3話
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死体の靴底から出て来た広葉樹の枯葉が手掛かりとなり
お兄ちゃんはすぐに織田さんに連絡をしていて
「やあ織田作。手がかりをつかんだ。今から言う場所に向かってくれないかな?」
織田さんの声が聞こえていたけれどくぐもって聞こえなくて
「そう」
「いや。靴底に付着していた広葉樹の枯葉から特定できた。茉白のお手柄だよ」
お兄ちゃんが戻ってきたときには織田さんが気を失っている様子で
「大丈夫?」
「大丈夫だよ。医務室で休ませる。心配なら織田作の所に居たってかまわない」
「そうする」
「ん…」
「目覚めたかい?織田作」
「あ…」
「気分は?」
「向こう50年の二日酔いをまとめて受け取っている気分だ」
起き上がろうとした織田さんの手が動いたことで
あたしの目も覚めて
「茉白も眠り姫みたいだね」
「此処にいたのか」
「あぁ。キミが此処に運ばれてきたときも泣きそうな顔をしていてね。私が居てもいいと言ったのだよ。
昨日一晩ここでずっといたようだしね。起こすのも可愛そうだったからそのままにしていただけさ」
「安吾は見つかったか?」
「いいや。わたしの部下が爆発現場で見つけたのは倒れていた織田作だけだ。敵の姿は、影も形も。芥川君が“裏切り者を註戮し損ねた”と悔しがっていたよ」
「そうか。お前に言われた場所で安吾に会った」
!!
「矢張り安吾はあの場所に居たのだね。捕らえられた安吾。爆発、アンフォレ・ジイド。そして黒の特殊部隊」
「あぁ。黒ずくめの兵士たちと闇に消えた」
「黒ずくめの兵士?」
「差し当たり“黒の特殊部隊”と言った所だね
どうやら起こっている現象は2つに分けれらるようだ」
「奴らとミミックは別組織なのか?」
「別だよ。ただ黒の特殊部隊の方は当面無視していい
矢張り危険なのはミミックだ。織田作が寝ている間にマフィアの縄張りだった商店が6か所爆破された。同時にね。被害は分刻みで増えている」
ポートマフィアは密輸や盗難品売買の他に、商店や企業を保護しその対価を徴収する保護ビジネスを持っている。そのテンポが襲われたとなればマフィアは経済基盤と支援者の信用を1度に失う
「まだ、小さな商店は後回しにされているけどね」。ミミックはこれまでの連中とは違う。彼らは恐ろしく素早く攻撃は苛烈で、音もなく現れる。本拠地を叩こうにもどこからともなく現れて何処へともなく消えるから奇襲が効かない。
まるで幽霊を相手にしているようだ。本物の
「彼らの攻撃
今起きている抗争に芥川君を始めとする武闘派構成員で対抗しているけど
こちらは敵の長が使う異能力さえ分かって居ないんだ。分が悪い」
「その芥川と言う男。確かお前の部下だったな。かなり攻撃的な異能力を持っていると聞いたが」
「彼は鞘のない刀剣だよ。刀剣ゆえ茉白にも牙を向いているのが事実だ」
「茉白にもか」
あたしの頭を撫でてくれるこの大きな手が好き
あたしを落ち着かせてくれるこの声が好き
あたしが最初に織田さんに懐いたのも事実だけれど、あたしの初恋で片思いだ
「あぁ。遠からずマフィア最恐の異能力者になるだろうが
今は誰かが刃の仕舞い方を教えなくちゃならない。
話がそれたね。今朝五大幹部会が招集されポートマフィアの全戦力を持ってミミックを迎撃することが決定した」
「あたしも?」
「茉白は首領の判断で首領と一緒にいることが決定しているから安心だよ」
そっか
「そんなに優秀なのか?」
「最初に貧民街で見かけた時は慄然としたよ。彼の才能はけた外れだ。彼の異能はあまりに破壊的すぎる。それに彼自身も頑固だ。だから最初私が1人、貧民街で芥川君を迎え入れたと思っていたのに茉白がいたから、ずっと茉白を敵対視している。そしてあのまま放っておいたら力に振り回され遠からず自滅していただろうね」
「話を戻そう。当面の間の脅威は矢張りミミックだ。5大幹部会が招集されて、マフィアの全精力を以てミミックを迎撃することが決定された。ついさっき芥川君を含む私の部下が奇襲を受けたらしい。まるで毒蛇を食らう獣だ。今も美術館で抗争を…」
そう言ったお兄ちゃんの言葉の跡
あたしの頭を撫でている手が止まり、起き上がった織田さんは防弾チョッキを身に着けていた
「織田作?まさか、行くのかい?」
「マフィアの全精力を以て迎撃するんだろう?」
「織田作は抗争なんて興味ないと思っていたよ」
「ない」
袖を通しながらそう答えた織田さんに
「だが、小さなことが胸をチクチク指すこともある。2人の人間に借りを作って居る事とか」
借りを作る?織田さんが?
なんて思っていた矢先、準備を終わらせ得てしまった織田さんはあたしとお兄ちゃんの横を通り過ぎて
「借りなんて忘れてしまえばいい。相手だって何を貸したかなんて覚えちゃいないさ」
「俺が忘れられないんだ」
「珍しい。織田さんが忘れられないだなんて」
「そうでもない。太宰、お前にはこの件で何度も助けられた。部下が襲われてるんだろ?なら助けが必要だ」
「あの程度で借りなんて思われちゃかえって傷つく。それで借りを作ってるもう1人って」
その問いに答えることなく出て行ってしまった織田さん