2話
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右手で拳銃を構えていた。左手は動かないらしく胴体の横に垂らされていた。自力で立つ力もなく、壁に半分体重を預けている。
それでもお兄ちゃんは拳銃の射程圏内にあるから、こちら側はヘタに動けない
「おやおや。あれだけ撃たれて立ち上がるだなんて、大した精神力だね」
「幹部!」
「太宰、じっとしていろ。俺が何とかする」
「君たちの組織の名は、ミミックだ。そうだろ?」
襲撃者は顔色も変えず答えもしなかった
「答えを期待しちゃぁいない。実際の所私はキミたちを敬畏しているのだよ。
これほど真正面からポートマフィアにぶつかってくる組織は無かった
そして、私の目の前にこれほど殺意ある銃口を向けることに成功した者も居なかった」
お兄ちゃんが、襲撃者の方を向き、まるで自宅の庭を散歩するかのように敵の方に向かって歩いて行ったのだ
「太宰!よせっ」
「お兄ちゃ…っ」
あたしが震えているのと同時に
「私の目の中の感激と歓喜が君の中に見えることを願うよ。君がほんの少し曲げるだけで私が最も待ち焦がれていたものが訪れる。私の唯一の恐れは君が狙いを外すことだ。だが、出来るさ。君は狙撃手だろ?」
お兄ちゃんの顔は笑顔で満ち溢れていて、あの顔はきっとうまいこと避けるのかもしれないと思った安心感が出て来てしまった
「狙うべきは心臓か、頭。お勧めは頭だ。
さぁ、撃て。ここだ。この距離なら大丈夫さ。撃っても撃たなくても君は殺される。なら最後に敵幹部を葬って見せろ」
「お兄ちゃん!」
「頼むよ。私を一緒に連れて行ってくれ。この酸化する世界の夢から覚めさせてくれ」
そう言った瞬間織田さんと襲撃者がほぼ同時に撃ったのだ。至近距離から額を撃たれお兄ちゃんが大きくのけぞったのだ。
その刹那襲撃者に向けてお兄ちゃんの部下たちは一斉に銃弾を浴びせたのだ
「残念だよ」
2、3歩後ずさったお兄ちゃんはそこでぴたりと止まったのだ
「また死ねなかった」
「もう、そう言うことを言う…っ」
「ごめんよ茉白」
お兄ちゃんは顔を起こして側頭部右耳の少し上の皮膚が抉れて、出血している。弾丸はわずかにそれたのだと直ぐに理解が出来たのだが
「あたしを置いて行かないって言ったじゃん…っ」
「悪いね。吃驚させて」
抱き着いたあたしの頭に手を当てて謝ってくれたお兄ちゃんは
「迫真の演技だっただろう?アイツが外すことは分かって居たのさ。最初からね。
狙撃銃の跡は左頬についていた狙撃銃を左側に構えていたっていう事だ」
「つまり彼は左利きって事?」
「あぁ。でも拳銃は右手に持っていた。利き腕では無い方の腕で真面に立って居られないほどふら付いた状態で、おまけにあの旧式の拳銃で1発きりとなれば銃口を体に押し付けでもしない限りは当たらないよ
後は時間を稼いで奴の腕が付かれるのを待つ。ゆっくり近寄れば奴はすぐには撃たない。後は織田作が何とかしてくれる。そう踏んだのさ。合理的だろう?」
「そうだな」
「あたしは怖かったけどね」
また、大事な人を失う怖さを目の前で体感しなくちゃいけなくなるなんて御免だ
「織田作」
後ろを振り向いたお兄ちゃは織田さんに
「安吾を頼む」
たった一言だけなのに凄い重いものを背負わせてしまったのかもしれない
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