第1章 これがスパーキングベイだ!
「さあ、父さん特製焼きたてのパンだぞー」
翌日。ヒカル達の家での事だ。相変わらず寝坊助で寝起きが悪いヒュウガはカウンター席に座って父親から料理を出されてもうとうと…と寝ている。
横目でヒカルが呆れながら朝食を食べており、母親もヒカルもヒュウガを起こそうとするが一向に起きやしない。
挙句、ヒカルはまたヒュウガを背負い、ボンバーズへと走り出した。
「やっぱこうなると思ったぜーッ!!」
イライラしながらもしっかりと落とさないよう背負い走っていくヒカルの前には金髪の箒のように大きく逆立った髪をした少年が流木に足をかけて海を眺めていた。味のある特攻服が彼の髪色とマッチしている。
その少年はどこかクミチョーに似ていた。
「ん……へぁ…?」
「やっと起きたか…」
寝ぼけた様子で起き上がったヒュウガは目の前にある箒のようにゆらゆらと揺れるものを見て呟いた。
ヒュウガの言葉に首を傾げたヒカルは直後、足元にある木の枝に引っかかり、そのままバランスを崩し目の前にいた少年に大声で避けるように注意する。少年は咄嗟に避けたものの、海に飛び込んでしまい、ヒカルとヒュウガは一言謝罪をして走り去っていった。
「わりぃ!」
「ごめんなー!ホウキ頭ー!」
「ホウキじゃねー!!くっ……テメェら!ゼッテェバラボロにしてやるからな!!!」
***
無事にボンバーズにたどり着いた2人は早速チャック達とベイバトルを始める。4人がランチャーを引くが、やはりヒュウガ達のランチャーから火花は出ていない。
しかし、ヒュウガ達の実力は彼らにとっては強く、また一瞬にしてバーストされている。勝てて素直に嬉しいヒュウガとは裏腹にヒカルはスパーキングシュートが出来ないことにイライラしていた。昨日はあの時の1回出ただけで、その後は全くと言っていいほど火花が出ていない。
それから何度も、何度もシュートを放つが一向に出る気配がしない。歯を食いしばりもどかしい気持ちになっていると横からヒュウガが軽々しく「スパーキングシュートを出す」と言ってシュートする。しかし、そこから火花が出ることなく、重たい音がスタジアムに響くだけだった。
――と、そこに1人の青年と小柄な少女がやってきた。2人は場外に飛んでしまったヒカル達のベイを手でキャッチした。
「かりぃなぁ…」
「すごい、これが太陽のベイかぁ。君が言っていた通り、面白くなりそうだね。」
少女はそう言って首からぶら下げている一眼レフを構えてハイペリオンを撮影する。
そう。やってきた青年の方はレジェンドブレーダーの黄山乱太郎こと、クミチョーだ。
そしてもう片方は彼らとは初対面。大きめなアホ毛が特徴的な少女はヒュウガにハイペリオンを返すと、1枚、パシャリと写真を撮る。
「こいつはwbba.公認のカメラマンの「桜井ルカ」だ!」
「広報してるよ〜。君たちの様子を是非撮影させて欲しいな。でも今の君たちじゃあ…スパーキングシュートを出すのは難しくて、良い画が撮れないかも……。」
「「出せる!」」
先程の表情とは違って、決意とやる気がクミチョー達は伝わってきた。その決意だけは合格かもしれない。
「よし、面構えは合格だ!今日からビシバシ鍛えてやるぜ!」
「もしかして、新しいコーチって!」
「おうよ!このクミチョー様がおめぇらの新しいコーチだ!」
「本当の本当に!?」
「ああ!wbba.に頼まれてなっ」
コーチすらいない少人数クラブにレジェンドブレーダーがコーチにつき、さらにwbba.の広報も自分達に付きっきりで記録や撮影をしてくれるということで、メンバー一同夢かと思うほどだった。
それぞれ期待を抱える中、クミチョーによる特訓が始まった。しかし、それはただバトルしてバトルしまくるような生易しいものでは無かった。
腕立て伏せ100回に、腹筋100回、スクワット100回、シュートマシン500回とバトルがしたいヒカル達の気持ちとは正反対に基礎トレーニングばかりだ。
シュートマシンはランチャーを引くような形に作られており、二の腕や前腕を鍛え、スパーキングシュートが出せるかもしれない……そんなマシン。そしてこのマシンは位置を低くさせて腰を落とすように低くとさらに効果が得られる。
