第1章 これがスパーキングベイだ!

 ヒカルVSバーサスソーチョーとの戦い。ヒュウガの応援に優しく答えたヒカルは、グンの合図でランチャーを構える。ソーチョーも同じように構えると、ヒカルの熱い闘志を、オーラを感じ取る。
「ちったァ、楽しませてくれそうだな。」
「おい乱次郎!甘く見んな。」
「へっ、アニキこそ甘く見るなよ。俺の力、見せつけてやるぜ!」
 グンのセットの合図でお互い声を揃え、シュートのタイミングでランチャーを引く。そして、ヒカルの熱い思いがランチャーに伝わったのかやっとヒカルのランチャーから火花が飛び出た。太陽のように弧を描き放つ火花にヒカルは嬉しそうな顔をし、ソーチョーは逆に驚いた顔をした。しかしそれは一瞬の事でお互い直ぐにスタジアムを見てバトルに集中する。
「バッチバチだー!」
「すげぇ〜!これは最高の画が撮れそうだよ!!」
 センターを既に取っているラグナルクにヘリオスは重たい一撃を食らわせる。しばらく鍔迫り合いになったが、ラグナルクのパワーで上から叩きつけられ、大外に飛ばされるが、ゾーンドライバーがブレーキとなり、そのままカウンター攻撃を仕掛けた。
 ドリフトをかけながら、センターにいるラグナルクに一撃を浴びせるとお互いのベイが場外へ飛んだ。僅差だったが、先に落ちたのはヘリオスで、その次にラグナルク。この場合、先に落ちた方の負けであり、ソーチョーが1ポイント先取。
 ボンバーズメンバーはあと少しで勝てたと悔しそうにしていたが、ソーチョーはヒュウガには軽々しくバーストで勝ったのに、ヒカル相手にオーバーで、しかも場外にお互い出ての判定を食らった事に驚きだった。
「乱次郎相手に……。」
「これがヒカルなんだよ。負けず嫌いで、負けない為にヒュウガとは別路線で突き進む。」
「お前あの数時間でヒカルの事分かっちまったのかよ……。」
「写真を見れば分かるよ。ヒカルだけじゃない、ヒュウガも輝いている。これは……面白くなりそうだよ。」
「………ざけんなテメェ!!!」
 切り裂くような声を上げ、ヒカルを睨みつけた。
「次はゼッテェバラボロにしてやるぜ!!」
「へっ、次こそバースト勝ちで決めてやる!」
 お互い睨み合い、バチバチと間で小さな火花が飛び散っているように見えた。これはソーチョーにとっても、ヒカルにとってもとても良い刺激的で成長に繋がる戦いになるだろう。と、ルカとクミチョーは顔を見合せた。
 ――その時。
 ヒュウガがソーチョーとヒカルの間からニョキっと現れ、何をするのかと思えば「次は俺だー!」と意気揚々と言い放ったのだ。
 まだバトルは終わっていないはずなのに、ヒュウガもルールは分かっているはずなのに。この発言にヒカルもソーチョーも困惑。
 その事をヒュウガに話しても「俺がやる!」の一点張りで聞こうとしない。そしてお互い言い合いになり、痺れを切らしたソーチョーは2人でまとめてかかってこいと宣言。
「……はぁ?2対1かよ!」
「やるやる〜!」
「いやいや、そんなんで勝ったって納得しねぇよ!」
「やろうよヒカル〜」
「よし分かった!クミチョー、ソーチョーとタッグを組んでタッグバトルって感じはどう?」
 パン、と手を叩き視線をこちらに集めたルカ。提案したのは兄弟同士のタッグ戦。クミチョーも割とノリノリであり、それに賛同。しかしソーチョーはルカの提案に最初否定的だったが、クミチョーの圧に、渋々了承。一方ヒュウガ達は賛同しており、多数決によりタッグバトル成立。審判はそのままグンが務めることになった。
「でもあの2人、この間のバルトとフィニの対決もそうだし、その前のタッグバトルの大会で…」
 と、ライカが話し始める。彼女の話によると、先日バルトとフィニとのタッグバトルで一撃で負けたこと、そしてその前のバトルでは、お互いの息が合わず口論になり、その隙をつかれた相手チームに負けたのだった。
「バトルになっちゃうと張り合っちゃうんだよね、あの2人。」
「それはお互い闘争心があり、それが空回りしてるからじゃない?」
「えっ?」
「どういうことだっぺ?」
「うーん、勝ちたい気持ちはあるけどお互いの気持ちが絡まっちゃっている…そんな感じかな?」
 チャック達の方は向かず、ルカは先程撮ったカメラを見ながら呟く。色んなブレーダーの色んな顔を撮ってきた彼女だからこそ、写真一枚でどんな表情か、気持ちか、想いかが分かるのだ。
 目線をスタジアムの方に映すと、ヒカルがヒュウガに耳打ちする。ヒカルの作戦でラグナルク達を倒そうという事だろう。しかし、ヒュウガも自身の意見を曲げない。性質が正反対な彼らはいつものように口論になり、誰の耳も聞かない……どころか呆れられている様子。
「アニキ、手ェ出さなくていいぜ?」
「流石のおめぇでも、2人はキツイぜ?アイツらを甘く見んな。」
「大した事ねぇよ。俺だけでやってやるぜ。」
「ハッ!おめぇだけじゃあやれねぇよ。」
 黄山兄弟も兄弟で、喧嘩を始める。ここまで来ると、朝日兄弟も黄山兄弟も似たもの同士なのかもしれない。
 4人がランチャーを構えた。グンの合図と共に、4人は声を揃え、一斉にベイを放った!
