知らないけど分かってる。
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知らないけど分かってる。5
* * *
ローはベポを通してクルーを食堂に集め、現在の〇〇の状況、そして今後の対応策を淡々と説明した。案の定、クルーには動揺があり、ローの考えに思うところもあったようだが、ローの有無を言わさない態度に渋々納得したようだった。「船長命令」の大義名分があれば、下々のクルーは従うしかないのだ。
とは言え、ローもその辺りのクルーの不満感は理解しており、「船長命令だ」と突き放した後に続ける。
「…とは言え、俺もおまえ達と同じで〇〇にはポーラータング号の一員であることを思い出してもらいたい。ただ無理やり記憶の蓋をこじ開けるようなマネはするな、ってことだ。まずは少しずつでも良いから、お前達とコミュニケーションをとって、記憶を取り戻すきっかけを作りたいと思っている。」
食堂の後方でうぉーと野太い歓声が上がり、「キャプテン分かってるー!」だの「愛の力で奇跡を起こそう」やら好き勝手に言っている。そんな簡単なものではないのだが…とローは内心思ったが、それでもクルーのポジティブでやや能天気とも言えるような言動に幾分救われていた。
簡単なミーティングを終え、クルーはそれぞれ持ち場に戻っていく。
「おい、ベポ」
「キャプテン、何?」
ローはベポを呼び戻す。
「わりぃが、〇〇の様子をしばらく見ててくれるか。船長室で今寝てる。起きたら、〇〇も色々聞きたいことがあるだろう、話せる範囲で答えてやれ。ただ俺との関係含め、〇〇にプレッシャーを与えるようなことは言うなよ。」
「俺より、側にいるのはキャプテンの方が良いんじゃ…」
肝心の俺に怯えまくっているんだよ…と内心悪態をつきつつ、代わりに
「信頼できるお前だから任せたんだ。"特命"だ。」
「キャプテン任せて!アイアーイ!!!!」
キャプテンの信頼という喜びにベポのテンションは最高潮を迎え、最早雄叫びのように声をあげると船長室に一目散に駆け出した。
「あとはお前の見た目の方が、ウケが良い。」
ローはドタドタと走り去るベポの背中を見送りながら、とっくに本人に聞こえない距離だろうが、少しだけ口角をあげて言った。
* * *
で、場面と時刻は変わり再び食堂に戻る。
〇〇を見守りながらうたた寝するという失態はあったが、ベポは目覚めた〇〇と交流を図った後、話した内容をローに報告するべく食堂室にいた。
「〇〇が他のクルーにも会いたい、と。」
ベポの報告を反芻するように繰り返す。〇〇の真意は不明だが、これは記憶を取り戻すことに前向きと捉えて良いのだろうか、そして他のクルーには自分も含まれるのだろうか…と逡巡する。
誰と会わせるべきなのか。ペンギンとシャチは付き合いも長くて信頼はしているが、言わなくても良いことまで間違いなく言うだろう。イッカクは女性同士だが、どのみちしばらくは同室にする予定だから他のクルーとの接触を優先すべきか…などあれこれ考えて答えがまとまらない。
「キャプテン」
「なんだ?」
「思い付きなんだけど、もういっそいつもみたいに皆で食事を摂るのはどう?」
「ここでか?」
ローは自分が肘をついていた食堂の大きなダイニングテーブルを指差す。今の話が聞こえたのかカウンターキッチンから、コックもひょっこり顔を出した。
「そう。ここだったら色んなクルー達と話せるし。」
「だったら俺は〇〇ちゃんの好物、たくさん作らねぇとな!」
いつの間にかコックもうんうんと頷きながら話に混ざってきた。総勢20名近くでの食事、宴ほどどんちゃん騒ぎにはならないだろうが、果たして〇〇はどう思うだろうか。ただ、じゃあどうすれば良いかというと、ローにも代替案は浮かばず、むしろ自分の目が行き届く範囲で会話をコントロールできる分、心労は少ないという結論に至った。
「…分かった。ベポ、クルー達に何事もなければ時間通り夕食に来るよう伝えてくれ。コック、食事は〇〇が胃袋を掴まれるようなやつを頼むよ。」
