第2章「ベイブレードカーニバル 開幕!」
「フミヤさん、いよいよ準々決勝ですね。」
「今日もかっこよく決めてくださいよ!」
「もちろんさ。この大会はスパークデビルズが輝く為にあるんだからね。」
会場の廊下でフミヤは練習生2人を連れて歩いていた。フミヤは、1回戦目から順調に勝ち進み、ベスト8へ。前回の優勝者だった彼の実力なら、ここまで来るのは容易いことだろう。
しかし、彼は少し焦りを見せていた。それは、前回大会にはいなかった人物が今回の大会で参加しているからだ。
――そう、虹龍ドラムと灰嶋ロダンの存在だ。
ドラムは先日、自分を負かせたあのビクトリーズの期待の新人ブレーダー。一方、ロダンはアスリート選手でもありながら名の知れたブレーダーの1人だ。2人とも大会を勝ち進み、いつ自分と当たるか分からない。
フミヤは髪をかきあげる動作をし、焦りを隠した。自分は皆の模範となる存在だからだ。模範になる存在というのは、常に自信に満ち溢れ、常に人の前に立つことだ。
そう考えていると、向こうの方からビクトリーズの面々が歩いてくる。彼らもたまたまここを歩いていたのだろう。
ドラム達は先程外でジョーと話したばかりだ。真のギャンブラーと自負している彼の話を聞いたのか、いつもよりやる気に溢れていた。どちらがジョーを倒すか、ベスト8に進出したドラムとアマネは顔を近づけさせ言い争いをしていた。まだ、ジョーと戦うとも限らないのに。ジョーの言った通り、ビクトリーズ全員と戦うことになるかもしれないとも分からないのに。
「相変わらず元気だけは良いんだね。」
フミヤはドラム達の口を挟むように割って入れば、全員の視線は彼に向いた。ベスト8に残れたのは確かな実力なはずなのに、フミヤはクジ運と彼らをバカにするように神経を逆撫ですると、ドラムはむ、と口先を尖らせて反応を示した。
「クジ運だけだと!?」
「だってそうだろう?1人ならまだしも、弱小クラブから2人も残るなんて……まさか実力だなんて思っていない……よねぇ?」
「あら、そう言う貴方もクジ運だけで勝ったのではなくって?」
「……はぁ?」
「だってそうじゃない。今までの対戦相手……実力もあまり強くない選手ばかりでしたわ。人を煽ることしか出来ないのなら、今度人を煽らないお言葉の使い方をお教え致しましょうか?」
「キミも、口だけは達者なようだね。」
「ふふ、お褒めに預かり光栄ですわ。クジ運ブレーダーさん。」
クスッと目を細めて笑うと、フミヤはそれが心底嫌だったのかメガネを直すとそのまま練習生を連れて去ってしまった。シズク以外の4人は去っていくフミヤみ見つめた後、口々にフミヤに対し文句を垂らす。――しかしイチカの表情は少し複雑だった。
そのあと、ドラム達は観客席に入り、次の対戦相手を待つ。大きなモニターに映し出された8人のメンバー。第1試合はアマネとあの瑠璃川ジョー。ジョーの言っていた言葉が現実味を帯びてきた。偶然か、奇跡か、はたまたジョーが何かやったのか。それは分からない。ただ、選ばれた以上、全力で戦い勝つこと。アマネは左腕に巻いてるハチマキを頭に巻いて、気合を入れる。ビクトリーズはこれまでタカネ、イチカとジョーに負けてきた。ここでジョーに負ける訳には行かない。それに、彼には前から思っていた事がある。自分が優勝すれば、町でクラブをバカにしていた奴らは皆、クラブの強さが証明され黙り込むだろう。
アマネはスタジアムに向かい、向かいからはジョーがやってくる。
「草葉アマネ……前から君とは一度戦ってみたかったんです。」
コインを操りながらアマネを見つめる。ジョーは先日、ビクトリーズがバルトと対決する所を目撃していた。アマネやドラムの強さに興味があるのだろう。
「ファーストバトル!」
アマネはランチャーにベイをセットし構えた。しかし、ジョーはジョーカーのフレームを裏面にして装着し直すとランチャーにセット。
