純愛シリーズ
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桃城と私の関係性はなにかと言われたら私は答えられない。
親友という程には親しくないけれど、友達にしては他人行儀すぎる。どの言葉もしっくりこないのだ。それから分からないのは関係性だけじゃなくて、私の桃城に対する気持ちだった。もちろん彼のことは好きだ。面白くて良い奴。それが最近まで抱いていた彼への感情。だけれど最近はそれだけではしっくりこない。
考え込む私の背中を大きな手のひらが叩いた。
「痛っ!」
「おい名前帰んぞー!」
「叩かなくてもいいじゃんか!!」
私の背中を叩いたのは先程から私の頭を埋めつくしてる問題の男、桃城武。テニス部の練習が休みの日は2人で、たまに後輩の越前くんも一緒に帰っている。が、見当たらないので今日は二人きりのようだ。先程取ってきたであろう自転車に跨る桃城。私も後ろに乗っかってゆっくりと桃城のお腹辺りに手を回した。
桃城に触れる手が熱い。落ちないように強く掴む度に感じる彼の鍛えられた筋肉と、体温。こんなに体が熱いのはきっと暑い夏だから。
「そんでさー、…ってお前話聞いてる?」
「え?ごめん聞いてなかった」
「おいおいちゃんと聞けよ!とにかくあのマムシが猫撫でてたんだぜ!?意外すぎだろー!」
ワハハハと大袈裟に笑ってみせる桃城に、つられて私も少しだけ笑った。あの海堂くんが猫とむれている所を想像したらすごく可愛くて、すごく意外だった。それからそれからと沢山の話をしてくれる桃城の言葉一つ一つに耳を傾けながら坂道を下っていく。
桃城が楽しいと、私も楽しい。桃城が嬉しそうだったら私も嬉しい。
「桃城、ほんとにテニス部の人達が好きなんだね」
「当たり前だろ?それから、お前のことも好きだぜ!」
顔は見えないけれどきっと彼はいつもの太陽みたいな笑顔をしているのだろう。そう思ったらなんだか鼓動が早くなって、触れる手に力が加わった。すき、その言葉が異様に嬉しくて、にやけるのを隠すために桃城の背中に顔を埋めた。これじゃまるで、私が桃城のこと…
「…わたしも、すき」
「なんか恋人みてぇで照れるな」
「私のは、多分そういう意味」
聞こえるか、聞こえないか。
それくらいの声で小さく呟いたのに自転車は急ブレーキをかけて止まった。いきなりだったから思わず桃城の背中に大きく頭突きをして「ぶへっ」と女の子らしさの欠けらも無い声を上げた。
「お、おまっ、それホントか!?」
「ちょっと痛いよ桃城!!」
私の肩を掴んでぐわんぐわんと揺らされた。少し酔いそうだ。チラリと桃城の顔を見たら真っ赤になっていてそれを見て私も顔に熱がこもっていくのがわかった。
その反応、自惚れちゃいそうなんですけれど
「俺もお前のこと、ずっと好きだった」
私をゆっくりと自転車から下ろすと恥ずかしそうに私の手を握りながら彼はそう言った。あの太陽みたいな眩しい笑顔で。やっぱり私は桃城の笑顔が大好きだ。
何秒間か2人で見つめあって笑いあった。すごく幸せだった。
なんだか気恥ずかしくなって二人して自転車に乗り直した。駅に向かってまた自転車が走り出す。桃城の体温はあったかくて、自転車の風は気持ちよくて、ああ、夏だなって。
「…桃城」
「お?なんだ?」
「今日は、ちょっと遠回りして帰ろうよ」
まだもうちょっと君といたい。