午前の授業を終わらせてお昼休憩になった時だ

「太宰さん！」

「名前で呼んで構わないけれど」

「でも…」

「太宰“さん”なんて呼ばれ方。お兄ちゃんが仕事場で呼ばれている呼び方と同じなの」

「そうなんだ」

「だから名前で構わないよ」

「そっか」

なんて言ってる周りに

「そうそう、一緒にお昼食べましょ！」

「そうだった！」

なんて言ってくれる2人に

「いいよ」

お弁当を持って一緒に屋上に行くと

「お兄ちゃん。もう来てたんだ」

お兄ちゃん？

「笹川さんってお兄さんがいたんだ」

「うん。あ、京子って呼んでね！」

「私もハルって呼んでくださいね！」

「京子ちゃんとハルちゃんね」

「言っていた転入生か」

「うん。そうなの。太宰茉白ちゃんって言うの」

「そうか。京子をよろしく頼むな」

「此方こそ。よろしくお願いしますね。笹川先輩」

その直後、皆が一斉に来た屋上でお昼を食べることになったのだ

「あ、咖哩だ」
「今日は買って来たのですね」

「ふふ。うん。お兄ちゃんとお兄ちゃん的な存在の人（とあたし）の職場の下が喫茶処でね。其処で作って貰ったの」

「羨ましいですー」

お昼を食べ終わった直後だ

「何だ？誰の携帯だ？」

「あたしだ」

電話に出ると

「茉白。お前の兄をどうにかしろ！」

「何ですか？国木田さん。お兄ちゃんがお兄ちゃんなのはいつもの事じゃないですか。其れにあたしじゃなくても、織田さんもいるでしょうに」

「だからと言って俺の金で！食事処で昼食を食う莫迦が何処に居る！」

「それくらいのお金はお兄ちゃんいつも持ち歩いてると思いますけど」

「其れが持っていないと言うんだ」

持っていない？

「そんな莫迦な事」

頭のいいお兄ちゃんの事だ

「きっと、寮に置きっぱなしで来たのでは？」

「成程な」

「そもそも、あたしにくれた連絡のご用件は？」

「お前の席…太宰の隣だったな」

「そうですね」

「其処を貸し出せるか？」

「決定事項でしょう？構いませんよ」

「すまない助かる」

「例の件ってお兄ちゃんが夜には片がつくって言っていましたけど」

「夜には片が付く？さっき俺に渡してきたメモが関係あるのか」

お兄ちゃんが国木田さんにメモを渡すなんてそうそうない事だ

「例の虎を知って居る小僧と会ってな」

へぇ。其れはまた

「面白い事にな。虎が横浜に現れたのが」
「2週間前」

「あぁ。鶴見のあたりであった証言があったのは」
「4日前」

「そうだ。その小僧が同じ証言をした」

同じ目撃情報に目撃証言。

「面白いじゃないですか。いーなー。あたしも初日から横浜に帰りたくなったじゃないですか」

「羨ましがるな。其れに初日から戻って来てもアイツの事だ何も言わないだろ」

んー？

「んんー…」

まぁ、確かに言わなさそうだけれど…

「お兄ちゃんや乱歩さんに見つかっても何も言わないでしょうけど、織田さんに見つかったら面倒だな」

「お前はそういう奴だったな。だが、まぁ織田でさえそうは思ってないだろうがな」

「じゃあ、初日で1度学校が終わり次第帰りますね」

「あぁ」

「あ、メモの内容って何ですか？」

「どういう」

「其の儘そこのメモの宛先に行こうかと」

「全く。お前たち兄妹は何を考えているんだかさっぱりわからん。“15番街の倉庫に虎が出る。逃げられぬよう周囲を固めろ”だそうだ」

「りょーかい」

「要件が抜けとる」

「お兄ちゃんにそれを言っても構いませんけど、その虎が、例の“能力者”の可能性も有りますしね」

「何を」

「それじゃ、あたしの休憩が終わりそうなので」

それだけ言うと電話を切って皆の所に戻ると

「随分と長かったな」

「まぁ、一寸…」

「一寸？」

「どうせ夕方には横浜に帰りたいし」

「はひ！？」
「横浜からここまで通うの？」

「結構な距離があるよ！？」

「普段はこっちにアパート借りてるよ」

「そうなんだ」

チャイムが鳴ったと同時に屋上で解散となり教室に戻ると勉強も意外と知らない事を知るのは楽しい其れは昔からだ。
森さんの所に居た時も、安吾君に勉強を見て貰っていた時も、お兄ちゃんに見て貰っていた時も
中也君に体力がなさすぎって体力を鍛えるためのトレーニングをしてた時も
織田さんに面倒を見て貰っていた時も知らない事を知るのは楽しいのだ

「それじゃ、此処まで」

そう言った先生が出て行ってすぐに

「じゃ、また“来週”ね」

「来週？明日とかでは無くて？」

「うん。来週」

と言うか、早く終われば早く戻ってこれそうな気もするけど