ルカはヒュウガ達の練習風景を余さず撮影し続け、ヒカル達の目に映る熱い何かをレンズ越しに感じ取っていた。
結局最後までやり遂げたのはヒュウガとヒカルの兄弟のみで、シュートマシン500回をやり終えると汗がダラダラ、息は切れ、その場に倒れ込んだ。
「おめぇら、根性あるじゃねぇか!」
「すごいすごい。練習だけで沢山面白いの撮れたよ」
「よし、バトルすんぞ!」
「はぁ…はぁ…バトルだー!」
「やっとできるぜ……」
***
「よし、ルカのベイをバーストしてみろ!」
「僕のベイ、リーパーレヴィアタンが相手するよ。あんまり強くないけど良い画のためによろしく!」
そう言って、懐から3枚刃のアタックタイプ、「リーパーレヴィアタン」を見せる。彼女のベイはフリー回転するようで、スタミナもバッチリ。ヒカル達に軽く見せたあと、ランチャーにベイをセットして、そのままシュート体制に入る。
そしてゴーシュート!の合図で彼女は勢いよくランチャーを引く。当然、彼女からも火花が飛び散っており、スパーキングシュートを成功させている。
「楽勝だぜ、行くぞ、ヘリオス!」
ヒカルが早速ランチャーにセットし、先程より姿勢を低くさせてシュートを放った。まだ火花は出ていないが、姿勢を無意識に低くした事で、アタックが強くなっている。しかしフリー回転の刃にやられ、スピンフィニッシュ。
続いてヒュウガがシュートを放った。彼もヒカル同様、無意識に腰が低くなっていた。
「ギュンギュンだー!ハイペリオーン!」
「同じタイプでも屈しないぞ〜!レヴィアタン!」
レヴィアタンのスラッシュ攻撃でオーバーフィニッシュ。悔しそうな顔のヒュウガに思わず写真を撮るルカ。
「そうだよ〜、その顔!もっと全力でぶつかってきて!良い画が撮れてるから!!」
レヴィアタンのスタミナ切れで1度シュートをし直し、バトル再開。しかし、2人は彼女のベイをバーストさせることは叶わなかった。
数時間ほどバトルをした後、まだまだ余裕そうなルカに対し、ヒュウガ達は息が絶え絶えで疲れていた。「まだやれる」、とは言っているが、言動と今現在の姿が合っていない。
先に息を整えたヒカルが、足を肩幅分に開かせ、一息つき、姿勢を低くさせたあと勢いよくベイを放った。低重心特有の重たい音がスタジアムを響かせ、ヒカルは早速攻撃を仕掛けた。
その攻撃は今までとは違う、強めの攻撃。レヴィアタンは1度ヘリオスの攻撃を跳ね返したが、ヘリオスは負けじと連続攻撃を続ける。しかしその攻撃も虚しく、スタミナ切れでヘリオスの動きが止まった。直後、レヴィアタンの動きも止まってしまった。
「バースト出来ねぇ〜ッ!」
「っ!…すごい、面白いよ君。」
ルカがシュートし直し、再びアタックタイプ特有の動きを始めると、続いてヒュウガもベイを放つ。力強く、ヒュウガらしい真っ直ぐなシュートがレヴィアタンに当たり、大きく飛ばされかけたが、レヴィアタンはスタジアムに残り、ハイペリオンだけが場外に出てしまった。
「ダメだ〜ッ!」
「面白くなってきた…!」
ルカの目に闘志が宿り始めた頃、入口から荒々しく入ってきた少年がいた。その方へよく見ると、今朝ヒュウガ達と激突しかけたあの少年だった。名前は「黄山乱次郎」。あだ名は「ソーチョー」と言う。
「あっ!」
「ホウキ頭!」
「ホウキじゃねぇ!」
ソーチョーは大きなクシを使い、自身の頭を整えると、ドヤ顔でポーズを決める。ヒュウガ達と知り合いだったことすら知らないクミチョーはソーチョーに問うと、今度はソーチョーがクミチョーがここにいることを知らなかったようで、お互い驚いていた。
ソーチョーの実力はクミチョーが思っているほどでは無い。「超ゼツ」強いブレーダーで、その実力はルカもよく知っている。
「クミチョーはここのコーチしてるんだ。」
「ちょうどいい所に来たぜ。おい乱次郎、コイツらと勝負してみろ!」
「はぁ!?」
「やるやる!ホウキ頭に絶対勝つー!」
「はぁあっ!?どチビが……よし、バラバラのボロボロ、バラボロにしてやるぜ!」
そう言って出してきたのはクミチョーと同じスタミナタイプのラグナルク。チップだけではなく、リングなどもクミチョーと同じだが、リングだけ白色とクミチョーとの差別化、ソーチョーの個性を表している。