「レディ……セット!」
「「3!2!1!ゴーーシュート!!」」
両機豪快なシュートが決まり、早速ジョーカーの必殺技「トリックルーレット」が発動。トリックドライバーの軸先のガードがスタジアムを擦り、使用者も対戦相手もベイの軌道が読めなくなる。アマネは己のバトルスタイルを貫こうと、アシュラをセンターへ移動させ、防御の体制へ。しかし、ジョーカーの大きな2枚のラバー刃が強くアシュラに激突。両機弾け飛び、どちらが負けてもおかしくは無くなった。
ここでなんと奇跡が起こる。アシュラがスタジアムの壁にぶつかりオーバーフィニッシュを免れたのである。ジョーカーも同じようにぶつかり試合はまだまだ終わらない。
「今日は2人ともツキがあるみたいですね。面白いバトルになりそうです。」
「くっ……。」
「本当に運任せかヨォ!」
「自分が負けてたかもしれないのに。」
「それもギャンブルの醍醐味と言えるのではないかしら。」
「ふざけた真似を……ッ!」
ジョーカーは再び軌道が中心を駆ける動きを始めて、次の賭けへ。なかなかセンターが取りづらいと感じたアマネはアシュラのドライバーを傾けさせ必殺技「キープカウンター」でジョーカーの元へ走らせた。しかし、ジョーカーのターンフレームがアシュラの攻撃をいなした。先程フレームを裏返したことによりディフェンス特化になったのだ。アマネがカウンター攻撃を狙うのを読んで予め対策していたのである。相手のベイを知り尽くし、一か八かの駆けに出る――それが瑠璃川ジョーのバトルスタイル。それが、ジャッジメントジョーカー。
ジョーカーが外を回り、アシュラがセンターを取ると、重心を大きく傾けさせて必殺技「ハリケーンディフェンス」を発動。彼のディスクが敵からの攻撃をいなす。だが、ジョーカーの攻撃が上手くいなしきれず、アシュラが弾かれてしまった。すかさずジョーカーがラッシュ攻撃を仕掛ける。されるがままのアシュラは抜け出す糸口が見つからず、アマネは一筋の汗を垂らした。
「耐えろアシュラ!必ずチャンスが来るべ!」
「無理をすると傷口が大きくなるだけですよ?」
「ギャンブルは引き時が肝心。」
ジョーカーは一度下がり、アッパーデッキに上がるとトリックドライバーを傾けて、そのまま走り出す。ジョーが彼のを叫ぶとベイが紫と青色の炎に包まれて、中からジョーカーのアバターが現れる。ジョーカーは急斜面を使い、一気に加速。アマネも彼の名を叫びベイが緑色の炎に包まれ、中からアシュラのアバターが現れた。アシュラの12枚の刃でジョーカーの攻撃を受け止め、流そうとしたが、アシュラはジョーカーの強い力により、バーストされてしまった。ジョーのバーストフィニッシュで準決勝へ進出。ビクトリーズは計3人、彼に負けてしまったのだ。
ビクトリーズのために、全力を尽くし、守る為に戦ったアマネを心配し、ビクトリーズのドラム達は皆、アマネの元へ向かった。スタジアムの廊下でアマネを見つけると、アマネは悔しい顔をあらわにし、拳を壁にドン、と強く殴る。
「兄ちゃん……。」
「……任せろアマネ、お前の気持ちは受け取った!」
「っ…?」
「オレだってビクトリーズだ!」
「ドラム……どうしてその事を――」
アマネはふとタカネを見ると気まずそうな顔をし、目を逸らしていた。彼がドラム達に話したのだろうと理解したアマネは照れくさそうに言い放つ。
「べっ、別にお前に受け取って貰わなくたって構わないべ。」
「うぇっ!?なんだよソレ!せっかくお前の分まで戦ってやるって言ってんのに!」
「だから、それが余計だべ!」
「余計って!?お前の分思って言ってんだ!」
「だからそれが余計だって言ってるべ!!」
「余計ってなんだヨォ!」
「余計は余計だべ!」
「結局こうなるんだから。」
「でも、気持ちを預けられる存在がいるって良い事ですわ。ね、タカネ。」
「……そうだね!」
続いて準々決勝第2試合。金道フミヤVS 暗紅 シアのバトル。
