2話
名前を入れて読んでね
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「だけど、織田作。茉白」
「ん?」
「なら1つ気づいたことを教えるよ」
「お兄ちゃん?」
「気づいたこと?」
「昨日酒場で呑んでいた時、安吾は仕事で取引をした帰りだと言っていたろう?」
「そうだな」
「あれは多分安吾の嘘だよ」
「何?」
「安吾の鞄を見ただろ?茉白」
「見た。上から煙草に携帯雨傘。カメラと戦利品の骨董時計の堤が詰まって、携帯雨傘は使用されて濡れ、拭き布を巻かれていた」
「そして出張中の東京は雨だった」
「なんの不都合がある?雨が降っていて傘が濡れていた。ごく普通の帰結に思えるが」
「安吾が真実を話していたら
安吾は自前の車を運転して取引現場に向かった筈だけど、ではあの傘は何時使われたのだろう」
そう言ったお兄ちゃんの言葉にはっとしたあたし
「取り引きの前じゃあない。傘は堤の上に置かれてたから。そして取引の後でもない」
「何故だ」
「あの濡れ方は2、3分使われた感じじゃない。たっぷり30分は雨に打たれていたはずだよ。其れだけの雨の中にいたにしては安吾の靴やズボンの裾も乾いていた。
取り引きが8寺で我々が会ったのが11時。取り引きの後2時間では渇くには時間が足りない」
「着替えを持っていたのかもしれない」
「酒場からの帰りに安吾の車に私も茉白も便乗したが」
「靴も着替えも無かったですよ」
それに安吾君の車には其れを置いて置けるスペースなんてなかったのだから
「傘は取引の前には使われていない。取引の後にも使われていない。そして、取り引きの最中にも使われていない」
「如何いう事だ」
「取り引き商品の紙包みは濡れていなかったですから。それに中世の骨董時計なら水気は厳禁だ。取引は雨の当たらない屋内で行われたはず。そうだよね?お兄ちゃん」
「あぁ」
「ではあの言葉は」
「私の予想ではあの骨董時計は取引品じゃあない。最初から安吾の持ち物だ。荷が鞄の奥にあったのは出張に出かける時からそれを入れておいたからだよ。
そして取引にはいかず、雨の中誰かと会い、30分ばかり会話をしてから時間を潰していたんだ帰って来たんだ」
「確かに。安吾君の様な情報員はしばしば雨の降る路上を密会の場所に選ぶことがある。傘をさしていれば顔を隠せて、誰かに気づかれたり、監視カメラに映ることも無い盗み聞きや盗聴が会っても雨音が声をかき消してくれる。社内や室内よりも密談に向いているって事だね」
「その通りだ」
「確かに安吾は嘘をついていたのかもしれない。だが、安吾はマフィアの秘密情報を扱う情報員だ。誰にも明かせぬ密会の一つや二つあるだろう」
「なら、一言。お兄ちゃんたちにこう言えば良かったのでは?
“言えない”と。そうすればお兄ちゃんも織田さんもそれ以上は訊かないでしょう?」
「なのに安吾は取引があったと嘘をついた。わざわざアリバイ用の骨董時計まで持ち出してる。そうまでして、私たちに密会を隠したかった理由はなんだ」
「織田作、気を付けろ。今事態は君のコップの淵から零れるギリギリのところにある。何か1つでも新たな事態が投げ込まれれば水はコップからぶちまけられ、君一人の手には負えなくなってしまう。ここの処理は私と茉白がやっておくよ。安吾を頼む」
「あぁ」
そう言って歩きだそうとした織田さんとあたしが気付いたのはその時だった。
襲撃者が
「お兄ちゃん!」
「太宰!」
あたしたちが叫ぶのと同時に
「動クナ…」
襲撃者の男がくぐもった声でそう言い放ったのだ
お兄ちゃんの部下も織田さんも襲撃者を撃つには襲撃者はお兄ちゃんに近すぎた
そして襲撃者の持っている銃口はお兄ちゃんに向けられている