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第3章 「バトルジャーニー!世界チャンピオンへの挑戦!!」

 ドラムとデルタの勝負は意外にもあっけなかった。ベノムディアボロスの力は以前より強くなっていて、デルタ自身も、ディアボロスに憑依されているのではないか、というくらい気迫があった。
 これで終わりかと思いきや、ドラムが突然コワ顔になりデルタに近づこうとする。アマネが慌ててドラムを止めたが、ドラムはただ怒っているわけでも悔しいわけでもない。デルタの力にとても感心しているのだ。
 ドラムがディアボロスを拾い上げ、まじまじと見ているとデルタは突然声を荒げた。ディアボロスに触るな、と。荒々しく奪い返すと、ドラムは驚いたものの、申し訳ないと思い謝罪した。
 とはいえ、デルタの実力は本物だ。ドラムが彼を目標とし、彼を求めているのも理解する。
 そんなドラムが目標として目指し始めたのは一年前。ドラムがBCソルに入団した時のことだ。
 この時のドラムはまだドラゴンを手にしていないどころか、シュートフォームもままならないほどの実力だった。
 ドラムが憧れのBCソルの門をくぐり、元気よく駆けていると、体育館の方からベイ同士がぶつかる時の金属音のような音がドラムの耳に入ってきた。
 ドラムは不思議そうに体育館の扉を開けて中を覗くと、疲れ切ったブレーダー達が息を切らし倒れ込んでいた。その中央では、当時のデルタとシズクがランチャーを構えお互い倒れ込んでいるブレーダー達のように汗をかき、息を切らし、それでも力を振り絞り立ち上がりスタジアムを見る。
『1999……ッ!』
『これで絶対成功させてくださいまし……ッ!』
『ああ!!』
『『3!2!1!ゴーー……シューートッッ!!!!』』
『ぐッ……!』
『デルタ!』
 シュート時にデルタは自身が横に反時計回りで回転することによってワインダーを引く時の瞬発力を最大限に発揮されると考え、現在こうして練習しているのだが、回転時に足首をひねらせてしまい捻挫ギリギリの失敗を繰り返している。
 シズク含めたBCソルのブレーダーも、デルタの練習に付き合っているのだが、皆疲れてしまい、シズクだけが残っていた。
 シズクはデルタをちゃんと座らせると、心配そうな顔でデルタの手首を優しく包みこんだ。
『一度休憩を挟みましょう、デルタ。貴方が壊れるのは見たくないですわ……。』
『これじゃ駄目だ……駄目なんだ……。』
『デルタ……ッ。』
『次!』
『……もう、仕方ない子なんだから。壊れて壊れても知らないですわ!』
 む、と口先を尖らせながらも再びベイをランチャーにセットし、2000回目のシュート。だがまた失敗。今度は尻もちついて衝撃でバタリと倒れ込む。
 まだだ、と言ってデルタは立ち上がる。
 さすがのシズクも疲れてきたのか、その場にへたり込むと、近くで見ていたドラムの存在に気づいた。
『貴方!そこで見ているんだったらランチャーを構えてくださいまし!』
『えっ、お、オレ……?』
『そう!』
『で、でもオレ、今日BCソルに入団したばっかで……』
『いいから!』
『次!!』
 デルタはドラムに向かいランチャーを構えた。デルタの闘志とアツい気持ちがオーラとなって現れたのをが見えたのか、カバンからランチャーとベイを取り出し、構えた。
『3!2!1!ゴーー……シューートッ!!』
 飛んだ足先は綺麗な弧を描き、先程までの失敗が、努力が実を結んだのか、転ぶことなく回転して着地した。
『行け。』
 デルタが放ったベイがドラムのベイめがけて加速していき、一瞬にしてバーストさせた。風が舞い、思わず後ろに倒れるドラムとブレーダー達。それほど、デルタの力は圧倒的だった。
『次!』
『こら、皆様疲れているのですし、休憩を挟みますわよ。デルタも、汗だくじゃない。』
『俺は……』
『デルタ、わたくしの言うことを聞いてくださいまし。貴方の身体が本当に心配なの。』



――
―――


「……シズク、帰るぞ。」
「えっ、でもわたくし……」
「お前はこんなところに居てはならない。」
 デルタはシズクの手首を掴んでグイグイと出口の方に連れて行く。彼女はビクトリーズの一員。帰るも何も、ここが彼女の帰る家だ。
 シズクはデルタの手を振り払おうとするが力の差でなかなか解けない。
「待ってくれ!デルタ!オレともう一回勝負してくれ!」
「本当に待って……!デルタ!!」
 すると、デルタがピタリと止まった。シズクの声に耳を傾けたのか、

