砂遊び
おなまえ
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たまには休日をみんなで過ごそう、という澪田さんの提案で海に来た。
水着になって思うのは女性陣は皆スタイルが良いということ。
男子…主に左右田くんなんてさっきから顔が緩みまくっている。
「…千秋ちゃんってさ」
「あぁ」
「着痩せするタイプなんだね」
たまたま横にいた日向くんにそんな感想を投げかけてみると、その意味を理解した後吹き出した。
日向くんもこう見えてちゃんと男の子なんだなぁ。
「きたなーい」
「お、お前なぁ!」
「あはは!日向くんって面白いねー」
私の予想では、日向くんは千秋ちゃんのことが気になっているはず。
だからこそ格好のいじり対象だ。
「千秋ちゃーん」
「どうしたのー?」
「その水着可愛いね」
「そうかな。なまえちゃんもとっても可愛いよ」
「いやー、千秋ちゃんには負けるよ。…ね?日向くん」
「お、俺にそんなこと聞くなよ…」
一目で分かるくらいに恥ずかしがる日向くんにひとしきり笑った後、もじもじしている2人を残して私は別の場所へ移動した。
「凪斗くん」
「あれ、海はもういいの?」
「一旦終了!凪斗くん補給ー」
「あは、何それ」
パラソルの下に座っていた凪斗くんの隣に腰掛け、頭を彼の肩に乗せる。
日差しが苦手だという凪斗くんは、水着の上からいつものパーカーを羽織っていた。
「みんな楽しそうだね」
「ボクのことは気にしないで行ってくればいいのに」
「私はこうしてる方が幸せなの」
「…そう」
チラリと凪斗くんの顔を見上げてみると、淡白な口調に反してその表情は少し嬉しそうだった。
「あ、そうだ。砂遊びしよ?お城作るの」
「いいけど、ボクそんなに器用じゃないよ?」
「いいのいいの。私もだから」
凪斗くんの手を引いて波打ち際まで移動する。
途中、ソニアさんに振られた左右田くんの恨めしそうな声が聞こえたような気がしたが多分気のせいだろう。
「…言ってみたはいいけどお城ってどうやって作るの?」
「バケツとかスコップとか、道具を使ってるイメージはあるけど…」
スーパーに行けばきっと色々あるんだろうけれど、生憎ここはキャンドラビーチ。
島を渡らなければならないことを考えると、取りに行くのは少々面倒だ。
「よし、トンネルを作ろう。大きいやつ」
「格段に目標が低くなったね!それならボクでもできそうだよ」
世間話をしながらいそいそと周りの砂を掻き集める。
砂遊びなんて久しぶりで、この感触がとても懐かしい。
何気なく凪斗くんの方を見てみると、なんだか砂の集まる速度が全然違う。
私よりも一掻きで集められる量が多いようだ。
「凪斗くんってさ」
「うん?」
「手おっきいね」
私がそう言うと、まじまじと自分の手を見つめながら不思議そうな顔をした。
「そうかな?普通だと思うよ」
「だってほら。手出して」
「はい」
「指も長くて綺麗だよ。羨ましいなー」
手のひらを合わせてみれば、自分の手が子どもの手に見えて笑ってしまう。
ありがとう、と言いながら微笑む狛枝がふにふにと私の手を握ってきた。
「なまえさんの手は小さくて可愛い」
「凪斗くんと比べたらそりゃあね」
「あは、すべすべで気持ちいい」
「くすぐったいよー」
さっきなまえさんもボクにやったでしょ、と言われてしまうと言い返す言葉もない。
仕方なく片手でまた砂を掻き集めながらトンネル造りを再開した。
「よし、そこそこ立派なお山ができましたね!」
「そうだね。でもここからが大変な作業だよ」
海水で固めながら作った山は、私の膝を越すまでの高さになった。
しかし凪斗くんの言う通り、ここからが正念場である。
開通前に山が崩れれば、これまでの苦労が水の泡になるのだから。
「凪斗くんはそっち側から掘ってね。私はこっちから行くから」
「わかったよ」
崩さないよう慎重に、トンネルの下をゆっくり掘り進める。
たまたまそばに落ちていた大きめの貝殻が良いスコップ代わりになり、思っていたよりは快適に掘れそうだ。
「ふぅ、これかなり腰にくるね」
「うん、思ってたよりきついね」
背が高い分凪斗くんの方が無理な体勢になっているらしく、かなり辛そうな声が聞こえた。
「凪斗くん大丈夫?」
