純愛シリーズ
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「雨、やまないね」
バケツをひっくり返したみたいな雨が急に降り出した。今日は仁王くんと付き合って初めてのデートの日で遊園地に行ってたくさん楽しいことをした。だけれど、私は密かに不安に思っていることが数個あった。
彼は、私に触れることを恐れているようだった。
手を握ろうとしたらやんわりとかわされた。近づいたらほんの少し離れられた。私が目を合わせようとすると決まって視線はどこかに。こんなに他人行儀なのは初めてで胸がギュッと苦しくなった。
第一に告白は私からだったし、返事も「ああ、ええよ」くらいだったし、彼はあまり私と付き合うことに乗り気ではないんじゃないか。むしろ、断りきれなくて付き合っただけじゃないのか。
私の頭を不安がぐるぐる回る。そんな暗い気持ちを表すみたいに雨は止む気配がない。
「どうする?仁王くん」
「どうするもなんも、待つしかなかろ」
「うーんそうだね。」
実は折り畳み傘を持ってきていたけれど、それを出すのは怖かった。また拒絶されたら流石に生きていけない。どこまでも臆病な私は、傘をひとつ出す勇気すらないのだ。
なんだかすごく情けなくて、嫌になる。
「…苗字、大丈夫か?気分、悪いんか?」
「…仁王くん。」
「なんじゃ」
「私のこと?嫌い?」
思わず聞いてしまったその問に自分自身で固まってしまう。ああ、やってしまった。聞いてしまった。これで私たち別れるのかなあ。気持ちはもう既にローだ。後悔ばかりが頭に埋め尽くされるけれど、でも、私はこんなに仁王くんのことが好きなのに、仁王くんは私のことをこれっぽっちも好きじゃない。もしそうだったらすごく悲しいじゃないか。
「そんなわけなか!!」
私の耳に入ってきたのは拒絶でも肯定でもなく、否定だった。
必死の形相で私を見つめる仁王くんに思わず吹き出してしまう。そんなに必死にならなくてもいいのに。彼の言葉を聞いて不安だった気持ちがすぅっと引いていくのがわかった。
「でも、なんで今日避けてたの?」
「…笑わんか?」
「笑わないよ…多分」
「愛し方が、わからんのじゃ」
俯いて、戸惑いながらそう呟いた仁王くんを見て、なんだか全てを納得してしまった。今日のは拒絶ではなくて躊躇だったんだ。そうとわかればホッとして私は大きなため息をついた。考えすぎていただけでよかった。嫌われてなんかなかった。
だけれど、どういうことだろう愛し方がわからないって。
「俺は、好きなやつができたのも初めてやったし、好きなやつと付き合うのも初めてやった。だから、わからんのじゃ。触れていいのか、ダメなのか。どうすれば苗字ともっと仲良うなれるんか。色々考えとったら…結果的に避けとった。」
「すまん」と小さくこぼした仁王くんが愛しくて、あったかくて、私はためらわず仁王くんの手を握った。仁王くんは少し驚いた顔をしていた。
「まずは、名前呼びから初めて見る?雅治」
「…くく、そうじゃな名前」
怖がる必要なんてなかったんだ。
わからないならこうして歩み寄って2人で進んでいけばいい。そう思ったらいつの間にか雨はやんでいた。