第1章 これがスパーキングベイだ!
フリーに完敗したヒカルとヒュウガ。だが、負けたものの、あのフリーを本気にさせたのは間違いない。
試合が終わるとフリーはそそくさとトレセンを去る。もう一回バトルをしろと、ヒュウガ達はフリーの後ろを走ってついて行く。
しかし、フリーはもうこの場に居なく、見失ってしまったのである。キョロキョロとヒュウガは周りを見て、本当にどこにもいないことに口元をむっととがらす。
「ヒカル、フリーが消えちまったよ!」
「消える訳無いだろ……。」
「いつもの特訓に行ったんだ。」
バルト達に連れられて森を歩く。小さな湖が綺麗なその森はとても神秘的に見えた。
湖の中にある小島のような所で、フリーは胡座をかき、目を閉じ、心を無にしている。
「坐禅」と呼ばれる精神統一――つまり瞑想をすることで集中力を高め、心をリラックスさせる効果がある。
フリーと同じ事がしたいのか、フリーの所へ行き、声をかける。フリーが目を開けると目の前にヒカル達が居た。
「なぁ、ざぜん?のやり方教えてくれ!」
2人を交互に見たあと、再び目を閉じる。無視されたのかと思い、口先を尖らせるヒュウガ。ヒカルは真似すればいいとフリーの体勢を見様見真似でやってみることに。その後からヒュウガも坐禅を始める。
彼らの特訓を見て刺激されたのか、バルトもフィニを連れてトレセンへ戻った。クミチョーもここで出来る自主トレを始めた。
暫く経って。ヒカルは集中力が切れかかっている様子だった。
それもそのはず、ヒュウガが「しゅーちゅー」と声に出しながら坐禅をしているからだ。
集中力を削がれ、特訓もままならないヒカルは目を開けてヒュウガを叱る。一方フリーは2人の会話も耳に入っていないのか集中している。
するとフリーはゆっくり目を開けて「無になれ」と一言。再び坐禅を始める。
ヒカルは心を空っぽにしようと意識を集中させ、目を閉じた。すると、ヒカルの世界が一気に黒く染まり、だんだん意識が遠のく感じがしてきた。今まで考えている事がなんだかどうでも良くなってくる。
ヒカルは黒い世界でポツンと一人坐禅をしているような気分になった。
ヒカルはそこで聴く葉が湖に落ちる音、動物が草木を食べる音……。だんだん心地よくなるような音にヒカルの心は落ち着いてくる。
「あぁ、なんか腹減ってきたなぁ……。」
ヒュウガはぐぅ〜となるお腹を押さえ、突然静かになる。ヒュウガは夢の中へ入っていってしまった……。
数時間後、軽い腕立て伏せ終わりのクミチョーはふとフリー達を見ると、坐禅をし集中しているフリーとヒカルとは反対にヒュウガは大の字になりながらいびきをかいて寝てしまっていた。
ヒカルがふと目を開けて横を見ると、既にフリーはこの場に居なく、その奥でヒュウガが気持ちよさそうに寝ていた。
「ヒュウガ、起きろ!行くぞ!!」
「うぇ、えぇっ〜…!」
ヒュウガの腕を引っ張り引きづるように連れていくとフリーを探し始める。森を駆け回り、フリーを探していると、ヒカルが上を指さした。
そこには蔓を使い、上へ上へと登っているフリーがいた。脚を使わず、腕のみの力で上がっていくのを見て、ものすごい腕力の持ち主だと関心する。
兄弟も真似するように近くにある蔓を使い、フリーと同じように腕の力だけで登る。フリー程でも無いが、ゆっくりと上がっていく。
「着いて来れないよ。」
フリーは2人を置いていく形で蔓をターザンのように使い、空を舞う。蔓をつたって、風を切り、駆けていく。
2人も足を合わせてスピードを付けてフリーと同じように飛び始める。
フリーは無言で2人をどんどん置いていき、空で回転をかけて再び飛んでいく。
「ビュンビュンー!!」
「ヒーローは飛べる!!」
2人が先にある蔓に向かって手を伸ばす――が、
「「あっ」」
見事にスカしてそのまま湖の中へ落ちていく。フリーがここまでか、と思った矢先、湖から2人が出てきて、再び蔓に掴まる。途中、ヒュウガの蔓が切れて落ちそうになっても、ヒカルがギリギリのところで蔓を掴み助けた。
「ヒカル!」
「早くっ…上がってこい!!」