「大丈夫だよ。んー、でもちょっと休憩!」
その声に私も体を起こすと、そのタイミングが重なった凪斗くんと目があった。
「あはは、凪斗くん泥ついてるよ?ちょっと動かないでね…はいっとれた!」
「ありがとう、だけどそう言うなまえさんこそ泥だらけだよ?」
「えー、取って取って!」
はい、と顔を凪斗くんの前に差し出す。
泥を払ってくれる彼の手の感触がくすぐったい。
「ん…ふふふ」
「もう、動かないでよ」
「えへへ、くすぐったくてつい」
「はい、終わったよ」
ふふ、と小さく笑った凪斗くんが、そのまま私に近づいてきて唇が触れた。
赤くなった頬を自覚しながらも、恥ずかしいような嬉しいような気持ちで口元が緩む。
「お前らなぁ…、俺の気持ちも少しは考えてくれよ!」
「左右田クン、いたんだ」
「やーいやーい、ソニアちゃんに振られてやんのー」
「うっせうっせ!つーか狛枝、地味にひどくねぇか!?」
私達の様子を見ていた左右田くんが話しかけてきたが、心なしか目に涙が溜まっている。
大体何があったのか検討はついた。
「また田中くんに負けたの?」
「負けてねぇ!運が悪かっただけだ!」
「あはは、いつも運悪いんだねぇ。凪斗くんに幸運分けてもらえば?」
「残念ながら、ボクの運でどうこうできる問題じゃないけどね」
「お前らには人の心がねぇのか!」
左右田くんの悲痛な叫びが聞こえたからか、ほどほどにしてやれよ、と日向くんもやってきた。
「日向ぁ!…って、お前もか…」
味方を期待した左右田くんだったが、日向くんの後ろに千秋ちゃんがいたことで明るい表情は一瞬で消え去る。
どうやら日向くんにまで先を越されて悔しいらしい。
「な、なんだよ」
「どいつもこいつも見せつけやがって!」
「だから何の話だよ」
「日向クンと七海さんが仲良しだから、左右田クンは1人だけ振られて悲しいんだよ」
「狛枝!分かっててもそういうことは言うな!」
わいわい騒ぎ始めた男子をその場で眺めていると、すぐ横に千秋ちゃんがやって来た。
そして、私の近くにあった砂の山を見て首を傾げる。
「それ、何作ってたの?」
「トンネルだよ」
「へぇー、何だか懐かしいね」
にっこり笑う千秋ちゃんが可愛くて、じゃれあいの気持ちで背中に抱きついてみた。
見た目から細そうだとは思っていたけれど、本当に細くて思ったよりも簡単に腕が回った。
「千秋ちゃん肌つるつるー」
「ふふふ、甘えん坊なまえちゃんだねー」
千秋ちゃんの肩に頬ずりしながらふと視線を戻すと、先程まで大騒ぎしていた男子組が何とも言えない顔でこちらを見ていた。
「…あれ、どうしたの?」
「なんつーかよ…ありがとうございましたッ!」
「お、俺は別に何も…」
「左右田クン、後で話があるんだけどいいかな?」
「さっきからお前こえーよ!」
左右田くんは凪斗くんの笑顔の圧力に怯えて走って逃げてしまった。
「あ、逃げちゃった」
「じゃあ俺ももうひと泳ぎしてこようかな。七海はどうする?」
「うーん…じゃあ私も行こうかな。またね、なまえちゃん」
ばいばいと手を振り、2人を見送る。
「凪斗くん」
「何?…わっ」
何となく凪斗くんの腕に抱きついてみれば、驚いたような声を出しながらも受け止めてくれる。
そのまま彼の腕にぐりぐりと頭を押し付けていると、空いていた反対の腕でぽんぽんと頭を撫でられた。
「なまえさんは無防備すぎるよ」
「そうかなー?普通だと思うけど」
「ふふ、じゃあボクがずっと壱花さんを見張ってなきゃね」
「…うん、ちゃんと見ててね」
「もちろん」
気がつけば大分日が落ちてきて、どこからともなくそろそろ帰ろうという声が上がりみんなでホテルを目指す。
凪斗くんと手を繋ぎながら歩いている時にふと思い出した。
「あ、トンネル…結局開通できなかったね」
「そうだね。だけど、またいつでも来れるよ」
「あはは、それもそうだよね。…また来ようね」
「もちろん。なまえさんのお願いはいつだって聞くよ」
そんな私たちの会話を聞いていた澪田さんが、青春だなんだと騒ぎ出す。
そこから次々にみんなが会話の輪の中に入ってきて、またみんなで遊ぼうと約束をしながら帰った。
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