不器用な柳蓮二
name change
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「名前」
「幸村!!ど、どうしよ!わたし、柳に嫌われた!?いや、元から嫌われてたけど…!!!」
「落ち着いて」
肩をガシッと掴まれる。落ち着いてなんて優しい言葉で言っているけれど幸村の言葉には強い命令の意思が感じられる。テンパっていた私はその言葉を聞いて、慌てていた心を落ち着かせるように深呼吸をした。
それを見て幸村は軽く微笑んで、私の背中を押した。
「行っておいで。行って、柳にちゃんと伝えるんだ。名前の気持ち」
「_____うん!!」
幸村のその言葉を聞いて私は走り出した。病院内だとか、そういうことはもうどうでもいい。柳、柳に今すぐ会いたい。
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エレベーターなんて待ってられない。
階段を使い駆け下りる。汗がブラウスに張り付く。呼吸が乱れる。折角整えていた髪ももうボサボサで、でも、止まれない。止まらない。
「_____柳!!!!」
やっと柳の姿を見つけて大声を出す。柳は振り返り驚いたように目を見開く。
柳は、私のことを好きじゃないと思う。最初に私が言っていたように嫌いには至らないけれど苦手な部類かもしれない。
いつもうるさいし、嫌がらせはするし、マネ業だって、まだまだ半人前だし、クラスは3年間同じだし、お弁当の卵焼きは甘いし、ありがとうは中々言えないし、ほかの女の子が柳のこと聞いてきても拒否しないし、すぐにテンパって自分の世界に引きこもっちゃうし。考えてみれば好かれる要素なんてひとつもない。制服だって似合わないって入学式で言われちゃってるし。
でも、それでも私は、
「わたし、あんたのこと嫌い!」
「____知ってる」
「意地悪だし!」
「…ああ」
「ドリンクのこととかうるさいし」
「…」
「お弁当勝手に食べるし」
「すまない」
「大嫌い…ほんとに嫌い…」
頬に何か暖かいものが伝った。
これが涙だということは直ぐにわかった。
「大嫌いなのに…」
「…」
「なのに、柳がたまに優しくしてくれると凄く嬉しい」
「…は?」
「女の子にもてるのは嫌だ…!他の女の子と喋ってるのも!嫌だ!」
「…お前」
「うっ、ひっく…」
とうとう堪えられなくなって嗚咽がこぼれる。涙はボロボロと溢れて止まらない。必死にそれを拭っていると、ふわりと柳の優しい香りがした。わたし、いま、抱きしめられてる。
「嫌いなのに…大嫌いなのに…なんでか…好きになってたんだもん」
私がそう消えるように呟くと、私を抱きしめる力がよりいっそう強くなったように、感じられた。
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「苗字…」
「ぐずっ…何よ、文句ある?」
「いいや_____俺もお前のことがずっと、好きだった。」
風が、つよくふく。
柳に抱きしめられているせいで柳の顔が見えないのがものすごく、じれったい。
「…嘘だ」
「嘘じゃない」
「だって意地悪してくるもん」
「好きな子ほど虐めたくなるものだろう」
「私にだけ厳しいし」
「お前の前ではどうも素直になれない」
「卵焼き食べてくるし」
「お前が他の男にあーんをしているところなど見たくないに決まってる」
「なにそれ、不器用すぎだよ」
まだ泣き止まない私をあやすように、柳はぽんぽんと私の背中を叩く。まるで赤ちゃんのように。柳の胸の中で、彼の温もりを感じながら私はゆっくりと彼の背中に腕を回した。これ以上にないくらい強く強く抱き締めてやる。私は、こんだけ柳のこと好きになってしまったのだ。どうしてくれるのか。そんな気持ちも込めて。
「…付き合ってあげてもいいよ」
「それは俺のセリフだな」
ゆっくりと離れ、顔を合わせた。
柳は愛おしいものを見るように、目を細め私のことを見つめると額に軽く口付けをした。おでこに手をおいてワナワナと震える私を見て、それはもう楽しそうにわらった。
「_____こんの!!!ばか!!」
恋人とかちょっと照れくさいけど。
こいつとならなんとかやっていけるようなそんな気はしている。