 もうコツを掴んだのかヒカルは今回もスパーキングシュートを決め、唯一火花が出なかったのはヒュウガだけだった。
「なんで俺だけ火花出ねぇんだよ…っ!」
「集中しろ、ヒュウガ!」
「うぅ…」
 2機のラグナルクは動きを合わせ、センターを回り始めた。絶対に守ってみせるという強い意志を感じる。
 ヒュウガは焦っているのか、ハイペリオンに「ガンガンだ!」と指示を出すと、ヒカルはそれに慌て、咄嗟にハイペリオンに動きを合わせるようヘリオスに指示を出す。しかし、2機のラグナルクのスタミナウイングがアッパーフォースを生み出し、ソーチョーだけで出ていた竜巻よりも大きな竜巻がスタジアムを揺らす。ハイペリオンもヘリオスも、竜巻には抗えずそのまま弾き飛ばされるが、場外には出ておらず、大外で軌道を整える。
「ガンガン、ダメだった……。」
「だから言ったろ?」
「どうしたおめぇら!」
「「!!」」
「この程度か?」
「くっ……。」
「いーや、こっからだ!」
 ハイペリオンは勢いよく回るが、その先にはヘリオスが。お互い力強くぶつかり、鍔迫り合いするが、なんとそこから火花がバチバチと飛び出たのだ。
「これは相打ちだっぺー!」
「相打ちかなぁ」
 そこで、ヒュウガが何か閃く。ヒュウガはヒカルに「ピターッ」となんとも抽象的な表現をすると、ヒュウガのことをよく分かっているヒカルはすぐにそれを理解し、スタジアムに視線を戻すと、ハイペリオンとヘリオスがお互いの方に傾き、そのまま中央へ走らせる。
 2人の熱い想いに応え、ハイペリオンとヘリオスは光を放ち、そこから太陽神のアバターが現れる。
――「「ツインストライク!!」」
 2つのベイが勢いよく竜巻を振り切ってラグナルクに衝突!ソーチョーのラグナルクが、勢いに負け、空を飛び、バーストされてしまった。
 生き残ったクミチョーのラグナルクを2機はドライバーを傾けさせて、そのまま中央へ走る。
「まとめてぶっとばせ!ラグナルク!!」
 3機がぶつかり、力を込める。ヘリオスとハイペリオンの力が僅かに勝り、ラグナルクは場外へ飛ばされる。
 タッグバトルはヒカルとヒュウガの勝利で終わった。
 初めて息の合ったタッグバトルにメンバーは喜び、そして本日の目標であるベイを場外へ飛ばすことに成功した。
「うんうん、僕の目は間違ってなかった!おもしれ〜」
「ヒュウガ、俺たち行けるぜ!」
「ああ!」
「「ピターッ、だ!!」」
「おいおめぇら!」
「?」
「あの合体技、狙ってたのか?」
 クミチョーに問われ、2人は顔を見合せ、ニカッと笑うと、「狙ってねぇ!」と放つ。それもそうだ。狙ってやった訳ではなく、偶然が偶然を呼び、重なって出来たまぐれに近いものである。
「流石俺が見込んだだけのことはあるぜ!」
「あぁっ?!調子に乗ってんじゃねぇぞ!!今度こそバラボロにしてやるからな!!」
「こっちこそ!バーストで完全勝利だぜ!」
「こぉい!ホウキ頭!!」
「ホウキじゃねぇ!このタケノコ頭にトサカ頭!!いくぞ、アニキ!!」
 黄山兄弟がランチャーを構えると、朝日兄弟もランチャーを構え、4人は声を揃えてゴーシュート。その光景をチャック達は微笑ましく見ていた。
 ルカもご満悦の笑みで撮った写真だけじゃあ飽き足らず、録画まで始める。
「うんうん、君たちのバトルこれからももっと見せて欲しいよ!!」


「まだまだぁ!」
「「ツインストライク!!」」
 2つのベイがぶつかり、あの時と同じようになるかと思いきや、そのまま飛ばされ場外へいってしまった。
「「あれぇ?」」
「できてねぇじゃねーーーか!!!!!」
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