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第2章「ベイブレードカーニバル 開幕!」

 いよいよ準決勝2回戦が始まる。
 ロダンが使うベイは、ベースがツヴァイ、ウエイトは滅、ガチンコチップはロンギヌスの左回転、重量級アタックタイプ。ベースの刃にはメタルが搭載されており、より強烈でよりパワーのあるアタックが可能。
 ロダンはこのロンギヌスのパワーで全て一瞬にして相手のベイを粉砕、バーストしてきた。
 そのベイがファブニルのラバーがどう吸収されていくか気になるところではある。
 フミヤの実妹であるイチカは、皆の話を聞いてはフミヤの方に視線を向け、心配そうな表情で彼を見つめていた。
「やるじゃない。ま、お手並み拝見と行こうか。」
「相手が誰であろうと……頂点を極める為の通過点に過ぎん。」
「頂点という言葉は、僕の為にある。だから、君はここでジ・エンドだ!!」
(フミヤとロダンから凄まじい気迫とこの試合に対する熱意を感じるな……。フミヤは頂点に立つ為の気持ちが全面的に出ている。対するロダンはそれすら気にしていない様子だ……。)
「ファーストバトル。……レディ……セット!」
「「3!2!1!ゴーー……シュート!!」」
  ロダンの全てのパワーがランチャーを通しベイに伝わり、ロンギヌスは凄まじい速さでスタジアムを駆ける。一方ファブニルはセンターを取り、相手からスタミナを吸収する作戦だろうか。
 すると早速ロンギヌスがファブニルに攻撃を仕掛けた!
 勢いある攻撃がファブニルを弾き、そのまま壁に激突し上へ飛ぶが何とか堪えセンターへ戻る。
 低重心で尚且つメタル搭載の刃が相手に当たることで相手のスタミナを一気に削ることが出来る。
 ロンギヌスはその後もう一度素早い攻撃を仕掛けると、ファブニルは簡単に弾け飛び場外にカランコロンと音を立てた。予想外の早期決着で観客は声すら出ない。フィニのコールで現実に戻された観客達はフミヤに勝ったロダンに観客の熱気はオーバーヒート寸前。
 ただ1人、妹のイチカを除いて。
 イチカはぐっ、と拳を握りしめフミヤを心配する。
「んぉ?やっぱ兄ちゃんに勝って欲しいのか!?」
「別にそんなことないし。」
「だよな〜、ガチ全力でおうえ――」
「だから!違うって言ってるでしょっ!」

「2ndバトル。レディ……セット!」
「「3!2!1!ゴーー……シュート!!」」
 両機綺麗なシュートが決まった。センターを先取しようとするファブニルに対し、猛烈なスピードでセンターへ向かう。しかし、フミヤはそれを読んで必殺技「ラチェットスルー」を発動。
 ファブニルのラチェットディスクは相手が右回転か、左回転かで効果が変わるのだ。右回転に対してはフリー回転せず引っかかり、相手の回転力を吸収するのに対し、左回転に対してはそのままフリー回転し受け流すのだ。――重たく強いベイに対しても。
 ロンギヌスはラチェットディスクに流され、弾かれた。
 その後、何度も何度も強い攻撃を仕掛けるが、ファブニルのラチェットがそれを全て受け流していく。そして、ロンギヌスは力抜き、回転が止まる。フミヤがスピンフィニッシュで1P取り返した。
 フミヤに対する歓声が、喜びが、輝く光が、フミヤにとっては最大の力となり、自分をさらに強くさせ、その強さが証明されている証拠でもある。
「取り返した!」
「やっぱ兄ちゃんを応援するよな!」
「っ、ロダンがやられてあー残念!って思ったの!」
「まぁ、素直じゃないこと。」
「うぅ……ッ!」

「3rdバトル。」
 フィニが合図を出した時、ロダンが咆哮を上げた。その咆哮が風を巻き起こし、観客にまで伝わる程。
 ロダンの気迫が更に濃く、強く伝わり観客は息を呑むが、フミヤはロダンの気迫に怖気づくこと無く彼を見つめるとフミヤからも気迫がより強く現れる。
 ロダンの気迫は、高揚感。フミヤはこの試合だけでなく、この大会に勝つというプライド。この気迫は、どちらが勝つか分からなくさせてくる。どちらが勝っても、観客は盛り上がり、声を上げ、騒ぐ事だろう。
「レディ……セット!」
「「3!2!1!ゴーー……シュート!!」」
 両機凄まじいシュートが決まった。ロンギヌスは、1st、2ndとだんだんパワーとスピードを上げてはファブニルを翻弄してきた。3rdバトルも更にスピードを上げてはアッパーデッキへ駆け上がり、さらに加速。しかしファブニルのディスクがそれを軽く受け流す。ロンギヌスが猛攻撃を仕掛け、ファブニルに激突。ファブニルは回転を止めることなく、ロンギヌスのパワーを吸収していく。
「ファブニルのスタミナを甘く見るな……さぁ、ここからだよッッ。」
 ファブニルがアッパーデッキにあがり加速する。
 ロンギヌスから貰ったパワーと、ファブニルのパワーが合わさった最強のベイが今、ロンギヌスに――!!
「僕の勝ちだァアッ!!!」


