12
名前を入れて読んでね
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あれは社長から下賜された特別な眼鏡で、僕のお異能力発動に必須だ」
あ、そうなんだ。それは初めて知った
「それに与謝野さんも瀕死の相手に治癒異能力が発動しなかった。恐らく茉白の異能力も発動しない」
「え?」
「つまり、この世界では僕の異能力も発動しない」
「あー。そういう話になるのかい」
2年前。乱歩さんの異能力は異能じゃないとただの一般人だってことを知って居るのは探偵社の人間だけだ。本人は持っていると思っているようだけれど
「それならいっそ地道に調査して、推理するってのはどうだい」
「面倒!地味!退屈!コツコツ調べものとか聞き込みとかは探偵の仕事で名探偵の仕事ではなーい!」
そう言った瞬間電池が切れたようになってしまった乱歩さん
「与謝野先生」
「何だい」
乱歩さんがやる気が出ないのならとある提案を持ち掛けたのだ
「あたしにその眼鏡を貸してはいただけないですか?」
「此れかい?」
「はい。其れとお願いがあるのですが」
此処にいる客に話を聞いてほしいと。きっと乱歩さんも話を聞くだけなら聞いてくれるだろうと思ったのだ
「あんたは」
「部屋で犯人を待ちます。いつ、どこから狙ってくるか分からないので」
「そうかい。気を付けるんだよ」
「はい」
別の部屋に入ると、ベッドに座り込む前に仲がどうなっているのかを確認したあたし。
「きっと何処からも狙えないはず…だけど、あの管理人のおじさんが何もない密室で殺されてるんだから、どこでどう狙われるか分からないんだから」
夜
「茉白」
「はい?」
ドアを開けると与謝野先生が来てくれていて
「今の処は無事のようだね」
「はい。部屋の中にも変な所も様子もないですよ」
「そうかい。あたしも気を付けるけど茉白も気をつけるんだよ」
「はい」
じゃあ。そう言って与謝野先生も部屋に戻って行ったのを確認すると再びベッドに腰かけたあたし
「まぁこの密室に態と1人きりになれば、犯人はきっと殺しに来るかな」
あたしじゃなく与謝野女医の可能性も有るけど
急に背後から物音がしたと思って振り返った途端
「ぁ…」
何かが胸の辺りに刺さって居て
「カハっ…」
其の儘じゅうたんに倒れ込んでしまったのだ
ドタドタと走ってきている客と与謝野先生
「茉白。しっかりしな!」
「よ…さの…せんせ…」
「全く何時だって無茶をするね。本当にあの馬鹿に言わなくちゃいけないかな」
与謝野せんせいの言う莫迦はきっとお兄ちゃんと織田さんの事だ
なんて思っていると、慌てた様子で入って来た乱歩さんの姿が見えて
「茉白…」
「ごめ…なさ…しくじっちゃった…犯人は…見えなかった」
駆け寄ってきてくれた乱歩さんは与謝野女医とあたしの方に来てくれて
「いい!喋るな!」
こんな真面目な声、初めて聴いたかも。怒っているような心配しているような
「あたしにはお手上げです…」
あたしを抱えてくれた乱歩さんに
「けど、世界最高峰の…名探偵なら…楽勝…でしょう?」
「!?」
「訊いた事があります…武装探偵社は…乱歩さんの才能を…生かすためだけに、設立させた組織だって」
そう言ったあたしの言葉に驚きを隠せていない乱歩さんと与謝野女医
「あの時…探偵社に来ると言ってくれたこと。織田さんを助けてくれたこと。今でも、感謝…してます…」
そう言った途端あたしも力尽きてしまったのだ
自分の最期が乱歩さんの腕の中だってことも幸せだったのかもしれない。