 ――はたまた禍々しい悪魔の炎に止められたか。

 デルタは右手に持っているディアボロスに目をやると、赤い光を放ち、デルタにもっと戦わせろ、食わせろと訴えているようだった。
 すると強い光に包まれデルタは思わず目を閉じた。しばらくすると、溶岩のような風景に浮かんでいた。そして眼の前には自身の愛機のアバターが立っていた。
消すべき光は、まだ残っている。
「……何?」
輝く星は一つでいいと言ったな。
「……そうだが。」
俺がヤツの光を食ってやるッ……!
「……!」

 デルタは現実に戻されると、そっとシズクを掴んでいた手の力を緩めた。感覚が無くなっていくのを感じたシズクはすぐにイチカ達のところに戻った。
 デルタはしばらく動かないでいると、「もう一度だ。」とドラムに言い放ち、スタジアムに戻った。
 ドラムは嬉しそうに笑うとドラゴンに絶対勝つぞ、と語りかけ自身もスタジアムに戻った。
「私が審判やるわ。」
「……二人とも……。」
「手、大丈夫だべか。」
「……ちょっと、いたい。」
 ドラムはドラゴンのベースをエースからグランに変更。スタミナと持久力でディアボロスを長期戦に持ち込もうとする作戦だろうか。
 イチカの合図で双方声を揃えて一気に力を放出させてベイを放った。
 グランドラゴンが早速攻撃を仕掛ける。ドリフトをかまして連続アタック。ドラゴンの攻撃で跳ね上がったディアボロスを下から突き上げるように更に仕掛けていく。
 ドラムが彼の名を叫ぶと、ベイが猛る炎に包まれて、中からドラゴンのアバターが現れた。
「グランドビート!!」
 すると、ドラゴンが黄金に輝いたような気がした。それをデルタは見逃さなかった。ベイカーニバルで見せたあの力はまぐれではない。確実に発動させている。ドラゴンは激しい連続攻撃の末、ディアボロスをバースト――
「待って!これはバーストではありませんわ!」
「何ッ!?」
 ディアボロスをよく見るとドライバーとレイヤーで分裂していたのだ。
「デュアルファントム!」
 分離した本体はセンターへとどまり、ディアボロスのドライバー「バレットドライバー」小回りを利かせてドラゴンへ攻撃を仕掛ける。
「お前の光は、ディアボロスが全て飲み込む!ディアボロス!!」
 デルタが彼の名を叫ぶと、ベイは赤黒い炎に包まれて中からディアボロスのアバターが現れた。
 その先は何が起こったか分からない。ただ一つ、分かる事はディアボロスがドラゴンを再びバーストさせた。ただそれだけだ。
「こんなのあり……?」
「まじかよ……。」
「ほう、初めてだな。こんなベイ。」
(満足したか、ディアボロス。)
まだだ。まだ足りない。
(……よし。)
「ドラム、もう一度だ。」
「あ、あぁ。」
 ドラムが慌ててランチャーを構えようとした時、アマネが静止の一声をかけ、ドラムをこちらに呼び寄せた。
 解説モードにアマネは丸メガネをかけてドラムに先程の試合について問い詰めた。ドラムは何も答えずただ驚いていると何も分かっていないのを理解したのか、タカネが撮っていたスマホをドラムに見せた。ディアボロスが分離し、バレットドライバーがドラゴンを集中攻撃し、ふらついたところを本体がドラゴンと衝突し、そのままドラゴンはバーストされてしまった。
「あぁ、こんなのくらっててんだぁ……」
「ばぁーか、感心してる場合じゃないべ。」
「分身攻撃とはね。ついに悪魔のベイが正体を表したってこと?」
「こんなベイ、どうやったら勝てるの?」
 策など誰もあるわけがない。誰も見たこともないベイの構造をしているからだ。それに、見たのはこの一回のみ。アマネも詳しいアドバイスが出来ない。
 イチカやシズクがアマネに呆れた表情を送ると、ソファーからタンゴがいつもの気だるげな声色でドラム達に声をかける。GT3の一角と熱い戦いが出来るなんて、ドラムはツイているなんてお気楽なたんごはドラムに耳打ちした。ドラムはタンゴの口元に耳を傾けると何か凄いアドバイスを貰ったのか、とてつもない笑顔でわかった!と返事し、スタジアムに戻る。
「……?おっちゃん、ドラムに何言ったべ?」
「さ、どうなりますか。」
 再びソファに戻っていくタンゴを、メンバーは見つめながら、彼がドラムにどんなアドバイスをしたのか気になるばかりだ。

「お前がすごいのは分かってる!だからこそ――ッ!!?」
 ドラムが目を見開いた。なぜなら、デルタが突き出したベイはベノムディアボロスでは無いからだ。ベースの色が白で左回転になっている。



――「これで最後だ。」
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