関係者控え室で試合を見ていたバルトとフィニはこの試合を地味に楽しみにしていた。1回戦目からシアのバトルスタイルに少々惹かれるものがあった。
まだまだ荒削りな部分はあれど、素質は間違いなくある。彼女のバトルが、2人の心を躍らせる。
『アイツ……気になるな……。』
『そうだと思ったぜ。』
『私の所で技を磨いたらきっといいブレーダーになりそうだ。』
『早速クラブにスカウトしようとしてる〜。BCソルでも良いんだぞ?』
『お前教え方下手だから成長しないと思う。』
『なんだよそれ!』
すると会場から大きな歓声が響いた。2人は言い争いをやめ、視線をスタジアムに向けると、シアが1回戦を突破したところだった。
その後も彼女は勝利を続け、そして現在、前回優勝者の金道フミヤとの対決。彼女にとって不足はない。いや、最高の相手だろう。フミヤもシアもベイをランチャーを構えた。そして審判の合図と共に勢いよくストリングを引き、シアが早速センターを取る。彼女のベイはスタミナタイプ。相手もスタミナタイプで、タイプ相性は互角。どっちが勝ってもおかしくは無い。しかし、ファブニルの強烈の一撃でシアのベイはバーストされてしまった。
シアは驚きのあまり言葉も出ない。聞こえる歓声は全てノイズのように思える。意識が遠のき、空間には自分一人だけ残されているように思えた。
フミヤは自慢の金髪を払い、余裕の表情を見せる。
「ここまで…頑張ったのに……。」
「実力が違うよ、キミは。僕より弱いクセによく上がってこれだね?褒めてあげるよ。」
「っ…!」
シアはそそくさとベイを拾い上げ、その場を走り去った。彼女の目には涙が浮かび、今にも泣きそうだった。
スタジアムの廊下を駆け抜けいち早くここから去りたいと気持ちがいっぱいになった時、誰かとぶつかった。危うく倒れそうになったシアを支え、シアは助けてくれた人にお礼を言おうと目線を向けると、助けてくれた人物はなんとフィニだった。
「大丈夫か。」
「く、くくくく紅フィニ……!?」
レジェンドに助けられこれ以上言葉が出ないシア。フィニが彼女についてしまった埃を軽く払ってやると、彼女が泣いていることに気づいた。ポケットからハンカチを出して涙を拭いてやると頭を軽く撫でた。
「話なら聞くぞ。」
シアは先程フミヤに言われたことをフィニに話した。フィニは文脈が乱れた文章でも親身になって聞いてくれた。
「ありがとうございます……こんな話聞いてくれて……。」
「良いんだ、私が好きでやった事だから。そうだ、私は君に用があって来たんだった。」
「え、私に、用事……もしかして違法!?」
「違う違う。スカウトだ。」
「え、あ……えっ!?」
「君を……NYブルズにスカウトしたいと思う。」
フィニのセリフで涙が一気に引っ込んだ。自分はあの人に負けたのに。自分よりあの人の方がもっと高みを目指せるはずなのに。なぜ自分なのか。彼女の感情は色々怒りすぎてぐちゃぐちゃだ。
フィニはかのじをスカウトしたい理由を述べた。
実力自体まだまだなところはあるが磨けばダイヤモンドのように光る。そして、バトルスタイルや攻撃のスタイルが彼女の努力をそのまま表したように見えたからだ。
「君の意見はもちろん尊重する。もし、行きたいと思うならここに連絡するといい。私はいつでも待ってるからな。」
シアに自身の名刺を渡し、控え室に帰ろうとする。だが、シアは大声で彼女を引き止めた。彼女の目は、涙を拭うため擦っていたのでやや赤い。しかし、真剣な眼差しをフィニはすこしだけ、ほんと少しだけ期待してしまった。
「あっ、あの!……わ、たし……フィニさんの元で修行したいです!」
「……決断、感謝する。」
「これからよろしくお願いします、師匠!」
その後、ドラム、ロダン共に準々決勝を勝ち抜き、準決勝へ。ジョー、フミヤ、ドラム、ロダンの4人が準決勝出場者。この中から、決勝に進む2人が決まる。4人の中で誰なのか――それは、ベイとの絆が強い人が勝つ。
