地区予選
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
.
「あれ、リョーマくん。」
「名前先輩も呼ばれたんすか?」
「うん!一緒に入ろ!」
メールで桃から打ち上げをするから河村寿司に来いと指示された。回らないお寿司を食べるのは随分久しぶりだからテンションアゲアゲだ。リョーマくんと共に戸を開くと、既に会場は盛り上がっていた。
「おっ!おチビちゃんに名前ちゃ~ん!やっときたきた!」
「遅いぞ!越前!名前」
英二先輩にこっちこっちと呼ばれ席につく。たくさんのお寿司があって目移りしちゃう。ちなみに一番好きなのはサーモンなのでサーモンを頂くことにした。
不二先輩はわさび巻きを食べているらしい。信じられない。
「サーモンうまぁ!!」
「はい、名前先輩。アナゴも美味いっすよ」
口元にアナゴを持ってこられる。少し動揺したけれど、リョーマくんが早くと急かすように箸を動かしたので、仕方なく口を開いて食べた。美味しいはずなのに恥ずかしいの方が勝ってしまって味は感じられなかった。
「あーっ!名前ちゃんまでアナゴ食べてる!」
「げっ、バレた!!」
「バレるに決まってんだろ」
海堂がまた英二先輩の好物のアナゴを食べる。思わず苦笑いを零した。
__________
楽しい時間はすぐにすぎてしまう。気づけばもうみんな帰る時間で、わたしも片付けを手伝い終わり、帰路に立とうとした。辺りはもう既に真っ暗で、春とはいえまだ少しひんやりしている。街灯も少ないせいか薄暗くて奇妙だ。こんな日には、おばけでも出そう。
「名前ちゃん」
「うっわ!びっくりしましたよ不二先輩~」
後ろから突然声をかけられ、肩が少しだけ飛び跳ねた。ゆっくりと振り返るとそこには不二先輩がいつもの微笑みを浮かべ佇んでいた。その微笑みはいつみても、優しくて、それでいてどこか何かを隠しているような。そんなふうにも捉えられる。
私は不二先輩が喋り出すのを大人しく待った。彼はゆっくりと目を開き、再度微笑むと私の手のひらを握ってみせた。
「送っていくよ」
「…ありがとうございます。それで、えーと、この手は。」
「さ、行こうか」
「ちょっと??」
私の言うことなんてお構い無し。
不二先輩は私の手をにぎって楽しそうに歩き出す。手のひらから感じる不二先輩の体温は少し冷たかった。不二先輩、もしかして私になにか言いたいことでもあったのかな。こんな風に無理やり一緒に帰らされることは初めてだった。いつでも不二先輩は私の返事を待ち、私がYesと言えば喜んで、Noと言えば少し悲しそうに引き下がってくれた。
こうでもして、わたしと帰りたいなんて日にはきっと何か理由があるに違いない。私はその理由が知りたいのだ。
「不二先輩」
「どうしたの?」
「何か、私にご用ですか?」
私のその質問に、不二先輩は動揺を見せた。目を見開いて、そのあと掴みどころのない笑顔で、優しく、儚く、微笑んだ。
「ううん。…ただ、今日はなんだか。
君をほかの人に取られたくなかったんだ。」
不二先輩のその言葉の理由もよく分からないけれど、私は顔を真っ赤にしてしまって。さっきまで肌寒いと感じていたはずなのに体が火照って仕方なくなった。だって、そんなに、優しい笑顔で言われちゃあ。
「…これが、モテ男の実力ですね…」
「ん?何か言った?」
「いえ!」