―――「お前がな。」


 ロンギヌスがファブニルの攻撃で弾かれ、壁に激突した時、ロンギヌスのロックが動いた。ウエイト、レイヤー、ディスクのメタル部分が重なった時、ロンギヌスは今まで以上のパワーを発揮するのだ。
 ロダンが彼の名を叫ぶと青い炎に包まれ、中からロンギヌスのアバターが現れた。氷のように冷たく、鋭い刃が、赤き瞳がファブニルを貫きファブニルを粉砕。フミヤもその刃に貫かれ、仰向けになって倒れていた。
「………っ、ツ、ツヴァイロンギヌス、バーストフィニッシュ!ポイント3-1で、灰嶋ロダンの勝利!」
 あまりにも強かった。前回優勝者がここで敗退し、意外な展開にフラッシュライトが止まらない。フミヤに対しての光はロダンに全て奪われ、今のフミヤは何かが抜けた抜け殻のように微動だにしない。
 勝負の世界は時に残酷で、時に意地悪である。まるで相手に神から力を与えたかのように、自分に対し試練を与えてくる。
 そんな世界で生きているからこそ、努力するのが当たり前であり、努力を怠った者は神から力を得ることすら出来なくいのだ。
 しかし、フミヤはそのように努力を怠った事など一度も無かったはずだ。
 ――では、何がいけなかったのか?
 あれほど努力し、ここまでやってきたフミヤに足りないもの。
 答えは1つだろう。彼は己の力を過信しすぎたのだ。しかし、相手の力もこの試合だけで瞬時に理解し、それをバトルに活かせたのは彼の元からある才能だろう。

 これで決勝のカードはビクトリーズ所属の期待の新星虹龍ドラムと、アスリートブレーダー灰嶋ロダンに決まった。
 互いの闘志が燃え盛りぶつかり合い、混じりあっている。そんな思いで準決勝の試合は幕を閉じた――。




***

 その日の夕方の事。フミヤは1人、公園の円形になっているベンチに座っていた。夕焼けの影から見える表情はいつもより暗く、これを見ただけで落ち込んでいる、というのがわかるだろう。予想外の結果で終わってしまったのだ。落ち込むのも無理は無い。
 すると、イチカが兄を心配し夕焼けがよく当たるところに座ると、独り言のように喋り始める。
「準決勝で負けるなんてねぇ。ま、お兄ちゃんにはいい薬よ!」
「……そうかもな。」
「えっ…」
 いつもならここで言い返すはずのフミヤが珍しく他人の言葉をそのまま受けた。フミヤはきっとイチカが今まで何が言いたかったかようやく理解したのかもしれない。
 木陰の方で見守っていたドラム達もそう思っていた。
「……まだまだだ。ボクも」
 イチカが少しづつ、フミヤに近づく。彼の今まで聞いたことない活力を失った声に自分もまるでその状況を経験したかのように同情してしまう。
「……まだ、ビクトリーズなんかに居るつもりか?」
「そんなの、私の自由でしょ。」
「お前が、スパークデビルズに居た時、厳しく指導したのは、お前に強くなって欲しかったから……勝つ喜びを知って欲しかったからだ……。」
「……。」
 イチカがふと、フミヤを覗こうと横を見た時、フミヤの顔がドアップで映っていた。そう、イチカが気づかないうちにほぼ真横に来ていたのである。
「どうして分かってくれないんだ!」
 フミヤはああいう雰囲気を出しておきながらベイは強さだけじゃないことを理解していなかったのだ。
 イチカはフミヤから少し距離を離し、以前からずっと、ずーっと話していることをもう一度フミヤに話すが、彼は甘えたことを、と言い、こちらの聞く耳を持たない。
「いいかげんにして!なんでもお兄ちゃんの思い通りに行くと思ったら大間違いだからね!」
「ほぁ……ッ!?クッ……!!イチ――」
「はい!交渉決裂!!」
 妹からバッサリと切られた兄は試合に負けた時よりも、ガッカリするだろう。しかし、兄にとって…いや、きょうだいにとって一番の幸せは、もう一人の眩しい笑顔だ。
 どんな宝石よりも輝いて見えるイチカの笑顔はフミヤに光をくれたが、一瞬にしてその輝きは消えてしまった。
「じゃ、この話はこれで。」
「ボクは諦めないぞ!」
「はぁ!?」
「お前を」
 ――ジリ。
「必ず!」
 ――ジリジリ。
「スパークデビルズに!連れ戻すからなああああッッ!!!」
 もはや気持ち悪いと思えてしまうほど詰め寄るフミヤに凄まじい速さで後退するイチカ。円形のベンチを何周も周りながら兄妹の追いかけっこが始まる。
「何やってんの、二人とも。」
「でもさ、フミヤってなんだかんだ思いなんじゃねぇの?」
「ストーカー気質の行動にしか見えませんわ。」
「……そうだべか。」
「あいつ、案外良い奴だったりして!」
「ッ、どこがよ!!!」
「イチカあああああッ!!!!お兄ちゃんの話を聞けぇぇええええッッ!!!!!!」
 猛スピードでしつこいと言われてしまうほどイチカを追いかけ回すフミヤ。確かにここまで執拗に追いかけ回す兄もあまり見かけない。だがフミヤはそれほどイチカに対し、愛情があるのだろう…か?
「おーい、やめろよ兄妹喧嘩は~!」


「なんなのッ!?いい加減にしてよおおッッ!!!!!!」
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