客間に近づくにつれ、女の泣き声が聞こえてくる。

「ぐすっ、もう嫌。こんな所、でていく！」

「なにいってんの須磨。出ていったって行く場所なんてないじゃない。家に戻ったところで、同じようにつらい思いをするだけよ」

「でもっ。でも、いやぁぁぁ！」


・・・・・ガラっ



「お前らか、俺の嫁っつーのは」




「ぎゃぁぁぁぁぁぁ！！！」




3人の声が響き渡る。耳がいてぇ。


「まきを、久しぶりだな、覚えてるか。」


「もちろんです、天元様、お久しぶりです！」

「覚えてんじゃねえか、じゃあなんでさっき叫んだんだよ」

「すみません、二人につられてしまって・・・。
雛鶴、須磨、もう大丈夫。この人が天元様よ。あの人の兄なんだけど、性格は全然違って、とにかく優しいの！」

「・・・あの人って、慶四朗のことか？」

「ええ。今日、天元様が慶四朗様に殺害されたら、私たちは慶四朗様の妻にされるところでした。天元様が無事でなによりです！」

「あの冷酷な目。私たちを道具のようにしか見ていない・・・」

「うわーーん、よかったぁぁぁ・・・」


泣きじゃくる3人に、今から俺が里をでるといったらどうなるだろうか。

俺が出ていったあと、きっとお前らは慶四朗と・・・






ーーー仕方がない｡連れていくしかない･･･か。