純愛シリーズ
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昔から運動ができるテニスが上手な幼なじみと違って運動はすごく苦手だった。そんな私にとってマラソン大会なんて言語道断。有り得ないものだった。
しかし学校の行事となれば避けられない。ドベになるのを覚悟で走るしかない。気は進まないがみんなが一生懸命走る中私だけ仮病を使うのはもっと気が進まない。仕方ないと覚悟を決め白線のスタートラインに足を並べ今にも飛び出しそうな運動部からなるべく離れた後ろの方で私も両手を握りしめてスタートの合図を待った。
スタートのピストルと同時に運動部が駆け出していく。ありえないスピードで走ってく彼女たちを見つめ苦笑い。運動の苦手な人たちは追いつく気もなく自分のペースで走っていく。ゆっくりでも別に構わないだろう。
校舎を出る前のところで先程走り終えたばかりのテニス部達がいた。女子はその一点を見つめる時だけ少し笑みを取り戻していた。前の2人組は「目の保養だよね」ときゃっきゃはしゃいでいて可愛かった。
「苗字!がんばれよ!」
「うむ!テニス部の意地を見せてこい!」
「真田、テニス部ゆうても名前はマネージャーじゃき。」
「そうですよ。自分のペースでいいですからね」
次々と声をかけてくれるテニス部のみんなに返事はできないから軽く手を振った。ほんとはゆっくり喋りたいけれど前後の視線が痛いので早く進むことにする。ちょうどみんなを通り過ぎたくらいのところで「苗字」と声をかけられ、首だけ後ろを向いた
「もう少し顎を引き脇を閉めて走るといいだろう。…あまり無理をするなよ!」
普段はあまり声を張らない柳くんが私へのアドバイスのために大きな声を出してくたのがなんだか嬉しくて、すぐに言われたとおりに顎を引いて脇を閉めた。彼のアドバイスは的確ですこしだけ走るのが楽になったような気がした。
流石参謀だ。
それからはもう孤独で仕方なかった。たった3キロの道のりだけれどマネージャーしかしていない私からしたら苦痛で仕方ない。横腹がキリキリと痛むのを我慢しながら周りに遅れないように必死についていった。途中諦めて歩こうかとも何度も思ったがその度に脳裏から真田くんの怒声が聞こえてきて立ち止まることは出来なかった。副部長恐るべし。
死ぬ気で走りきりなんとかゴール。ドベは免れたが案の定後方軍団だった。ゼェハァと息を整えながらヘタヘタとグラウンドの真ん中で座り込んだ。
「ふむ、お前にしてはよく頑張ったな。前回よりも2分ほど記録が上がっている。」
「…柳くん?」
「とりあえず水を飲め」
渡されたペットボトルを遠慮なくがぶ飲みすると、急に飲むのは良くないからゆっくり飲めと指示されてゆっくり飲み始めた。柳くんはいつだって的確だ。
充分に飲んでからペットボトルを返した。柳くんはそれを受け取り私の頭をポンポンと叩くと糸目をゆっくりと開き微笑んだ。「お疲れ様」と。そのセリフが暖かくて嬉しくて私もすかさず「ありがとう」と返事をした。