ヒュウガとソーチョーはスタジアムの前に立ち、お互いランチャーを構えた。
「朝日ヒュウガVS 黄山乱次郎のスペシャルマッチだっぺー!」
「俺の事は「ソーチョー」と呼びな!」
「ウッヒョ〜!クミチョーの弟はソーチョーだっペ!」
「へへっ、スーパー全力で行く!」
「ハイペリオンは攻撃力が半端ねぇぞ。」
「へっ!スタミナウイングで蹴散らしてやるぜ!」
「良い画を期待してるよ〜」
グンのセットの合図で2人は3、2、1、ゴーシュートと声を揃えてランチャーを勢いよく引く。ソーチョーのランチャーからバチバチ、と火花が飛び散り、見事スパーキングシュート成功。一方ヒュウガはまだ火花は出ていなく、一瞬だけ顔を顰めた。
そうしているうちにラグナルクのスタミナウイングが開いて、重たい音と共にセンターへ走っていく。
ラグナルクがセンターを取り、万全の体制になった途端、ハイペリオンが仕掛けに入る。ガキッ、ガキン、と次々に連続攻撃していき、ラグナルクは軽くハイペリオンに飛ばされる。
体勢を崩したが、すぐさま立て直し、再びセンターへ向かう。そのラグナルクの後ろをついて行くような形で、ハイペリオンも走る。
「いっただきー!!」
「調子に乗ってんじゃ…ねぇ!ラグナルク!!」
拳を握りしめ、思い切り愛機の名を叫ぶと、ソーチョーからオレンジ色のオーラがじわじわと浮き出て、それに共鳴するかのようにラグナルクもオレンジ色の光を放ち、ラグナルクのアバターが姿を現す。その姿はまるで終末の炎を纏う悪魔のようだ。
ラグナルクは勢いをさらに増し、シュート時に飛び出たスタミナウイングの力によってアッパーフォースが生まれ、大きな竜巻となってセンターを陣取る。
その風にまんまと乗せられ、ハイペリオンは空を舞い空中でバーストされた。ソーチョーのバースト勝ちである。
ソーチョーに煽られ、さらに負けた悔しさからソーチョーを睨みつけ食いしばっていると、ヒュウガの前にヒカルがヘリオスを差し出した。次はヒカルとソーチョーのバトルが始まるのだろう。
「テメェも、バラボロにしてやるぜ!」
翌日。ヒカル達の家での事だ。相変わらず寝坊助で寝起きが悪いヒュウガはカウンター席に座って父親から料理を出されてもうとうと…と寝ている。
横目でヒカルが呆れながら朝食を食べており、母親もヒカルもヒュウガを起こそうとするが一向に起きやしない。
挙句、ヒカルはまたヒュウガを背負い、ボンバーズへと走り出した。
「やっぱこうなると思ったぜーッ!!」
イライラしながらもしっかりと落とさないよう背負い走っていくヒカルの前には金髪の箒のように大きく逆立った髪をした少年が流木に足をかけて海を眺めていた。味のある特攻服が彼の髪色とマッチしている。
その少年はどこかクミチョーに似ていた。
「ん……へぁ…?」
「やっと起きたか…」
寝ぼけた様子で起き上がったヒュウガは目の前にある箒のようにゆらゆらと揺れるものを見て呟いた。
ヒュウガの言葉に首を傾げたヒカルは直後、足元にある木の枝に引っかかり、そのままバランスを崩し目の前にいた少年に大声で避けるように注意する。少年は咄嗟に避けたものの、海に飛び込んでしまい、ヒカルとヒュウガは一言謝罪をして走り去っていった。
「わりぃ!」
「ごめんなー!ホウキ頭ー!」
「ホウキじゃねー!!くっ……テメェら!ゼッテェバラボロにしてやるからな!!!」
***
無事にボンバーズにたどり着いた2人は早速チャック達とベイバトルを始める。4人がランチャーを引くが、やはりヒュウガ達のランチャーから火花は出ていない。
しかし、ヒュウガ達の実力は彼らにとっては強く、また一瞬にしてバーストされている。勝てて素直に嬉しいヒュウガとは裏腹にヒカルはスパーキングシュートが出来ないことにイライラしていた。昨日はあの時の1回出ただけで、その後は全くと言っていいほど火花が出ていない。
それから何度も、何度もシュートを放つが一向に出る気配がしない。歯を食いしばりもどかしい気持ちになっていると横からヒュウガが軽々しく「スパーキングシュートを出す」と言ってシュートする。しかし、そこから火花が出ることなく、重たい音がスタジアムに響くだけだった。
