このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第1章「ガチンコベイ誕生!!」


 ―――タタタッ……! バンッ!

 勢いよくドアを開けて、元気にただいまと告げるドラム。
 突然大きな音が部屋中に聞こえたので、骨董品を掃除していたタンゴの手から落ちそうになった。
「おっちゃーん、作業場借りるね〜。」
「ふぅ……どうしたァ?急に。」
「ドラゴンを進化させたいんだ!」
 ドラムはフミヤのウィザードファブニルに強く影響を受けて、ドラゴンを進化させたいと考えたらしい。
 そう言って作業場に入ると早速ドラゴンを進化させるための準備を始めた。うおお!と声を出しながら、パソコンで操作したり、設計図を考えたりと忙しない。
 ある程度設計図ができると、それをパソコンでコピーし、様々なスタミナタイプのレイヤーを合わせて、ドラムはこれだ!と思ったのをパソコンに打ち込んだ。そしてプリンターの方に移動すると自分の思い通りのベイがそこにはあり、いつ終わるのだろうとわくわくしながら眺めていた。
 メンバーもどんなベイができるか気になっており、新ベイ完成を待っていた。
 プリンターでの作成を終えると、ある程度いらない部分を削り、ヤスリがけして塗装を施す。そして最後にはタオルで軽く拭くと赤く猛る炎のようなベイが姿を現す。
 ベースはグラン、ウエイトは斬、ガチンコチップはドラゴン。2枚刃のスタミナタイプベイ。名を「グランドラゴン」と言う。
 タカネは目を輝かせながら自身のスマホでパシャパシャと写真を撮り始める。
「キミ、本当にベイ作れるんだ。」
「内側に穴が空いているからより強い遠心力が生まれ、持久力も高いですわ。」
「かっこいいねぇ〜!」
「だろ〜!炎のドラゴンをイメージしたんだ!超カッケェ〜ッ!」
 グランドラゴンを天に掲げ、見つめると、突然赤い光にドラムは包まれた。この感覚に覚えがある。目を開けると、やはりそこにはドラゴンが居て、彼の周りには炎の柱が飛び出していた。
ドラム――。私を進化させてくれたな。
「ああ、アタックプラススタミナだ!誰にも負けないベイにしたくってヨォ!」
――私はこれで、より高みを目指せる!まだまだ私達は強くなれる!
「だよな、オレたちもっともっと最高のベイを目指そうぜ!」
 再び光に包まれ、元いたところに戻ってくると、ドラムはシズクに勝負を申し込んだ。
「よし、シズク!バトルしようぜ!!」
「良いですわ。丁度腕もなまっていたところですし。」
 2人はスタジアムに立ち、ランチャーをセットする。ドラムの実力はだいたい分かるとして、シズクに至ってはドラム以外ベイも、実力も見せた事がない。
 シズクはポケットから彼女の愛機――「ビリーヴサレオス」を取り出す。4枚刃の左回転、アタックタイプ。ベースはビリーヴ、ウエイトは双、ガチンコチップはサレオス。斜めに重たくウエイトか入っているので攻撃がより高く、より強いベイとなっている。
 シズクは横髪を軽く払い、準備万端。ドラムもベイをセットしてタカネにアイコンタクトを送る。
「いくよー!レディ……セット!」
「「3!2!1!ゴーーー……シュート!!」」
 2つのベイが思い切りスタジアムに放たれ、ドラゴンがセンターを取ると思いきや、壁を思い切り跳ねてドラムの顔の近くに飛ぶ。ギリギリ手が出てドラゴンをキャッチしたが、ドラムは何が起こったか分からない。
「これじゃあ練習になりませんわよ。」
「も、もう1回だ!」
 もう一度放つが、壁に当たりそのままスピードが急激に減速しスタジアムに転がる。
 それから何度も、何度も2人はシュートを放つが、ドラゴンだけすぐにスタミナ切れで止まってしまう。
 ドラムはドラゴンを拾い上げて、小首を傾げた。エースドラゴンの時と何かが違う。しかしどう違うのかドラムは分からなかったが、横から試合を見ていたアマネが口を挟む。
「違うのは、おめぇのシュートフォームだべ。」
「はぁ?シュートフォーム?」
「力みすぎだべ。そのせいでシュートに必要な“瞬発力”を殺してる。ベースが変わってそれがハッキリと分かっただけだべさ。」
「確かに、エースドラゴンの時と音が少し違うように聞こえましたわ。」
「じゃあ、あっじゃあ!どうすりゃ良いんだよ!!なぁ、な"ぁ"ぁ"あ"……!!」
 ドラムはコワ顔でアマネにビッタリとくっつき、問いかけるがその答えはアマネからではなく、タンゴから出る事になる。
 タンゴは立ち上がり、台所からミニテーブルとテーブルクロス、食器、水の入ったポット等を持ってきて並べた。そして意識を集中させて勢いよくテーブルクロスを引く。テーブルクロスの引く勢いで食器達も流れるかと思いきや、食器はテーブルの上に留まる。
「なるほど……慣性の法則ですわね。」
「かんせいのほうそく?」
「動いていない物体が何らかの力が働かない限りそこに止まり続ける事ですわ。これをどう練習に活かすのかしら……。」
「この特訓をクリアすれば、その先にある何かが掴める。」
「わ、わかった!」
 タンゴは水の入ったポットをグラスの表面ギリギリまで入れてドラムに渡した。タンゴが言うには、水をこぼさずにテーブルクロスを引けばその先が見られると言う。ドラムは緊張しコワ顔になりながらも左手に水いっぱいのコップ、右手にはテーブルクロスを持ち、特訓の準備万端。……しかし、緊張のし過ぎで肩の力が全然抜けていない。はぁ、とため息をこぼすシズクとイチカ。タカネはドラムの練習風景をライブ配信。たくさんの視聴者やコメントが集まり、ドラムの顔はさらに険しくなる。
 サッと抜けばいい。そう、サッと。ドラムはブツブツと独り言を喋りながら勢いよくテーブルクロスを引く。しかし慣性の法則とは正反対に食器は中を舞う。――食器が割れる!全員がそう思ったが、聞こえてきたのはカラカラ……という音が響く。どうやら使われている食器は全てプラ製品。コンコンと、叩きそれを証明せる。
「なーんだ。」
「ま、頑張れよ。」
 食器の再び机の上に置き、肩をポン、と叩くとそのまま奥のソファーに横になると、愛猫を撫で始めた。
 それから何回もテーブルクロス引きにチャレンジするが、食器が落ちたりグラスから水がこぼれたりと一向に成功しない。
 しばらく経っても成功せず、疲れだけが溜まっていくドラムの頭に1つのアイデアが浮かぶ。
「割れないって思うから気合いが入んないんだよ。」
「あっ、それ……。」
 ドラムが奥から取り出したのはタンゴが毎日ピカピカに磨いていた趣味の骨董品だった。プラ食器を片付け、テーブルクロスの上に骨董品を置き、再びグラスの中を水いっぱいに入れてクロスを掴む。
「お、おい!ソイツァ〜ッ!」
 タンゴが慌てて取り返しに起き上がるが時すでに遅し。もうドラムはテーブルクロスを引いていた。
 失敗する――と、思いきや、グラスから水は零れず、テーブルにはあの骨董品がテーブルクロスに引きづられる事無く、そこに留まっていた。
「「できた!」」
「大成功ーーー!!」
「やったべな。」
「ええ、とても素晴らしいですわ。おじさまの心臓は…今悦べる状況じゃあないかもしれませんが……。」
「クゥー!よっしゃぁあ!」
 テーブルクロスを持っていた右手を上げようとした時、布か骨董品に当たり、テーブルから落下する。しかしタンゴがギリギリの所でスライディングキャッチし、そのまま壁に激突。顔面は怪我したかもしれないが、骨董品は無事で天に掲げたあとパタリと力尽きた。
「神動画だよ、これ!」
「えぇ……。」
「よし、勝負だ!アマネ!」
「……勝負するのはオラじゃないべ。」
 アマネは腕を組んだまま目を瞑りポツリと呟く。
「勝負すんのは――シズク、おめぇだべ。」
「……わたくしで良いのかしら。」
「ああ。お前でいいべ。」
「では、お言葉に甘えて。ドラム、覚悟は宜しくて?」