ヒュウガが上へ上がろうと、腕を伸ばした時、今度はヒカルの方の蔓が切れて再び落ちそうになる。
――その時、フリーがヒカルの腕を掴み湖の先にある野原へ連れていく。
2人を降ろすなりフリーは、
「弱いなぁ。」
と首を少し曲げて2人を見る。
「弱くねぇ!」
「……さぁ、次行くよ。」
「まだやんのかよ〜っ!!」
「シングルバトル。」
バトルという言葉を聞いた瞬間、2人の顔色が一気に明るくなる。
スペインに来た理由はフリーとバトルする為。ようやくバトル出来る2人は汗を拭い、目を輝かせる。
「まず……君ね。」
フリーはそう言って1番バトルがしたいヒュウガでは無く、ヒカルを指差した。
何故最初にヒカルなのか、理由はバトルが教えてくれる。
フリー達はBCソルのホームグラウンドであるエルサントに向かった。
***
エルサントの観客は超満員。実況の「セニョール・アナミー」もテンション高めで実況をする。フリーとのシングルバトルを聞きつけたバルトとフィニも会場横の選手待機席にやってくる。
「フリーをその気にさせたか!」
「あのフリーを……すごいな。」
「ああっ!ったりめーよ!!」
試合は2ポイント制。突然のバトルにまだ緊張が解けないヒカルは震える手でヘリオスを握る。すると、向かいからフリーが「バトルするのに相応しいかどうか、証明して欲しい。」と変わらぬ表情でたんたんと喋る。そして彼もスパーキングシュートで戦うとファブニルに突き出す。
2人は審判の合図で声を揃え、ランチャーに力を込めるとそのまま勢いよくベイを放つ。ヒカルの身体から力みが取れ、シュートも落ち着いている。
ファブニルは大外を回り、その内からヘリオスが着いていく。
お互いのベイが中央でぶつかり、火花を飛ばす。そしてお互い距離を取ったあと、ヘリオスはセンターを陣取る。
「へぇ、ファブニル相手にスタミナ勝負か……。やってあげる。」
ファブニルは一気にヘリオスにアタック。連続アタックで次々にヘリオスのスタミナを削っていく。
しかし、ヘリオスのゾーンドライバーが傾き、ドリフトをかけることでスタミナは削られたものの、逃げ出すことに成功。そのままカウンター攻撃を仕掛けた。
「いいね、好きだよこの感じ。」
お互い激しくぶつかりあったことで、残るスタミナは僅か。持久戦に持ち込まれた。
「ヘリオスーーー!!!たえろーーーーー!!!!」
ヘリオスとヒカルの共鳴が見えたのか、フリーは目を見開きスタジアムを見る。ゆらゆらと揺れ動くベイがぶつかり、お互い力を失うとその場に傾き、クルクルと回り、ヘリオスがほんの少しだけ長く保って止まった。
ヘリオスのスピンフィニッシュで1ポイント先取。
「よっしゃー!!」
あのフリーから1ポイント取れただけでもかなり良い成果を残した。スタミナで負けるはずがないファブニルよりほんの一瞬だけ長く回り、ヒカルの想いがヘリオスの力となり、ヘリオスはヒカルの想いに応えてくれたのだろう。
「認めてあげる。」
セカンドバトル。フリーはリングを動かし、シャーシの刃を飛び出すような形に変形させた。
「それで行くか……。」
審判の合図で声を揃え、2人とも完璧なスパーキングシュートを決めた。今度はヘリオスから連続攻撃を仕掛ける。しかし、シャーシのいなし刃でアタックを全て無効にし、ファブニルはセンターを陣取った。
「何っ!?」
フリーが力を込め、彼の名を叫ぶと、その想いに答えるようにベイからファブニルのアバターが現れた。
ファブニルの必殺技、「ミラージュクロー」がヘリオスのリングに強く当たり、ヘリオスはそのまま吹き飛ばされバーストされてしまった。先程とは違い瞬殺されてしまったヒカルは一筋の汗を垂らす。
「これがレジェンドの力だ。」
ヒュウガも、ヒカルも、ただ呆然とフリーを見ることしか出来なかった。フリーはそんな2人を見て首をかしげフッ、と挑発するように笑う。
「あのシャーシが厄介だな。しかし、勝機が無いわけじゃない。」
「何か欠点があるのか?」
「欠点がなきゃ、ベイブレードは面白くないだろう。」
「シャーシをどうにかしてもあのラバー刃がな……。」