「今日もかっこよく決めてくださいよ!」
「もちろんさ。この大会はスパークデビルズが輝く為にあるんだからね。」
会場の廊下でフミヤは練習生2人を連れて歩いていた。フミヤは、1回戦目から順調に勝ち進み、ベスト8へ。前回の優勝者だった彼の実力なら、ここまで来るのは容易いことだろう。
しかし、彼は少し焦りを見せていた。それは、前回大会にはいなかった人物が今回の大会で参加しているからだ。
――そう、虹龍ドラムと灰嶋ロダンの存在だ。
ドラムは先日、自分を負かせたあのビクトリーズの期待の新人ブレーダー。一方、ロダンはアスリート選手でもありながら名の知れたブレーダーの1人だ。2人とも大会を勝ち進み、いつ自分と当たるか分からない。
フミヤは髪をかきあげる動作をし、焦りを隠した。自分は皆の模範となる存在だからだ。模範になる存在というのは、常に自信に満ち溢れ、常に人の前に立つことだ。
そう考えていると、向こうの方からビクトリーズの面々が歩いてくる。彼らもたまたまここを歩いていたのだろう。
ドラム達は先程外でジョーと話したばかりだ。真のギャンブラーと自負している彼の話を聞いたのか、いつもよりやる気に溢れていた。どちらがジョーを倒すか、ベスト8に進出したドラムとアマネは顔を近づけさせ言い争いをしていた。まだ、ジョーと戦うとも限らないのに。ジョーの言った通り、ビクトリーズ全員と戦うことになるかもしれないとも分からないのに。
「相変わらず元気だけは良いんだね。」
フミヤはドラム達の口を挟むように割って入れば、全員の視線は彼に向いた。ベスト8に残れたのは確かな実力なはずなのに、フミヤはクジ運と彼らをバカにするように神経を逆撫ですると、ドラムはむ、と口先を尖らせて反応を示した。
「クジ運だけだと!?」
「だってそうだろう?1人ならまだしも、弱小クラブから2人も残るなんて……まさか実力だなんて思っていない……よねぇ?」
「あら、そう言う貴方もクジ運だけで勝ったのではなくって?」
「……はぁ?」
「だってそうじゃない。今までの対戦相手……実力もあまり強くない選手ばかりでしたわ。人を煽ることしか出来ないのなら、今度人を煽らないお言葉の使い方をお教え致しましょうか?」
「キミも、口だけは達者なようだね。」
「ふふ、お褒めに預かり光栄ですわ。クジ運ブレーダーさん。」
クスッと目を細めて笑うと、フミヤはそれが心底嫌だったのかメガネを直すとそのまま練習生を連れて去ってしまった。シズク以外の4人は去っていくフミヤみ見つめた後、口々にフミヤに対し文句を垂らす。――しかしイチカの表情は少し複雑だった。
そのあと、ドラム達は観客席に入り、次の対戦相手を待つ。大きなモニターに映し出された8人のメンバー。第1試合はアマネとあの瑠璃川ジョー。ジョーの言っていた言葉が現実味を帯びてきた。偶然か、奇跡か、はたまたジョーが何かやったのか。それは分からない。ただ、選ばれた以上、全力で戦い勝つこと。アマネは左腕に巻いてるハチマキを頭に巻いて、気合を入れる。ビクトリーズはこれまでタカネ、イチカとジョーに負けてきた。ここでジョーに負ける訳には行かない。それに、彼には前から思っていた事がある。自分が優勝すれば、町でクラブをバカにしていた奴らは皆、クラブの強さが証明され黙り込むだろう。
アマネはスタジアムに向かい、向かいからはジョーがやってくる。
「草葉アマネ……前から君とは一度戦ってみたかったんです。」
コインを操りながらアマネを見つめる。ジョーは先日、ビクトリーズがバルトと対決する所を目撃していた。アマネやドラムの強さに興味があるのだろう。
「ファーストバトル!」
アマネはランチャーにベイをセットし構えた。しかし、ジョーはジョーカーのフレームを裏面にして装着し直すとランチャーにセット。
「レディ……セット!」
