結婚適齢期
おなまえ
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※夢主ほぼ出てきません
ある日の本番前の楽屋。
楽はふと、同じグループのメンバーである天が机に頬杖を付いてぼーっとしていることに気がつく。
「天、どうした?体調でも悪いのか?」
「…別に、ちょっと考え事してただけだよ」
「考え事?なんだよそれ、そんなに深刻なのか」
「深刻…んー……ある意味そうかもね」
「なんだよそれ」
「まぁまぁ楽、人間誰しも悩みはあるだろうからね」
要領を得ない回答に楽は苛立ちを隠せない。
不穏な空気を感じ取った龍之介が間に入り、その場を宥める。
そうしている間にも天は相変わらずどこか虚空を見つめて、しまいにはため息までついていた。
「こんなこれ見よがしに悩まれたら誰だって気にするだろうが」
「まぁ…天の様子もいつもと全然違うね。もし俺達でよければ話くらいは聞こうか?」
「別に俺は…」
「……じゃあさ、質問」
相談に乗るなんて言ってない、と楽は声に出しかけたものを途中で引っこめる。
何を質問されるのだろうかと楽と龍之介は息を飲み、天が口を開くのを待った。
「…男性アイドルって、何歳になれば結婚してもファンに受け入れられると思う?」
「…は?」
「け、けけけ結婚…!?」
予想外の単語が飛び出し、2人はパクパクと口を動かす。
天はといえばそんな2人の様子を見て、有益な回答は得られないと踏んだのか目をひそめて小さく息をついていた。
「はぁ、2人に聞いても仕方ない事だったね。忘れて」
「いやいやちょっと待て、お前結婚って……そんな相手がいるのか?」
「そ、そうだよ!そんな話聞いたことないよ!」
「まぁ…言ってなかったからね」
はっきりと肯定もせず、かといって否定もしない天に悶々とする。
楽も龍之介もまだまだ確認したいことだらけだったが、時間が迫っていたためそれ以上問い詰めることも出来ずにスタジオへ向かった。
*****
「お疲れ様でした!」
「TRIGGERさんお疲れ様でした!」
収録が終わり、楽屋へ向かう天の少し後ろを楽と龍之介が歩く。
「なぁ、あいつ…本番中は問題なさそうだったが…あの話、どうなんだ?」
「さぁ…、俺も気になるけど聞いたところで答えてくれるかどうか…」
「だよなぁ…この後飯でも誘ってみるか」
「そうだね、俺も気になるから行くよ」
天に聞かれないようにコソコソとそんな話をしていると、前から見覚えのある人物が歩いてきた。
「…あっ!TRIGGERの皆さんお疲れ様です!」
「お疲れ様です」
「あんたは岡崎事務所の…相変わらず元気そうだな」
「あはは、元気だけが取り柄なので…。皆さんは収録終わりですか?」
「うん、ついさっき終わって楽屋に戻るところだったんだ」
「そうでしたか、お疲れのところ呼び止めてすみません。またお仕事でご一緒する際はよろしくお願いしますね!」
「楽、龍。悪いけど先に戻ってて。スタジオに忘れ物」
「お、おぅ…分かった。じゃあな、みょうじ」
「またねー」
忘れ物なんて珍しい、それになんだか変なタイミングで思い出したものだ。
楽はふと天の行動を疑問に感じ、廊下の角に身を隠して今しがた自分たちが話していた所を振り返る。
「どうしたの楽、楽屋はこっちだよ?」
「しっ、ちょっと待て」
龍之介はピンと来ていない様子のまま楽の見つめる方へ視線を移す。
そこには、まだスタジオに戻っていない天とついさっき会話をした他事務所のマネージャーの姿。
なんだか妙に親しげだ。
2人は神妙な顔つきでその様子を眺めていたが、天がこちらに向かってくる素振りを見せたため慌てて楽屋に駆け込んだ。
「なんかあの2人…随分仲が良さそうだったね」
「あぁ…今までそこまで接点あったか?」
そんな話をした直後、楽屋の扉が開いて天が入ってきた。
色々と聞きたいことが増えたことから、楽は龍之介と話していたことを思い出し口を開く。
「なぁ天、たまには俺達3人でメシでもいかねぇか?」
「さっき楽と話してて、良かったら天も行こうよ」
「あぁ…折角だけどごめん、パス。今日は先約があるから」
「そ、そうか…」
そう言われてしまっては引き下がる他なく、その話題は呆気なく終わった。
「そういえば天、みょうじさんと仲がいいんだね。俺2人が親しかったなんて知らなかったよ」
「ちょ、龍お前…!」
「なんで2人がそんなこと…。もしかして、ボクのこと監視してたわけ?」
「いや、それはだな…」
「はぁ…別に構わないけど。そうだよ、みょうじさんとはよく話すし…今日の先約も彼女だから」
「え…」
「そうだったの…!?」
サラリと衝撃的な事実が飛び出し、2人はそれ以上言葉が出てこない。
もしや、本番前に言っていた結婚どうこうの話も想定している相手は…。
「天、みょうじさんと結婚するの…?」
「…さぁ、どうだろうね。じゃあボクは彼女を待たせてるから行くよ。お疲れ様」
そこは結婚じゃなくて付き合っているのか尋ねるところだろうとか、楽には色々思うところがあったが…。
天の様子からするときっとそういうことなのだろう。
ほとんど確信に変わった疑惑を残したまま、天は小さく笑って楽屋を後にした。
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