線を向けてみれば、小吉くんも私を見ていたようでばっちりと目が合った。
「んー?どうかした?」
「い、いや…その、小吉くんこそ」
「オレ?なまえが今の聞いてどんな反応するのかなーって思ってただけ」
「どんなって…」
「結婚考えてるかどうかの見極めだよ!反応次第ではオレもタイミング考えなきゃいけないからさー」
にしし、といたずらっぽく笑う小吉くんの言葉にドキドキと胸が高鳴る。
そんなこと言われたら、明日からちょっとだけ期待しながら過ごすことになっちゃうよ。
「なまえ、顔真っ赤」
「だって、小吉くんが!」
「えー、オレのせいなの?」
「そ、そうだよ。そんなこと言われたら色々考えちゃうもん」
「あはは、可愛いね。ま、丁度いい機会だからそのまま色々考えててよ。オレのことしっかり受け止める準備でもしながらさ」
準備も何も、そんなものはとっくにできてるのに。
楽しげに笑う小吉くんの隣を歩きながら、心の中でそう呟いた。
きっとそう遠くない未来のその日のことを願って。
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