不器用な柳蓮二
name change
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「おい名前。柳はどうしたんだよぃ」
「え?一緒じゃないよ?」
「毎日一緒に来てたじゃねぇか。」
プラチナペアと一緒にボールを出す。カゴいっぱいに入ったボールは少しの揺れで零れてしまうから慎重に運ぶ。
そういえば今日は柳と一緒に来なかった。いつも着いて来られていただけだから約束をしていたわけでもルールがあったわけでもないのだが、確かに今日は柳は私を止めることも、先に行ってくれとも、何も言わなかった。
そう思うと、なんだか急に胸が少しだけざわついた。あんなについてこられるのが嫌だったのに、いざ来なくなるとなんだか微妙な気分だ。
「う~ん。生徒会とかじゃない?」
「それなら先に言ってるだろい」
「今頃お前のこと探してたりしてな」
「…いやいやないでしょ」
「えー、探してこいよ」
いつもならそんなにしつこく強制はしないくせに今日のブンちゃんはやけにしつこかった。彼のことだから単なる気まぐれだとは思うけれど。こうなったブンちゃんはめんどくさい。仕方なく私は教室への階段を登り始めた。教室に近づくにつれて、微かだけれど声が聞こえてきた。これは柳だろうと確信した私は声をかけようとした。
しかしそれはできなかった。
教室を覗けば柳と隣のクラスのかわいい女の子がいた。女の子は顔を真っ赤にさせて震えた手で柳に手紙を渡していた。これは、告白現場なのだろう。
頭にすごい衝撃が走った気分だった。
急いで回れ右をして無我夢中で走った。下駄箱まで駆け下りてそこでやっと足を止めた。呼吸が荒くなる。それと同時に心拍数が上がっているのがわかった。これは走ったせいなのか、さっき見た光景のせいなのかはわからない
ただ心臓がなにかに掴まれたみたいに、痛い。
「おー、名前。…なんでそんな息切れてんだよ」
「…ブンちゃん」
「あれ?柳は?」
「…柳なんて知らない!!」
何をこんなに私は焦っているのか。何をこんなに私はムキになっているのか。それが分からないから、余計に気持ち悪い。柳のことなんて、どうでもいい。知らない。柳がどんな女の子に告白されてようと、それを承諾しようと、私には関係ないことだ。
そう何度も言い聞かせたのにそんな私の心に嘘をつくなと言うように心臓の痛みは消えてくれなかった。
そんな私の考えてることが私自身も分からなかった。