――と、そこに1人の青年と小柄な少女がやってきた。2人は場外に飛んでしまったヒカル達のベイを手でキャッチした。
「かりぃなぁ…」
「すごい、これが太陽のベイかぁ。君が言っていた通り、面白くなりそうだね。」
少女はそう言って首からぶら下げている一眼レフを構えてハイペリオンを撮影する。
そう。やってきた青年の方はレジェンドブレーダーの黄山乱太郎こと、クミチョーだ。
そしてもう片方は彼らとは初対面。大きめなアホ毛が特徴的な少女はヒュウガにハイペリオンを返すと、1枚、パシャリと写真を撮る。
「こいつはwbba.公認のカメラマンの「桜井ルカ」だ!」
「広報してるよ〜。君たちの様子を是非撮影させて欲しいな。でも今の君たちじゃあ…スパーキングシュートを出すのは難しくて、良い画が撮れないかも……。」
「「出せる!」」
先程の表情とは違って、決意とやる気がクミチョー達は伝わってきた。その決意だけは合格かもしれない。
「よし、面構えは合格だ!今日からビシバシ鍛えてやるぜ!」
「もしかして、新しいコーチって!」
「おうよ!このクミチョー様がおめぇらの新しいコーチだ!」
「本当の本当に!?」
「ああ!wbba.に頼まれてなっ」
コーチすらいない少人数クラブにレジェンドブレーダーがコーチにつき、さらにwbba.の広報も自分達に付きっきりで記録や撮影をしてくれるということで、メンバー一同夢かと思うほどだった。
それぞれ期待を抱える中、クミチョーによる特訓が始まった。しかし、それはただバトルしてバトルしまくるような生易しいものでは無かった。
腕立て伏せ100回に、腹筋100回、スクワット100回、シュートマシン500回とバトルがしたいヒカル達の気持ちとは正反対に基礎トレーニングばかりだ。
シュートマシンはランチャーを引くような形に作られており、二の腕や前腕を鍛え、スパーキングシュートが出せるかもしれない……そんなマシン。そしてこのマシンは位置を低くさせて腰を落とすように低くとさらに効果が得られる。
ルカはヒュウガ達の練習風景を余さず撮影し続け、ヒカル達の目に映る熱い何かをレンズ越しに感じ取っていた。
結局最後までやり遂げたのはヒュウガとヒカルの兄弟のみで、シュートマシン500回をやり終えると汗がダラダラ、息は切れ、その場に倒れ込んだ。
「おめぇら、根性あるじゃねぇか!」
「すごいすごい。練習だけで沢山面白いの撮れたよ」
「よし、バトルすんぞ!」
「はぁ…はぁ…バトルだー!」
「やっとできるぜ……」
***
「よし、ルカのベイをバーストしてみろ!」
「僕のベイ、リーパーレヴィアタンが相手するよ。あんまり強くないけど良い画のためによろしく!」
そう言って、懐から3枚刃のアタックタイプ、「リーパーレヴィアタン」を見せる。彼女のベイはフリー回転するようで、スタミナもバッチリ。ヒカル達に軽く見せたあと、ランチャーにベイをセットして、そのままシュート体制に入る。
そしてゴーシュート!の合図で彼女は勢いよくランチャーを引く。当然、彼女からも火花が飛び散っており、スパーキングシュートを成功させている。
「楽勝だぜ、行くぞ、ヘリオス!」
ヒカルが早速ランチャーにセットし、先程より姿勢を低くさせてシュートを放った。まだ火花は出ていないが、姿勢を無意識に低くした事で、アタックが強くなっている。しかしフリー回転の刃にやられ、スピンフィニッシュ。
続いてヒュウガがシュートを放った。彼もヒカル同様、無意識に腰が低くなっていた。
「ギュンギュンだー!ハイペリオーン!」
「同じタイプでも屈しないぞ〜!レヴィアタン!」
レヴィアタンのスラッシュ攻撃でオーバーフィニッシュ。悔しそうな顔のヒュウガに思わず写真を撮るルカ。
「そうだよ〜、その顔!もっと全力でぶつかってきて!良い画が撮れてるから!!」
レヴィアタンのスタミナ切れで1度シュートをし直し、バトル再開。しかし、2人は彼女のベイをバーストさせることは叶わなかった。
数時間ほどバトルをした後、まだまだ余裕そうなルカに対し、ヒュウガ達は息が絶え絶えで疲れていた。「まだやれる」、とは言っているが、言動と今現在の姿が合っていない。
