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第1章「ガチンコベイ誕生!!」

 翌日の事。ドラムは今日もアマネと練習を続ける。その近くで猫を撫でながら見ているイチカとイチカの肩を借りてスヤスヤと仮眠を取っているシズク。
 アシュラとグランドラゴンの戦いの末、アシュラが押し切りドラゴンがオーバーフィニッシュ。ドラムは悔しい顔をしてベースをグランからエースに変更、そして額に赤色のハチマキを巻いてアマネの真似を始める。
「勝負だべ!」
「なっ!真似するなべ!!」
「真似じゃない、気合いだァッ!」
「ぬぁぁあっ、だったらオラも!」
 そう言ってアマネはもう1枚ハチマキを取りだし2重巻きにした。ドラムもそれに対抗し3重、アマネが4重、ドラムが5重……と、いたちごっこを始まってしまった。その光景を呆れながらイチカが見ていると、外からタカネが慌てて帰ってきた。バタバタと勢いが良くタンゴの目の前を通り過ぎた為、危うく骨董品を落としかけてしまうが、無事にキャッチ。おぉ……。とイチカは拍手を送った。
「そんな事より、見てよこれ!さっきアップされた動画なんだけ……ど……」
 タカネが言い終わりかけた時、アマネの声にふと視線を向けると、まだ勝負を続けており、お互いハチマキの巻きすぎで首が垂れて重たそうにしていた。そのまま勢いよくシュートをしてバトルを始める。しょうもない2人のバトルを目を瞑りつーんとした顔で見るイチカとカチンと何かが切れたタカネ。タカネは息を思い切り吸うと大声で、
「……見てって言ってるでしょーーーーー!!!!!!」
「「どぅわぁあっ!?」」

 タカネのタブレットを囲むように見るドラム達。タカネが動画を再生すると、スパークデビルズへリムジンでやってくるフミヤの姿があった。フミヤはそこから降りるともう既に入口にいるインタビュアーやテレビ記者に囲まれ、1人のインタビュアーがマイクをフミヤに近づけた。
「金道くん!ベイブレードカーニバルの日が近づいてきましたけど、前回の優勝者として何か一言いいかな?」
 フミヤはカメラに思い切り近づき髪の毛をかきあげて右目を閉じた。いつの間にかフミヤの後ろから練習生達がインタビュー用のボードを持ってきていた。
 フミヤが狙うはもちろん優勝。それ以外ありえない。彼はこう語る。ライバルも張り合える人も居ない、必ず2連覇してみせると堂々宣言。
 しかし、フミヤは顎に手をやりしばらく考えるとポツリと一言。
「いや、1人いる。」
 彼の言葉にカメラマン達のシャッター音は止まらない。記者達も動揺を隠せない。記者達はこぞってマイクをフミヤに近づけさせるとフミヤは先程の余裕な表情とは変わって真剣な面持ちで「虹龍ドラム」の名を挙げた。
【虹龍ドラム?】
【聞いた事ないな……。】
【ビクトリーズ所属の凄腕ブレーダーです。】
「お"っ…!凄腕ブレーダー!?」
 当の本人がタブレット越しに目を輝かせまじまじとその画面を見ている。ドラムは天然で言われた事はそのまま受け取る事がある。だからこそ、フミヤの言葉をその言葉通りに受け取り、騙されている事に気づいていないのだ。
【ビクトリーズってあの弱小クラブの?】
【確かにクラブは弱小だけど、彼だけは本物。その力はBCソル出身だけの事はあります。】
【あのBCソルに!?】
【最高のブレーダーです。もしボクを倒すことが出来るとしたら……彼しか居ないでしょう。そうだ、いい事思いつきました!】
 フミヤはパン、と手を叩くとカメラに向かい、ドラムに挑戦状をたたきつけた。前回優勝者とその優勝者が認める実力のあるブレーダードラムのエキシビジョンマッチということだ。他のメンバーとは張り合いにならないし、ドラムとならいい試合が出来る、もちろん受けてくれるよね?とドラムに向かってだろうか。ウインクをするとそのままスパークデビルズの中に入っていった。
 明らかにフミヤの狙いが分かるメンバー一同。特にイチカはぐっと拳を握りしめ怒りをあらわにしていた。
「ねぇ兄ちゃん、これって――」
「クゥ〜〜ッ!きっまりィ!!オレしかいないってよ!!」
 予想通りの反応が出て一同呆れ顔。絶対そんな事心から思っているはずないのに。ドラムは天然だから他人から言われた事をそのまま受け入れてそのままの意味で解釈してしまう。
「タカネ!フミヤに言ってくれ!勿論やるってな!!」
「おバカね。」
「ええ!?でもフミヤの罠で――」
「ガチ燃えて来たァーーッ!!アマネ、練習だァッ!!」
「だから違うんだって!フミヤの本当の狙いは……」
 タカネが言いかけた時アマネはタカネの前に手を出し引き止めた。これ以上ドラムに何か言っても無駄だと分かったのだろう。アマネはそのままドラムと練習を始めた。
 一方イチカはタンゴの所に向かい、ムッと怒った表情で告げた。
「やっぱり私、“お兄ちゃん”に辞めるよう言ってきます。」
「構わん構わん。」
「お兄ちゃんは本気でビクトリーズを潰す気ですよ?みんなの前でドラムをコテンパンにやっつけて……。」
「そうなったら、そうなった時の事。」
「おっちゃん!……ッ、シズクはどう思うの!?」
「……大丈夫、策は講じていますわ。」
「それって……。」
「あの子を信じること。」





