嫉妬シリーズ
name change
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「名前」
「千歳、どぎゃんしたね」
わかりやすい、愛想笑い。半音高い猫のような声。
俺はお前の気持ちがわからん。
いつも誰にでも愛想ば振りまく癖して、本性は誰にも見せとらん。常に孤独とともに生きとるみたいな、そんなお前のことは理解出来ん。その微笑みば下にはなんがあるとね。
呼びかけたのになかなか話始めん俺に名前は首ば傾げる。そん態度がむぞらしゅうて、俺は思わず息を詰まらせる。
「桔平が、東京ば行ってからもう1ヶ月たいね」
「…何ね、寂しかと?」
ケラケラと笑う癖して、いっちょん笑っとらん。桔平が転校してから、名前は心の底から笑わんくなった。桔平が転校ばすると知ってから、クラスでんお別れ会も、名前は泣きもせんかった。あんなに桔平のことばすいとったのに。あんなに桔平のことば愛しとったんに。涙ひとつ見せんかった。
「寂しかは、名前の方たい」
俺がそういえば、名前は一瞬固まって、それからゆっくり俺の方に顔ば上げた。そん瞳は最近全く見とらん名前の動揺ば移しとった。そんな顔されたら嫌でも再認識してしまう。
名前が桔平んごつすいとったこと。
「…そんなわけなか。桔平ば居らんくてもいっちょん寂しくなんてなか。」
無理に笑うそん顔ば見て、俺は思わず名前の肩を握りしめた。驚きば含んでいるその名前の表情はやけに切なく、俺ん心ば刺激した。「なに」なんて無愛想に俺ん手ば離させようとする名前に抵抗するように力強める。
名前の心の中に俺はどんだけおるんね。
俺はどう足掻いても桔平にはなれんことくらいわかっちょる。わかっちょるやけど。
「…俺は、お前の何パーセントなんね?」
俺の悲痛なその声を聞いて、名前は困ったように眉を斜めにした。俺のこん質問に名前は答えることはせずゆっくりと俺ん手を肩から外して、走って逃げていった。
俺はお前の心の1パーセントくらいには、なれとったんかね。お前の心にはいつでも桔平ばおる。俺が入る隙間はもうなかとね?俺は、もうおらん桔平にこうして醜く嫉妬して生きていくしか、なかとね?
悔しくて、悲しくて、思わず涙がこぼれおちた。中二の、夏。
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