空谷の跫音-短編・番外編-
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音柱である宇髄さんに付いて鬼のいる遊郭へ行くことになった俺たち。
準備をするため、藤の家へ向かう。
「付いてこい。」
そういって宇髄さんは、消えるように行ってしまった。宇髄さんが去っていったあとの風がふわっと顔にかかる。
ん?この香り、覚えがある。
誰だったかな?
宇髄さんの風から、覚えのある香りがする。
しかし、なかなか思い出せない。
藤の家に到着し、客間で現在の状況について宇髄さんから教えてもらう。
「・・・俺の嫁が潜入して鬼の情報収集に励んでんだよ!定期連絡が途絶えたから俺もいくんだっての!」
「そういう妄想をしていらっしゃるんでしょ?」
「クソガキが!」
べしべしべしべしっ
今も香る。この香りは・・・・
そのとき、パッと顔が浮かんだ。
李亜様、だ。
――――――――――
お館様と柱の方々への挨拶を、なんとか無事に終え、村田さんに連れられたとき屋敷の中で女性を見かけた。村田さんがすかさず挨拶をする。
「李亜様!お疲れ様でございます。」
「お疲れ様。あら、新人さん?」
「はい!李亜様は、お館様の妹君だ。炭次郎、挨拶しろ!」
と、村田さんにいわれ
「・・・かっ、竈門炭次郎です!よろしくお願いします!」
「炭次郎...よろしくね」
そういってにっこりほほえんだ。なんだろう、香とは違う、いい香りのする美しい人だった。
それっきり、李亜様と顔を合わせる機会はなかったが、李亜様自身から滲み出る、なんともいえない上品な香りは、深く印象に残っていた。
――――――――
なんで宇髄さんから李亜様のにおいがするんだろう。
話が終わって、みんなでひといきついていたとき、ふと宇髄さんに聞いてみた。
「宇髄さんと李亜様は、仲がよいのですか?」
とても驚いた顔をして宇髄さんは
「あ゛ぁ?・・・・なんだ唐突に。」
「宇髄さんから、李亜様の香りがしたので。」
「李亜?だれだ?そいつ」
伊之助が聞く。
「お館様の妹さんだよ。一度、屋敷で挨拶したんだ。」
「その人の香りが、この人からしてきた、と・・・・ほんとに、鼻が、いいね、炭次郎は・・・・」
善逸は、なにかを察したように気まずい表情を浮かべながら言った。
「っつーことは祭りの神は、嫁が三人いながらにして、そいつと・・・う゛っ!」
いいかけたところで宇髄さんに殴られる伊之助。
宇髄さんの驚いた顔、そして伊之助の発言で、さすがの俺も気づいてしまった。なぜ宇髄さんから李亜様の香りがしたのかを。なんてことを聞いてしまったのだろう。自分の嗅覚と鈍感さを心底恨んだ。
「てめえら、死にたくなけりゃ、今の会話はすべて忘れろ。わかったな!」
殺し屋のような目をして宇髄さんはいい放ち、部屋を出た。
「・・・やってしまった」
落ち込む俺を励ます様に肩にそっと手をやる善逸。
「しかし、なんであんな奴が。クソ。世の中不公平だ。」
善逸はブツブツと俺の横でしばらく文句をいっていた。