先に息を整えたヒカルが、足を肩幅分に開かせ、一息つき、姿勢を低くさせたあと勢いよくベイを放った。低重心特有の重たい音がスタジアムを響かせ、ヒカルは早速攻撃を仕掛けた。
その攻撃は今までとは違う、強めの攻撃。レヴィアタンは1度ヘリオスの攻撃を跳ね返したが、ヘリオスは負けじと連続攻撃を続ける。しかしその攻撃も虚しく、スタミナ切れでヘリオスの動きが止まった。直後、レヴィアタンの動きも止まってしまった。
「バースト出来ねぇ〜ッ!」
「っ!…すごい、面白いよ君。」
ルカがシュートし直し、再びアタックタイプ特有の動きを始めると、続いてヒュウガもベイを放つ。力強く、ヒュウガらしい真っ直ぐなシュートがレヴィアタンに当たり、大きく飛ばされかけたが、レヴィアタンはスタジアムに残り、ハイペリオンだけが場外に出てしまった。
「ダメだ〜ッ!」
「面白くなってきた…!」
ルカの目に闘志が宿り始めた頃、入口から荒々しく入ってきた少年がいた。その方へよく見ると、今朝ヒュウガ達と激突しかけたあの少年だった。名前は「黄山乱次郎」。あだ名は「ソーチョー」と言う。
「あっ!」
「ホウキ頭!」
「ホウキじゃねぇ!」
ソーチョーは大きなクシを使い、自身の頭を整えると、ドヤ顔でポーズを決める。ヒュウガ達と知り合いだったことすら知らないクミチョーはソーチョーに問うと、今度はソーチョーがクミチョーがここにいることを知らなかったようで、お互い驚いていた。
ソーチョーの実力はクミチョーが思っているほどでは無い。「超ゼツ」強いブレーダーで、その実力はルカもよく知っている。
「クミチョーはここのコーチしてるんだ。」
「ちょうどいい所に来たぜ。おい乱次郎、コイツらと勝負してみろ!」
「はぁ!?」
「やるやる!ホウキ頭に絶対勝つー!」
「はぁあっ!?どチビが……よし、バラバラのボロボロ、バラボロにしてやるぜ!」
そう言って出してきたのはクミチョーと同じスタミナタイプのラグナルク。チップだけではなく、リングなどもクミチョーと同じだが、リングだけ白色とクミチョーとの差別化、ソーチョーの個性を表している。
ヒュウガとソーチョーはスタジアムの前に立ち、お互いランチャーを構えた。
「朝日ヒュウガ
「俺の事は「ソーチョー」と呼びな!」
「ウッヒョ〜!クミチョーの弟はソーチョーだっペ!」
「へへっ、スーパー全力で行く!」
「ハイペリオンは攻撃力が半端ねぇぞ。」
「へっ!スタミナウイングで蹴散らしてやるぜ!」
「良い画を期待してるよ〜」
グンのセットの合図で2人は3、2、1、ゴーシュートと声を揃えてランチャーを勢いよく引く。ソーチョーのランチャーからバチバチ、と火花が飛び散り、見事スパーキングシュート成功。一方ヒュウガはまだ火花は出ていなく、一瞬だけ顔を顰めた。
そうしているうちにラグナルクのスタミナウイングが開いて、重たい音と共にセンターへ走っていく。
ラグナルクがセンターを取り、万全の体制になった途端、ハイペリオンが仕掛けに入る。ガキッ、ガキン、と次々に連続攻撃していき、ラグナルクは軽くハイペリオンに飛ばされる。
体勢を崩したが、すぐさま立て直し、再びセンターへ向かう。そのラグナルクの後ろをついて行くような形で、ハイペリオンも走る。
「いっただきー!!」
「調子に乗ってんじゃ…ねぇ!ラグナルク!!」
拳を握りしめ、思い切り愛機の名を叫ぶと、ソーチョーからオレンジ色のオーラがじわじわと浮き出て、それに共鳴するかのようにラグナルクもオレンジ色の光を放ち、ラグナルクのアバターが姿を現す。その姿はまるで終末の炎を纏う悪魔のようだ。
ラグナルクは勢いをさらに増し、シュート時に飛び出たスタミナウイングの力によってアッパーフォースが生まれ、大きな竜巻となってセンターを陣取る。
その風にまんまと乗せられ、ハイペリオンは空を舞い空中でバーストされた。ソーチョーのバースト勝ちである。
ソーチョーに煽られ、さらに負けた悔しさからソーチョーを睨みつけ食いしばっていると、ヒュウガの前にヒカルがヘリオスを差し出した。次はヒカルとソーチョーのバトルが始まるのだろう。
「テメェも、バラボロにしてやるぜ!」