1話
名前を入れて読んでね
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「何の話をしているのかな」
「分かって居るくせに。僕が生きているってことは先代暗殺が外部に漏れる不安があるって事に」
「アテが外れてなんかない。君と私で見事に遂行して見せたじゃないか。もう2度とやりたくは無いけれどね」
あの現場を見てしまったあたし達兄妹はきっと善い駒にされているのだろう
「作戦は完了していない」
「そうなの?」
「あぁ。作戦ってのは暗殺と遺言捏造に関わった人間の口が封じられて初めて完了って言うんだ。
その点僕は共犯者としては適任だった。誰も疑わないから。僕や茉白の証言で貴方が次の首領になった後僕が動機不明の自殺を遂げても茉白にかんしてはそのころにはきっと今頃の記憶は無くなっているだろうしね」
!?
「キミに似た人を知ってる」
お兄ちゃんに似ている人なんて早々いるはずがない
「誰ですか」
「兎に角。大人を揶揄うのはやめなさい」
あー。お兄ちゃんの最近の趣味は森先生には通用しないかぁ
「兎に角、口封じをするつもりならとっくにやってる。呼吸よりも簡単にね。私が今年に入って何度君の自殺を阻止したと思っている?茉白ちゃんに泣きつかれ、1度なんか爆弾解除のために映画の主人公みたいなことまでしたのだよ。君に死なれたら先代派が『やはり
「ホント?」
「その代わりの調査だよ。茉白ちゃんも一緒に行っても構わないからさ」
「うさんくさ」
なんて言っているお兄ちゃんに
「横浜租界の近くにある擂鉢街は知って居るね?その近辺にある人物が現れたという噂が流布している」
ある人物?
「その真相を調査してきてほしい」
椅子のきしんだ音が聞こえてきて
「これは銀の託宣と呼ばれる権限委譲書だ。これを見せればマフィアの構成員はなんでも言うことを訊く。好きに使い給え」
「ある人物って?」
「当ててごらん」
「考えたくない。面倒くさいから」
「いいから」
「“銀の託宣”を使うほどの噂…真相を確かめ発生源を潰しておかなくてはならない程の。多分重大なのは人物自体じゃなくて
!?あの怖いお爺さん生きてるの?
『先生…幹部に伝えよ。鏖殺じゃ。日暮れまでに対立組織も軍警もポートマフィアに逆らうものは皆殺せ』
『それは、非合理的です』
『此方が何人死のうが構わぬ』
その後ずっと“殺せ”と連呼していた人だ
『首領は病により横死された。時期首領に私を任ずると遺言を残して。君たち兄妹が証人だ』
「現れたのは先代の首領。その通りだよ。世の中には安らかに眠っているべき人間が存在する。墓から起き上がってはいけない人間が」
「確かに、僕と茉白にしか出来ないね。薬、約束だよ絶対だからね」
「これが君“たち”の初仕事だ。ようこそ、ポートマフィアへ」
お兄ちゃんが近づいてくる気配がしてる
でも頭のいいお兄ちゃんの事だ。きっともう気づいているのだろう
「ところで」
「ん?」
「さっき言っていた僕に似た人って誰のこと?」
「私だよ。太宰君、私に理解できるかは分からないが訊かせてくれ。何故君は死にたい?」
「僕こそ訊きたいね。生きるなんて行為に何か“価値”があると本気で思ってるの?」
!!
それだけ言うと出て来たお兄ちゃん
「あ…」
「訊いちゃっていたのかい?」
「と…ちゅう…から」
「そうかい。じゃあ行こうか茉白」
「へ?」
「擂鉢街だよ。初めて行く場所だから大人の人がいいかもしれないね」
なんて言ったお兄ちゃんはきっとすでに決めているのだろう。外に出ると白髪の方眼鏡だけしている男の人が立っていて
「太宰君の妹も一緒に行かせるのですか」
「あぁ。他に頼れる人がいないからねぇ」
「頼れる人ですか」
「うん」
お兄ちゃんの後ろに隠れると
「随分とまた幼子のようにも見える」
「まだ10歳ですから」
「そうかね」
車に乗り込んできた場所は周りが海に囲まれているよく分からない場所だ
「横浜租界。擂鉢街はかつて此処で起きた巨大爆発事故でできた街です」
「爆発?」
「はい。爆発は前住民も土地権利もすべて吹き飛ばし後には荒野だけ。表社会からはじき出された日陰の民たちがここに街を造り始めました」
「法的な緊張地帯である租界に接し、かつ不法でも1度住めば居住権は発生する」
「そうです。その2つを背景に彼らは勝手に小屋を建て済み始めました。そうして此処は表社会からはじき出された灰色の人々が住む灰色の街になったのです」
ハイイロのマチ…
此処はそういう場所だったんだ
「君も本来はこういう場所に居るべき人間だと、私は思っているがね」
みんなそう言っていることくらい知って居るもの。
お兄ちゃんの方を見ると、さほど興味なさそうな顔をしていつもの愛読書である完全自殺読本を読んでいて
「塗装用の鍍金液を飲んでの自殺が外国では人気か。但し人気の理由は単に工業塗装業者にとって手に入りやすい薬品であるからで飲んだ者は生きながら内臓を溶かされ激痛に何時間も悶えて死ぬ!?」
「うぅ…」
「うぇ…試さなくて良かった」
「その……太宰さん。あまり先に行きすぎませんよう。私が護衛しているとはいえこの辺りは抗争地域です。ご注意を」
「抗争?」
「現行マフィアと敵対中の組織は3つ」
「3つも?」
「はい。1つ目が
今週だけでマフィア班が2つ落とされています。特にリーダー格の男が非常に厄介で銃弾が効かないとか」
銃弾が効かない?
「ふぅん」
「君もポートマフィアではなく羊に入っていれば良かったのではないかね」
「ふぅん…」
興味のなさそうなお兄ちゃんの携帯が鳴ったのも同じタイミングで
「森さんだ」
そう言ったお兄ちゃんは電話に出て
「もしもし?うん。聞き込みは完了。いろいろ分かったよ」
もう分かったの?なんて思ったのも束の間
「そうだね結論から言うと、先代はいたよ。蘇ったんだ地獄の底からね。目撃者が何人もいたよ。余程この世に未練でもあったのかな?うん。帰ってから詳しく報告を…」
そう言った直後、お兄ちゃんに突き飛ばされたあたしは広津さんの方に倒れ込んで
「とうとう嫌われたか」
なんて言っているともの凄いスピードで何かがお兄ちゃんにぶつかったのを確認できた
「太宰さん!」
「お兄ちゃん!」
吹き飛んでいった先で
「ククク」
と笑っている男の人の声がする
「ん…」
「こりゃあいい。ガキとはな!」
そう言った男の人はお兄ちゃんよりも森さんよりも広津さんよりも怖そうな男の人
「泣ける人手不足じゃねぇかポートマフィア!!」
「羊!」
え?この人が羊?
「痛いじゃないか。僕は痛いのは嫌いなんだけど」
「てめぇの選択肢をやろうガキ」
選択肢?
「“今”死ぬか、“情報を吐いて”から死ぬか。好きな方を選びな」
そう言った男の人の言葉に
「っ……」
「じゃあ“今”殺せ。楽に殺してくれるなら、願ったりだ」
「お兄ちゃ…」
「へぇ妹が居んのかよ。てめぇ」
「茉白。広津さんと一緒にいるようにね」
「やだ」
「この“単細胞”の力じゃ茉白が怪我をするだけじゃ済まない」
「!?」
