今日の嘘は未来の本当
おなまえ
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※天視点
珍しく連休が取れて、恋人…なまえの家に一泊した次の日の朝のこと。
目を覚ますと隣にいたはずのなまえの姿がなく、まだ覚醒しきっていない頭で周囲を見回す。
先に目が覚めたんだろうか。
とりあえず寝室からリビングへ移動しようかと身体を起こした時、寝室の扉が勢いよく開いて探していた恋人の声が聞こえてきた。
「九条さん、おはようございます!」
「おはよう」
「それはそうと、大変なんです!聞いてください!」
やけにソワソワした様子でそう言葉を続ける彼女に違和感を覚えつつ、どうしたの?と内容を聞かせるように促す。
「私の……私の胸が大きくなりました!」
「そう。それは大変だね」
「少しくらい興味持ってくださいよー、一晩で1カップUPですよ?もっと驚いてください!」
別に興味が全くないわけではないのだが、寝起きということもあってそこまでのリアクションを返せず、どうもそれがお気に召さなかったらしい。
それにそもそもボクは男だから、女性の身体変化のことに過敏に反応するのもどうなんだ。
しかも普段まじまじと観察するには失礼な箇所のこととなれば尚更。
「む…やっぱり、興味ないんですね…」
不満げな声を漏らす彼女を見ていてなんと返事をしようかと考えていると、ふと思い出した。
そういえば今日は4月1日。エイプリルフール。
イベント好きな彼女のことだから、きっと忘れていないだろう。
そうなれば今の一連の流れも、それに乗じてボクを騙してやろうという魂胆のもと行われているんだろうか。
ちょっと試してみようか、徐々に覚醒してすっきりとしてきた頭を働かせながらボクは口を開く。
「誰もそんなこと言ってないでしょ」
「でも、リアクション薄すぎです」
「想定内の出来事が起こっただけなら人間そう驚かないよ」
「想定内…?」
不思議そうな顔をしたなまえに手招きをして呼び寄せる。
こんな状況でも素直に近づいてくるところは可愛げがあっていいなと思う。
手の届く距離までやって来た彼女の腕を掴み、ベッドに腰掛けさせる。
「ねぇ、胸が大きくなる方法って何があるか知ってる?」
「えっと…牛乳飲んだり?」
「そういうのもあるらしいけどね。ボクがなまえに対してできることで、ひとつあるでしょ?」
「九条さんが、私に……って、も、もしかして」
「ふふ、昨日の夜はぐっすりだったから気が付かなかった?ちゃんと効果があったみたいで良かったね」
にこりと笑って見せると、なまえはみるみるうちに顔を赤くして俯く。
加虐心にも似た感情を覚えつつ彼女の顔を覗き込むと、慌てた様子で視線を逸らされる。
その反応、逆効果って分からないのかな。
彼女の頬に手を当ててこちらを向かせると、何をされると思ったかなまえは真っ赤な顔のまま目をぎゅっと閉じた。
そういうことなら遠慮なく、と彼女の唇に自分のそれを重ねる。
触れ合った瞬間、身体がピクリと反応するところもまた可愛いと思った。
「あ…あの、九条さん…」
ボクが顔を離すと、そのタイミングでなまえはおずおずと口を開く。
「ごめんなさい…あの、胸が大きくなった話はその…嘘なんです…」
「うん、知ってるよ」
「え!?で、でもさっきは想定内って…」
「あれはボクの嘘だよ。昨日の夜も何もしてないから安心して」
「そ、そうですか…」
なまえはほっとしているような、でもどこか残念そうにも見える表情を浮かべている。
そんな様子を見ているとついついちょっかいをかけたくなって、ボクは口の端を歪ませながらまた彼女に顔を寄せた。
「して欲しいならしてあげようか?」
「ひゃいっ!?」
「ボクはいつでも応えてあげるよ。キミが望むならね」
「う…そ、そんな…!って、これもまた嘘なんですよね?もう…九条さんの嘘は心臓に悪いです!」
「嘘じゃないんだけど」
「え…?」
「ふふ、冗談。嘘だよ、今日のところはね」
既に真っ赤だった顔をさらに赤く染めて、どうやらキャパオーバーらしい彼女は口をぱくぱくさせながら声にならない声を上げる。
その調子だと嘘じゃなくなる日は当分先かな。
少し残念、なんてそんなことを思いながらボクはそっと彼女の頬を撫でた。
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