「「3!2!1!ゴーーシュート!!」」
両機豪快なシュートが決まり、早速ジョーカーの必殺技「トリックルーレット」が発動。トリックドライバーの軸先のガードがスタジアムを擦り、使用者も対戦相手もベイの軌道が読めなくなる。アマネは己のバトルスタイルを貫こうと、アシュラをセンターへ移動させ、防御の体制へ。しかし、ジョーカーの大きな2枚のラバー刃が強くアシュラに激突。両機弾け飛び、どちらが負けてもおかしくは無くなった。
ここでなんと奇跡が起こる。アシュラがスタジアムの壁にぶつかりオーバーフィニッシュを免れたのである。ジョーカーも同じようにぶつかり試合はまだまだ終わらない。
「今日は2人ともツキがあるみたいですね。面白いバトルになりそうです。」
「くっ……。」
「本当に運任せかヨォ!」
「自分が負けてたかもしれないのに。」
「それもギャンブルの醍醐味と言えるのではないかしら。」
「ふざけた真似を……ッ!」
ジョーカーは再び軌道が中心を駆ける動きを始めて、次の賭けへ。なかなかセンターが取りづらいと感じたアマネはアシュラのドライバーを傾けさせ必殺技「キープカウンター」でジョーカーの元へ走らせた。しかし、ジョーカーのターンフレームがアシュラの攻撃をいなした。先程フレームを裏返したことによりディフェンス特化になったのだ。アマネがカウンター攻撃を狙うのを読んで予め対策していたのである。相手のベイを知り尽くし、一か八かの駆けに出る――それが瑠璃川ジョーのバトルスタイル。それが、ジャッジメントジョーカー。
ジョーカーが外を回り、アシュラがセンターを取ると、重心を大きく傾けさせて必殺技「ハリケーンディフェンス」を発動。彼のディスクが敵からの攻撃をいなす。だが、ジョーカーの攻撃が上手くいなしきれず、アシュラが弾かれてしまった。すかさずジョーカーがラッシュ攻撃を仕掛ける。されるがままのアシュラは抜け出す糸口が見つからず、アマネは一筋の汗を垂らした。
「耐えろアシュラ!必ずチャンスが来るべ!」
「無理をすると傷口が大きくなるだけですよ?」
「ギャンブルは引き時が肝心。」
ジョーカーは一度下がり、アッパーデッキに上がるとトリックドライバーを傾けて、そのまま走り出す。ジョーが彼のを叫ぶとベイが紫と青色の炎に包まれて、中からジョーカーのアバターが現れる。ジョーカーは急斜面を使い、一気に加速。アマネも彼の名を叫びベイが緑色の炎に包まれ、中からアシュラのアバターが現れた。アシュラの12枚の刃でジョーカーの攻撃を受け止め、流そうとしたが、アシュラはジョーカーの強い力により、バーストされてしまった。ジョーのバーストフィニッシュで準決勝へ進出。ビクトリーズは計3人、彼に負けてしまったのだ。
ビクトリーズのために、全力を尽くし、守る為に戦ったアマネを心配し、ビクトリーズのドラム達は皆、アマネの元へ向かった。スタジアムの廊下でアマネを見つけると、アマネは悔しい顔をあらわにし、拳を壁にドン、と強く殴る。
「兄ちゃん……。」
「……任せろアマネ、お前の気持ちは受け取った!」
「っ…?」
「オレだってビクトリーズだ!」
「ドラム……どうしてその事を――」
アマネはふとタカネを見ると気まずそうな顔をし、目を逸らしていた。彼がドラム達に話したのだろうと理解したアマネは照れくさそうに言い放つ。
「べっ、別にお前に受け取って貰わなくたって構わないべ。」
「うぇっ!?なんだよソレ!せっかくお前の分まで戦ってやるって言ってんのに!」
「だから、それが余計だべ!」
「余計って!?お前の分思って言ってんだ!」
「だからそれが余計だって言ってるべ!!」
「余計ってなんだヨォ!」
「余計は余計だべ!」
「結局こうなるんだから。」
「でも、気持ちを預けられる存在がいるって良い事ですわ。ね、タカネ。」
「……そうだね!」
続いて準々決勝第2試合。金道フミヤ