***

 翌朝。ビクトリーズ一行はスパークデビルズにやってきた。ぐっすり眠って気合十分のドラム。対し心配なタカネとただ見守ることしかないアマネとシズク。複雑な心境のイチカ。
 一同中に入ると、入口の改札口に鎮座しドラム達を出迎えていた。ドラムはそのままフミヤの所へ行き、試合前のアツい握手を求めるが、フミヤはその手を握ることなく、ドラムを見下すように笑った。
「今日の君は“道化”でしかないんだよ。」
「え?」
「あの動画のおかげでたくさんのテレビカメラが入り、無様に負ける君の姿を全国に中継される……。みんなが期待していただけに君の評価はガタ落ち!ビクトリーズの名もガタガタ落ち!はい!終わりィ!!ビクトリーズはジ・エンド――」
「辞めてお兄ちゃん!!」
 フミヤの言葉を遮るようにイチカが声を張る。フミヤとイチカは歳の近い血縁関係で、フミヤの思想とイチカの思想が合わず仲違いを起こしている最中なのだ。強くなければ意味が無いと思っているフミヤ楽しければいいと思っているビクトリーズやお気楽なドラムが心底気に入らないフミヤはクラブそのものに嫌悪感を抱いている。睨みつけるようにイチカに顔を近づけ、詰め寄るとすぐにそれをやめた。
「ビクトリーズの最後、しっかりと見届けるんだね。」
「っ……。」

 ―――「ちょっと待て。」
 楽しみにしていた先程のドラムの表情は怒りに満ちている。それもそうだ。ドラムをダシにして自分の株を上げて相手を落としているのだから。ドラムは拳をギュ、と握りしめて真っ直ぐフミヤを見る。絶対に負けない。勝ってビクトリーズを守ってみせる。
「だから言ったでしょう、イチカ。」
 シズクはポケットからハンカチを出してイチカの瞳から零れそうな涙を拭く。拭き終えるとフフ、と笑う。昨日言っていたドラムを信じる事。イチカはぐっとシズクの手を握るとイチカも満面の笑みで笑って見せた。
 フミヤは2人をキツく睨みつけ、その場を去った。
 ビクトリーズメンバーが会場に入ると、観客席は練習生や撮影カメラマンで埋め尽くされ、1番手前くらいにちょこんと、ビクトリーズが座る席が空いていた。なんと、カメラマンだけでなく、wbba.公認アナウンサー兼実況でお馴染みの穴見や、審判もいる。
 ドラムはスタジアム奥に行き、他のメンバーは観客席に座った。観客席から飛び交うのはドラムの声援ではなくやはりフミヤの声援。ドラムは完全アウェイの状況で勝てるのだろうか?いや、いくらアウェイの状況でも勝たなければならない。
 穴見の紹介でドラムにライトが照らされ、かっこよく登場――と、思いきや、ドラムはとても緊張していていつものあのコワ顔になっていた。ドラムのコワ顔にどよめく観客席。
 ガチ、ガチ……と、手と足が同じ方から出ているほど緊張しているドラム。
「ドラムー!顔の力抜いてー!」
「!!」
「力、ちーかーらー!!」
 タカネの呼びかけに気づき、顔をブンブンと振って気持ちを落ち着かせる。
 フミヤはいつも通り、ウィザードファブニルをドラムに突き出すと、観客は大盛り上がり。対し、ドラムがエースドラゴンを出した途端盛り上がっていた声はしん…と静まり返り、ドラムの屁もよく響く。
 審判が機転を利かせて、このバトルのルール説明を行った。公式戦では無く、エキシビジョンマッチなので、ルールは2P先取。
 お互いベイをセットして準備万端。
「ウィザードファブニルはラバーで相手の回転を吸収するベイ……。エースドラゴンの攻撃で、回転が上がる前に一気に決める……ッ!!」
「―――えっ?」
 ドラムは無意識だが、作戦を口に出して言ってしまう癖がある。それで相手に自身の作戦がバレて対策されることがしばしば。今回もそのように、フミヤに作戦が完全にバレてしまった。これには観客も、穴見も審判も大困惑。
「ダァーッ!やっちゃった〜!!」
「あれ何とかしないと……。」
「何とかした所ですぐに戻ってしまいますわ……。わたくしもう諦めてますの……。」
(天然か……。面白い、君の“作戦”に乗ってあげるよ……ッ!!)
 審判の合図で2人は声を揃え、勢いよくシュートを放った。
 ファブニルがまずセンターを陣取り、防御態勢へ。ドラゴンも端の方から勢いをつけて、ドラムの宣言通りアタックを仕掛ける。チャージドライバーを傾けさせ、勢いのままファブニルに連続攻撃。大きなラバー刃でドラゴンの攻撃を吸収していくが、ドラゴンをその回転を止めることなく、ファブニルを追い込んでいく。しかし、ファブニルの方が1枚上手だった。ライズドライバーが傾き、ブレーキをかけるとそのままドラゴンへ攻撃。ドラゴンはファブニルの勢いに飛ばされ、そのまま地面に落ちる。フミヤのオーバーフィニッシュで1P、まずは先取。予想通りの結果に観客は盛り上がる。
 ドラムは頑張って追い込んだものの、いとも容易く弾かれた事に驚き、またフミヤとファブニルにものすごく高く越えることの難しい壁に見えた。
(……ドラム、飲み込まれてはダメですわ……。)
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