夢見心地
おなまえ
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※ 「 心の隅に※」→「我儘」の続き
「お、お邪魔しまーす…」
「今更何緊張してんの?何回も来たことあるのに」
「そ、そうだけど。その…付き合ってからは初めてだったから…」
もう何度も訪ねたことのある王馬くんの家。
今まではこの空間に2人でも何か特別な感情を抱いたことはないけど、恋人と2人なんだと思うと全てが違った景色に見える。
王馬くんの顔も、昔から整ってるとは思ってたけど…こんなに格好良かったっけ?
「はいはい、みょうじちゃんは乙女だねー。何飲む?紅茶?」
「王馬くんが余裕ありすぎなんだよ…。あ、じゃあ紅茶でお願いします」
関係が変わったからといっていきなり普段の距離まで変わるわけではない。
なんとなく友達だった頃の名残でテーブルを挟んで向かい合わせに座り、差し出された紅茶を飲む。
紅茶、私の好きな味覚えてくれてるんだよね。
何も言わずとも絶妙な砂糖とミルクの配分で出てくるそれに、今まで当然のように感じていたことにも愛が溢れていたことに気が付く。
「…もしかして、オレのこと考えてる?」
「え!?な、なんで分かるの?」
「顔に書いてあるから。…なーんて、嘘だよ!みょうじちゃんのことだからね、オレが分かんないわけないでしょ」
「ぅ…そういうこと、なんで言えちゃうのかな…」
なんで今までただの友達だと思えていたんだろう。
本当に分からない。
私の性格も好みも思考回路も、かつてこんなに理解してくれた人はいただろうか。
それってやっぱり、それだけ私の事を見ててくれたってこと…なんだよね?
彼に思いを告げた時よりも、恋人になってからの方がずっと気持ちは深まっていた。
「そんなの決まってるじゃん、好きだからだよ」
「うぅ…もう、顔赤くなっちゃうから!」
「にしし、照れちゃってかわいー」
王馬くんは付き合いだしてからも、行動でも言葉でも惜しみなく私に好意を伝えてくれる。
こんなに愛されているって実感をしたことがなくて、どんな反応をすればいいのか分からない。
戸惑ってはいるけど、でもそれ以上に嬉しい。
どうやってこの気持ちにお返しすればいいんだろう。
その答えはまだ出ていないけど、何となく近づきたくてのそのそと四つん這いになって王馬くんの側へと進む。
あぐらをかいた彼の膝にぶつかるんじゃないか、というくらいの位置で私は座る体勢を整える。
「王馬くん」
「なーに?」
「抱きしめてもいいですか」
「ぷっ…あはは、なんで敬語なの?別に構わないけどさー」
両手を広げて王馬くんをじっと見つめると、彼はいつもの笑顔で私の肩に頭を乗せるように体を預けてきた。
そっと彼の背中に腕を回す。
じわりと伝わる体温が心地良い。
「みょうじちゃん」
「はい」
「好きだよ」
「…うん、私も」
「にしし…ねぇ、オレみょうじちゃんについて知らないこと1個あったみたい」
「なに?」
「思ってたよりおっぱいおっきい」
その言葉に慌てて体を離そうとしたけど一歩遅くて、腰に回された王馬くんの腕ががっちりと私を固定してしまった。
「…変態」
「心外だなぁ、今までオレずーっとゴン太もびっくりの超紳士だったでしょ?やっと念願が叶ったんだからもうちょっとくらい夢見させてよ」
王馬くんが私の首筋に顔を埋める。
息がかかるのがくすぐったくて身を捩ると、彼はそんな私の反応に肩を揺らして笑っていた。
「…ホントに夢みたい」
ぽつりと呟いた彼の言葉に、これまでの事が思い出される。
ずっとそばで私のことを想って、大切に守ってくれていた人。
この人を愛おしいと思う気持ちが広がってきて、両手で包み込むように頭を撫でた。
「夢じゃないよ」
「にしし、知ってる」
王馬くんが顔を上げて私をじっと見つめる。
そのまま少しずつ近づいてくる気配に、私はそっと目を閉じた。
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