2話
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「世の中の大抵の事は失敗するよりも成功する方が難しい。そうだろう?」
「そうだ」
「じゃあ、私は自殺ではなく、自殺未遂を志すべきなのだ!自殺に成功するのは難しいが、自殺未遂に失敗するのは比較的容易いはずだ!そうだろう?」
「確かに」
「矢張りそうだね。
「もう、試すの?」
「あぁ。マスター、メニューに洗剤ある?」
「ありません」
「線ザーベースのカクテルは?」
「ありません」
「ないのかぁ。じゃあ、洗剤のソーダ割りは」
「其れもありません」
「ないのかぁ」
「ないものは仕方がないな」
「そんなものがなくてよかった」
「其れより聞いてよ。織田作。今日ね銃撃戦があったのだよ」
そう言いのけるのは流石は幹部なだけある
「ほう。その割には茉白が驚かないんだな」
「泣かれそうになったよ。でもこうして無事に帰って来た時には抱き着いて来てね」
「そう言えば、どんな相手か聞いてない」
「機銃つき幌車で武装した元気な集団と倉庫街で撃ち合いになった」
あー。
「其れは随分な装備だな。ではその足の怪我の理由は」
「“不意の怪我をしないために”っていう本を歩きながら読んでいたらトイレに行きたくなって急いだら排水溝に落ちた」
「そうだったんだ」
「急いでいたのなら仕方がないな」
なんて言ったあたしと織田作さんに
「仕方がないね」
「ではその腕の怪我は」
「車で峠をぶっ飛ばしていて崖から落ちた」
「ではその額の包帯は」
「“豆腐の角で頭をぶつけて死ぬ”という自殺方法を験した」
「豆腐で成功したのか?」
「豆腐を固くするために独自の製法を編み出したのだよ。塩で水分を抜いたり、重しを乗せたり…自前の厨房でね。おかげで釘を打てるほど堅くなったし組織の誰よりも豆腐の製法に詳しくなった」
「柔らかいお豆腐の方が好き」
「茉白はそうだね。今度作ってあげよう」
「わーい」
「その豆腐はうまいのか」
「悔しい事に薄く切って醤油で食べると物凄く美味しい」
なんて言いながらもお酒の入ったグラスの氷を突いているお兄ちゃんの隣で同じものを飲んでいる織田作さん
「それほどに哲学的思考をしているという事は仕事で失敗したのか?」
「そうなのだよ。失敗も失敗、大失敗さ」
「お兄ちゃんが其処まで言うなんて珍しい」
「囮作戦でね」
囮…それはあの時の抗争を思い出させるもので
「事の発端は私たちの密輸品受け渡しを、何処ぞの愉快な連中が邪魔をして横取りしたがっている。なんて情報を掴んだことだ。私達の飯の種を横から掻っ攫おうなんて嬉しくさせてくれる連中だよ。
これはさぞや威風堂々たる
「そんな事だろうと思ったよ」
「ん?」
「お兄ちゃんが仕事で失敗するのをあたしは見たことがない。この間の抗争の時もそうだった。あの時だって中也君に分かりやすいヒントを出してたもん」
「その連中はどこの組織だった」
「うちの元気っ子たちが逃げそびれた奴を捕虜室で小突き回してるから直に吐くんじゃないかな」
「ポートマフィアの報復を恐れないとはね。でも、相手が悪かったでしょ」
「どうしてそう思う?」
「相手がお兄ちゃんだったからだよ」
罠を張られて泣いて逃げるくらいならポートマフィアを相手になんかしなくてもいいのに