***

 タカネがカメラ兼実況、イチカが審判となり、ドラムとシズクは向かい合わせにスタジアムに立った。ランチャーを構えて、お互いセット完了。
「始めるよ。レディ……セット!」
「「3!2!1!ゴーー……シュート!!」」
 お互いのベイが勢いよく放たれ、グランドラゴンは綺麗に円を描くように回っている。特訓の成果が出ている証拠だ。
 ドラゴンはセンターを取り、そこにサレオスがアタックを仕掛けに行く。大きな2枚刃が敵からの攻撃を上手くいなし、相手のスタミナを削っていく。
「ビリーヴストライク!」
 サレオスのヴォルガニックドライバーが傾き、勢いのままドラゴンに力強い一撃を与え、鍔迫り合いが起こる。しかし、ドラゴンのスタミナは衰える事を知らない。そのままドラゴンはサレオスを飛ばし、壁際まで追いやる。
「今ですわ、パラドックススマッシュ!」
 サレオスのディスク――「パラドックスディスク」は下向きに刃が伸びている。サレオスは大きく機体を傾けると、ドラゴンに上から叩きつけるスマッシュ攻撃を仕掛ける。
 ドラゴンは空を舞い、少し体制を崩してしまうがすぐに立ち直りそのままサレオスにアタック。
「ッ……はぁぁあッ……!!サレオス!!」
 シズクが彼の名を叫ぶとベイが黄色と青の炎に包まれ、その中から伯爵のような格好をした悪魔「サレオス」のアバターが現れた。
「うおおお!ドラゴンッッ!!」
 ドラムも彼の名を叫ぶとベイが猛る炎に包まれ、中からドラゴンのアバターが現れた。
 お互いに連続攻撃を仕掛け、一歩も譲らない戦況に。
「うおおお!グランビート!!」
 ドラゴンの勢いが増し、サレオスがドラゴンの動きについていけず、ただ攻撃を受けるような形になる。
 すると、ドラムとドラゴンの強い絆がベイに新しい力を与える。薄らとだが、ドラゴンが金色に光を帯びたような気がした。
 ドラゴンは赤い閃光のようにラッシュ攻撃をし、そのままサレオスをバーストまで追い込んだ。
 バーストフィニッシュでグランドラゴンの勝利。
「あの光……なんなのかしら……。」
「あわわ……グランドラゴンが勝っちゃった!」
「しゃ〜〜ッ!!」
「へっ、やるな。」
「やったなドラゴン!オレたち、サイコ〜ッッ!!」
「今回は負けましたわ。アマネの言葉を借りるなら……次はギャフンと言わせてやる、かしら。」
「?だからギャフンとか言わねぇし。」
「……ふふ、そうですわね。」
 クスッとシズクが笑うと、ドラムも嬉しいのかニカッと笑った。
 周りは、2人はのバトルに刺激を受けたのか次々にドラムとのバトルを申し込む。あまり興味を示さなかったイチカが一番に乗り上げ、スタジアムに立つと、ランチャーを構えた。シズクもそこから立ち退き、タンゴの隣に座ると、イチカとドラムのバトルを眺め始める。





――「3!2!1!ゴーー………シュート!!」
4/7ページ
スキ