このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

聖なる宝石と濁った魂

この物心ついたころに涙が希少性のある美しさのエメラルドになるというのを知られてから
他人には礼儀正しく接しながらも決して心は開かないという生き方を続けてきたのに・・・
それを破った出来事のことを。
近くの村で一際貧しい身なりで赤ん坊を抱いた見るからに辛そうな顔をした若い女性が気にかかり、声をかけたことを。
話しにくそうに言うことは 家にも他に子供がいるがあまりに生活が貧しくもはやこの赤ちゃんに飲ませるミルクすらおぼつかないのだという。
自分とさほど年の変わらない彼女に心に刺さるような話を聞かされた僕は「ちょっと待っててください」と言い物陰に隠れ涙をこぼして数個のエメラルドを生み出した。
それを手のひらにしっかり包み込み母親の元へ疾走した。
彼女は泣かんばかりに感激し、何度も何度も感謝の言葉を言った。
久しぶりに胸がほんのりと暖かくなる思いだった。
その暖かさがすっかり消え失せて以前にもまして胸の中が冷たく凍てつくまでに数日とかからなかった・・・
いつものように手にした凶器や己自身の拳や蹴りで僕の身体のそこかしこを痛めつけ始めた。彼らは暴力のプロなのだろう致命傷にならずに責めさいなむやり方を心得ているらしい。
その『作業』の合間に今度は言葉でもいたぶろうとしてきた。
「全くてめえもとんだお人よしの阿呆だぜ。せっかく何年も俺らみてえなのから逃げ隠れできてたのによ。それを行きずりの赤んぼ抱えた女のために台無しにするなんてよお」
「いや あの女ガキがいるとは思えねえくらい若くてカワイかったからよ。きっとあわよくばって思ってたんだぜ。」
呼応して下卑た哄笑が響く。
そんなのではない。と僕は吐き捨てた。心の中で。こんなやつらに反論する気にもなれなかったからだ。したところでさらに揶揄と嘲笑が返ってくる
2/3ページ
スキ