「フッ、私にいい考えがある。」
「司令官…!」
「何を言ってるんだお前は」
試合が終わるとフリーはそそくさとトレセンを去る。もう一回バトルをしろと、ヒュウガ達はフリーの後ろを走ってついて行く。
しかし、フリーはもうこの場に居なく、見失ってしまったのである。キョロキョロとヒュウガは周りを見て、本当にどこにもいないことに口元をむっととがらす。
「ヒカル、フリーが消えちまったよ!」
「消える訳無いだろ……。」
「いつもの特訓に行ったんだ。」
バルト達に連れられて森を歩く。小さな湖が綺麗なその森はとても神秘的に見えた。
湖の中にある小島のような所で、フリーは胡座をかき、目を閉じ、心を無にしている。
「坐禅」と呼ばれる精神統一――つまり瞑想をすることで集中力を高め、心をリラックスさせる効果がある。
フリーと同じ事がしたいのか、フリーの所へ行き、声をかける。フリーが目を開けると目の前にヒカル達が居た。
「なぁ、ざぜん?のやり方教えてくれ!」
2人を交互に見たあと、再び目を閉じる。無視されたのかと思い、口先を尖らせるヒュウガ。ヒカルは真似すればいいとフリーの体勢を見様見真似でやってみることに。その後からヒュウガも坐禅を始める。
彼らの特訓を見て刺激されたのか、バルトもフィニを連れてトレセンへ戻った。クミチョーもここで出来る自主トレを始めた。
暫く経って。ヒカルは集中力が切れかかっている様子だった。
それもそのはず、ヒュウガが「しゅーちゅー」と声に出しながら坐禅をしているからだ。
集中力を削がれ、特訓もままならないヒカルは目を開けてヒュウガを叱る。一方フリーは2人の会話も耳に入っていないのか集中している。
するとフリーはゆっくり目を開けて「無になれ」と一言。再び坐禅を始める。
ヒカルは心を空っぽにしようと意識を集中させ、目を閉じた。すると、ヒカルの世界が一気に黒く染まり、だんだん意識が遠のく感じがしてきた。今まで考えている事がなんだかどうでも良くなってくる。
ヒカルは黒い世界でポツンと一人坐禅をしているような気分になった。
ヒカルはそこで聴く葉が湖に落ちる音、動物が草木を食べる音……。だんだん心地よくなるような音にヒカルの心は落ち着いてくる。
「あぁ、なんか腹減ってきたなぁ……。」
ヒュウガはぐぅ〜となるお腹を押さえ、突然静かになる。ヒュウガは夢の中へ入っていってしまった……。
数時間後、軽い腕立て伏せ終わりのクミチョーはふとフリー達を見ると、坐禅をし集中しているフリーとヒカルとは反対にヒュウガは大の字になりながらいびきをかいて寝てしまっていた。
ヒカルがふと目を開けて横を見ると、既にフリーはこの場に居なく、その奥でヒュウガが気持ちよさそうに寝ていた。
「ヒュウガ、起きろ!行くぞ!!」
「うぇ、えぇっ〜…!」
ヒュウガの腕を引っ張り引きづるように連れていくとフリーを探し始める。森を駆け回り、フリーを探していると、ヒカルが上を指さした。
そこには蔓を使い、上へ上へと登っているフリーがいた。脚を使わず、腕のみの力で上がっていくのを見て、ものすごい腕力の持ち主だと関心する。
兄弟も真似するように近くにある蔓を使い、フリーと同じように腕の力だけで登る。フリー程でも無いが、ゆっくりと上がっていく。
「着いて来れないよ。」
フリーは2人を置いていく形で蔓をターザンのように使い、空を舞う。蔓をつたって、風を切り、駆けていく。
2人も足を合わせてスピードを付けてフリーと同じように飛び始める。
フリーは無言で2人をどんどん置いていき、空で回転をかけて再び飛んでいく。
「ビュンビュンー!!」
「ヒーローは飛べる!!」
2人が先にある蔓に向かって手を伸ばす――が、
「「あっ」」
見事にスカしてそのまま湖の中へ落ちていく。フリーがここまでか、と思った矢先、湖から2人が出てきて、再び蔓に掴まる。途中、ヒュウガの蔓が切れて落ちそうになっても、ヒカルがギリギリのところで蔓を掴み助けた。
「ヒカル!」
「早くっ…上がってこい!!」
ヒュウガが上へ上がろうと、腕を伸ばした時、今度はヒカルの方の蔓が切れて再び落ちそうになる。
