地区予選
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地区予選が始まった。
最近の部活内もなんとも言えぬ緊張感に包まれている。3年生にとってはこれからの試合全部が最後。最後まで笑ってテニスができるのは全国47都道府県の内たった一校。
その一校になるためだけに必死になって努力をしてきた彼らを知っているから。
私もがんばろう。
地区予選の初戦の相手は玉林中。まあ桃とリョーマくん以外は順調に力の差を見せつけて5-0でうち。
2回戦の水ノ淵中戦もなんなく3-0で勝利。
あっという間に次は地区予選決勝だ。
「はやいね」
「だなー」
桃とリョーマくんと一緒に帰る。途中で私がcd屋に行きたいと駄々をこねたらぶつくさ文句を言いながら許してくれた。好きなバンドが新しいシングルを出したから買いたいのだ。桃とリョーマくんはハンバーガーを食べているらしい。
自動ドアがスムーズに開いた。私は店内に足を進めると早速新作のコーナーに向かう。実は昨日発売だったのだけれど昨日はこれなかったから心配だ。最近人気になってきたけれどまだまだマイナーなバンドだから流石にあるとは思うけど。まず在庫をあまり仕入れていない可能性もある。
「あった!」
新譜コーナーの1番下の隅っこにお目当てのcdを見つけて手を伸ばす。取ろうとした瞬間にがしりと誰かと手が触れ合った。ちょっとまて、なんだこのマンガみたいな展開は望んでいないぞ。
「…」
「…」
「…」
無言で見つめ合う。お互いにcdから手は離さずに。だけれど何を言っていいのかもわからない。ていうかこのマイナーバンドを好きだなんてめちゃくちゃ語りたい。語りたいのだけれどこのcdは欲しい。悩みに悩んだ末私は邦ロック仲間を増やすことを選んだ。
「わたし、家の近くにもう一軒cdショップあるので。どうぞ!」
「まじで!?…ほんとにいいのか?」
「いいよー」
赤い髪で片目をゲゲゲの鬼太郎みたいに隠している中学生と思われしき男の子は嬉しそうにガッツポーズをして会計に向かった。ちなみに家の近くにもう一軒なんてあるはずがない。今度隣町まで行ってみよう。仕方ない。
「ほんっとありがとな!俺ずっと欲しくて!」
「うんうん!マイナーだけどいいバンドだよね!」
「だよな!特に今回の新曲はいつもと雰囲気違ってまたいいんだよなー!」
「そうそう!!!」
赤髪の鬼太郎くんはほんとに楽しそうにバンドのことを話してくれて愛がひしひしと伝わってきてほんとに嬉しかった。譲ったのが彼でよかったなと思えた。 数分そこで話し込んでいると彼にお迎えが来たようで、彼は何回も手振りながら去っていった。
「なんかめっちゃいいことした気分」
その日はなんだか機嫌がよかった。