カウンターキッチンの向こうで、コックが心得たと言わんばかり手をひらひらと振った。
* * *
ローはベポを通してクルーを食堂に集め、現在の〇〇の状況、そして今後の対応策を淡々と説明した。案の定、クルーには動揺があり、ローの考えに思うところもあったようだが、ローの有無を言わさない態度に渋々納得したようだった。「船長命令」の大義名分があれば、下々のクルーは従うしかないのだ。
とは言え、ローもその辺りのクルーの不満感は理解しており、「船長命令だ」と突き放した後に続ける。
「…とは言え、俺もおまえ達と同じで〇〇にはポーラータング号の一員であることを思い出してもらいたい。ただ無理やり記憶の蓋をこじ開けるようなマネはするな、ってことだ。まずは少しずつでも良いから、お前達とコミュニケーションをとって、記憶を取り戻すきっかけを作りたいと思っている。」
食堂の後方でうぉーと野太い歓声が上がり、「キャプテン分かってるー!」だの「愛の力で奇跡を起こそう」やら好き勝手に言っている。そんな簡単なものではないのだが…とローは内心思ったが、それでもクルーのポジティブでやや能天気とも言えるような言動に幾分救われていた。
簡単なミーティングを終え、クルーはそれぞれ持ち場に戻っていく。
「おい、ベポ」
「キャプテン、何?」
ローはベポを呼び戻す。
「わりぃが、〇〇の様子をしばらく見ててくれるか。船長室で今寝てる。起きたら、〇〇も色々聞きたいことがあるだろう、話せる範囲で答えてやれ。ただ俺との関係含め、〇〇にプレッシャーを与えるようなことは言うなよ。」
「俺より、側にいるのはキャプテンの方が良いんじゃ…」
肝心の俺に怯えまくっているんだよ…と内心悪態をつきつつ、代わりに
「信頼できるお前だから任せたんだ。"特命"だ。」
「キャプテン任せて!アイアーイ!!!!」
キャプテンの信頼という喜びにベポのテンションは最高潮を迎え、最早雄叫びのように声をあげると船長室に一目散に駆け出した。
「あとはお前の見た目の方が、ウケが良い。」
ローはドタドタと走り去るベポの背中を見送りながら、とっくに本人に聞こえない距離だろうが、少しだけ口角をあげて言った。
* * *
で、場面と時刻は変わり再び食堂に戻る。
〇〇を見守りながらうたた寝するという失態はあったが、ベポは目覚めた〇〇と交流を図った後、話した内容をローに報告するべく食堂室にいた。
「〇〇が他のクルーにも会いたい、と。」
ベポの報告を反芻するように繰り返す。〇〇の真意は不明だが、これは記憶を取り戻すことに前向きと捉えて良いのだろうか、そして他のクルーには自分も含まれるのだろうか…と逡巡する。
誰と会わせるべきなのか。ペンギンとシャチは付き合いも長くて信頼はしているが、言わなくても良いことまで間違いなく言うだろう。イッカクは女性同士だが、どのみちしばらくは同室にする予定だから他のクルーとの接触を優先すべきか…などあれこれ考えて答えがまとまらない。
「キャプテン」
「なんだ?」
「思い付きなんだけど、もういっそいつもみたいに皆で食事を摂るのはどう?」
「ここでか?」
ローは自分が肘をついていた食堂の大きなダイニングテーブルを指差す。今の話が聞こえたのかカウンターキッチンから、コックもひょっこり顔を出した。
「そう。ここだったら色んなクルー達と話せるし。」
「だったら俺は〇〇ちゃんの好物、たくさん作らねぇとな!」
いつの間にかコックもうんうんと頷きながら話に混ざってきた。総勢20名近くでの食事、宴ほどどんちゃん騒ぎにはならないだろうが、果たして〇〇はどう思うだろうか。ただ、じゃあどうすれば良いかというと、ローにも代替案は浮かばず、むしろ自分の目が行き届く範囲で会話をコントロールできる分、心労は少ないという結論に至った。
「…分かった。ベポ、クルー達に何事もなければ時間通り夕食に来るよう伝えてくれ。コック、食事は〇〇が胃袋を掴まれるようなやつを頼むよ。」
カウンターキッチンの向こうで、コックが心得たと言わんばかり手をひらひらと振った。