――その時、フリーがヒカルの腕を掴み湖の先にある野原へ連れていく。
2人を降ろすなりフリーは、
「弱いなぁ。」
と首を少し曲げて2人を見る。
「弱くねぇ!」
「……さぁ、次行くよ。」
「まだやんのかよ〜っ!!」
「シングルバトル。」
バトルという言葉を聞いた瞬間、2人の顔色が一気に明るくなる。
スペインに来た理由はフリーとバトルする為。ようやくバトル出来る2人は汗を拭い、目を輝かせる。
「まず……君ね。」
フリーはそう言って1番バトルがしたいヒュウガでは無く、ヒカルを指差した。
何故最初にヒカルなのか、理由はバトルが教えてくれる。
フリー達はBCソルのホームグラウンドであるエルサントに向かった。
***
エルサントの観客は超満員。実況の「セニョール・アナミー」もテンション高めで実況をする。フリーとのシングルバトルを聞きつけたバルトとフィニも会場横の選手待機席にやってくる。
「フリーをその気にさせたか!」
「あのフリーを……すごいな。」
「ああっ!ったりめーよ!!」
試合は2ポイント制。突然のバトルにまだ緊張が解けないヒカルは震える手でヘリオスを握る。すると、向かいからフリーが「バトルするのに相応しいかどうか、証明して欲しい。」と変わらぬ表情でたんたんと喋る。そして彼もスパーキングシュートで戦うとファブニルに突き出す。
2人は審判の合図で声を揃え、ランチャーに力を込めるとそのまま勢いよくベイを放つ。ヒカルの身体から力みが取れ、シュートも落ち着いている。
ファブニルは大外を回り、その内からヘリオスが着いていく。
お互いのベイが中央でぶつかり、火花を飛ばす。そしてお互い距離を取ったあと、ヘリオスはセンターを陣取る。
「へぇ、ファブニル相手にスタミナ勝負か……。やってあげる。」
ファブニルは一気にヘリオスにアタック。連続アタックで次々にヘリオスのスタミナを削っていく。
しかし、ヘリオスのゾーンドライバーが傾き、ドリフトをかけることでスタミナは削られたものの、逃げ出すことに成功。そのままカウンター攻撃を仕掛けた。
「いいね、好きだよこの感じ。」
お互い激しくぶつかりあったことで、残るスタミナは僅か。持久戦に持ち込まれた。
「ヘリオスーーー!!!たえろーーーーー!!!!」
ヘリオスとヒカルの共鳴が見えたのか、フリーは目を見開きスタジアムを見る。ゆらゆらと揺れ動くベイがぶつかり、お互い力を失うとその場に傾き、クルクルと回り、ヘリオスがほんの少しだけ長く保って止まった。
ヘリオスのスピンフィニッシュで1ポイント先取。
「よっしゃー!!」
あのフリーから1ポイント取れただけでもかなり良い成果を残した。スタミナで負けるはずがないファブニルよりほんの一瞬だけ長く回り、ヒカルの想いがヘリオスの力となり、ヘリオスはヒカルの想いに応えてくれたのだろう。
「認めてあげる。」
セカンドバトル。フリーはリングを動かし、シャーシの刃を飛び出すような形に変形させた。
「それで行くか……。」
審判の合図で声を揃え、2人とも完璧なスパーキングシュートを決めた。今度はヘリオスから連続攻撃を仕掛ける。しかし、シャーシのいなし刃でアタックを全て無効にし、ファブニルはセンターを陣取った。
「何っ!?」
フリーが力を込め、彼の名を叫ぶと、その想いに答えるようにベイからファブニルのアバターが現れた。
ファブニルの必殺技、「ミラージュクロー」がヘリオスのリングに強く当たり、ヘリオスはそのまま吹き飛ばされバーストされてしまった。先程とは違い瞬殺されてしまったヒカルは一筋の汗を垂らす。
「これがレジェンドの力だ。」
ヒュウガも、ヒカルも、ただ呆然とフリーを見ることしか出来なかった。フリーはそんな2人を見て首をかしげフッ、と挑発するように笑う。
「あのシャーシが厄介だな。しかし、勝機が無いわけじゃない。」
「何か欠点があるのか?」
「欠点がなきゃ、ベイブレードは面白くないだろう。」
「シャーシをどうにかしてもあのラバー刃がな……。」
「フッ、私にいい考えがある。」
「司令官…!」
「何を言ってるんだお前は」