関係者控え室で試合を見ていたバルトとフィニはこの試合を地味に楽しみにしていた。1回戦目からシアのバトルスタイルに少々惹かれるものがあった。
まだまだ荒削りな部分はあれど、素質は間違いなくある。彼女のバトルが、2人の心を躍らせる。
『アイツ……気になるな……。』
『そうだと思ったぜ。』
『私の所で技を磨いたらきっといいブレーダーになりそうだ。』
『早速クラブにスカウトしようとしてる〜。BCソルでも良いんだぞ?』
『お前教え方下手だから成長しないと思う。』
『なんだよそれ!』
すると会場から大きな歓声が響いた。2人は言い争いをやめ、視線をスタジアムに向けると、シアが1回戦を突破したところだった。
その後も彼女は勝利を続け、そして現在、前回優勝者の金道フミヤとの対決。彼女にとって不足はない。いや、最高の相手だろう。フミヤもシアもベイをランチャーを構えた。そして審判の合図と共に勢いよくストリングを引き、シアが早速センターを取る。彼女のベイはスタミナタイプ。相手もスタミナタイプで、タイプ相性は互角。どっちが勝ってもおかしくは無い。しかし、ファブニルの強烈の一撃でシアのベイはバーストされてしまった。
シアは驚きのあまり言葉も出ない。聞こえる歓声は全てノイズのように思える。意識が遠のき、空間には自分一人だけ残されているように思えた。
フミヤは自慢の金髪を払い、余裕の表情を見せる。
「ここまで…頑張ったのに……。」
「実力が違うよ、キミは。僕より弱いクセによく上がってこれだね?褒めてあげるよ。」
「っ…!」
シアはそそくさとベイを拾い上げ、その場を走り去った。彼女の目には涙が浮かび、今にも泣きそうだった。
スタジアムの廊下を駆け抜けいち早くここから去りたいと気持ちがいっぱいになった時、誰かとぶつかった。危うく倒れそうになったシアを支え、シアは助けてくれた人にお礼を言おうと目線を向けると、助けてくれた人物はなんとフィニだった。
「大丈夫か。」
「く、くくくく紅フィニ……!?」
レジェンドに助けられこれ以上言葉が出ないシア。フィニが彼女についてしまった埃を軽く払ってやると、彼女が泣いていることに気づいた。ポケットからハンカチを出して涙を拭いてやると頭を軽く撫でた。
「話なら聞くぞ。」
シアは先程フミヤに言われたことをフィニに話した。フィニは文脈が乱れた文章でも親身になって聞いてくれた。
「ありがとうございます……こんな話聞いてくれて……。」
「良いんだ、私が好きでやった事だから。そうだ、私は君に用があって来たんだった。」
「え、私に、用事……もしかして違法!?」
「違う違う。スカウトだ。」
「え、あ……えっ!?」
「君を……NYブルズにスカウトしたいと思う。」
フィニのセリフで涙が一気に引っ込んだ。自分はあの人に負けたのに。自分よりあの人の方がもっと高みを目指せるはずなのに。なぜ自分なのか。彼女の感情は色々怒りすぎてぐちゃぐちゃだ。
フィニはかのじをスカウトしたい理由を述べた。
実力自体まだまだなところはあるが磨けばダイヤモンドのように光る。そして、バトルスタイルや攻撃のスタイルが彼女の努力をそのまま表したように見えたからだ。
「君の意見はもちろん尊重する。もし、行きたいと思うならここに連絡するといい。私はいつでも待ってるからな。」
シアに自身の名刺を渡し、控え室に帰ろうとする。だが、シアは大声で彼女を引き止めた。彼女の目は、涙を拭うため擦っていたのでやや赤い。しかし、真剣な眼差しをフィニはすこしだけ、ほんと少しだけ期待してしまった。
「あっ、あの!……わ、たし……フィニさんの元で修行したいです!」
「……決断、感謝する。」
「これからよろしくお願いします、師匠!」
その後、ドラム、ロダン共に準々決勝を勝ち抜き、準決勝へ。ジョー、フミヤ、ドラム、ロダンの4人が準決勝出場者。この中から、決勝に進む2人が決まる。4人の中で誰なのか――それは、ベイとの絆が強い人が勝つ。