知らないけど分かってる。
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知らないけど分かってる。8
* * *
クルーの皆さんの熱量がすごい。
ものすごく熱い。
普通、海賊団の船長とはこんなに慕われるものなのだろうか。慕うというより、これは崇拝に近い。でもどこまでが誇大表現か分からないエピソードの数々を聞いていたが、本質的にトラファルガー・ローは不必要な虐殺や支配をする類いの海賊ではないようだった。ジャンバールの過去と、結果として天竜人の奴隷を略奪した行動に驚きを隠せなかったが、彼の自由を重んじ、理不尽を嫌う性格を考えると自然なのかもしれない。
何をローの性格を知った風なことを、と思わず自分にツッコミを入れる。
怖いけど、目を奪われてしまう。
冷酷無比のように見えて、情が深い。
愛なんか求めてない素振りで、実は愛情に飢えている。
困ったことに連想ゲームのように、勝手にこの男のイメージが湧いてくるのだ。これではまるで昔から彼のことを知っているようではないか…。
「おい、〇〇。何でも良いから適当に食い物をこっちに回してくれ。」
こちらの悶々とした思考を断ち切るように、当の本人に声をかけられる。彼の眼前の皿のほとんどがベポくんの体内に納まっているようだった。慌てて取り皿を持ち、イッカク側にある食べ物をいくつかよそおうとする。
「食べたいもの、あります?」
「いや、任せる。何でも良い。」
任せると言われても…。海賊とは普段からこんなに品数多く、豪勢な食生活なのだろうか。それならば海賊も案外楽しいのかもと思う程に、どの料理も美味しい。
テーブルには、海王類のステーキ、海草のサラダ、チーズたっぷりのピザ、魚介とトマトのスパゲッティ、クラブハウスサンドイッチ、色んな形のおにぎり、黄金色のコーンスープ、深海魚の煮付け、フルーツたっぷりのケーキ、タコのカルパッチョなど…所狭しと料理が並ぶ。
ローは迷う私を、面白そうに見ている。ほろ酔いなのか、口角も少し上がっていた。
好き嫌いがないなら何でも良いだろう。適当に2~3品をお皿に取り分け、彼に渡す。
「旨そうだ。ありがとな。」
私が取り分けた食べ物をまじまじと見ると、素直に礼を述べて、もぐもぐと頬張った。大口を開けておにぎりを食べながら、彼はまた私に視線を戻す。
何だろう…。
そんなにじっと見られると、また条件反射で目をそらしたくなる。ただ、先ほどよりもずっと視線が柔らかいので無下にそらすことができない。背中がこそばゆく、頬が火照っているのが自分でも分かる。彼はおにぎり一つをあっという間に食べ終えると、ククッと小さく笑った。
「全部俺の好きなものだ。よく分かったな。」
「…な!」
* * *
〇〇に取り分けてもらった皿をまじまじと眺める。深海魚の煮付け、海王類の串焼き、野菜の浅漬けに、そしておにぎり2個。
今日は大盤振る舞いとばかりにコックは、いつもの倍のラインナップで料理をテーブルに並べている。これだけの品数の中で、〇〇は何を選ぶのかと思ってはいたが、まさか全部自分の好物を選ぶとは思っていなかった。彼女の前にはピザもサンドイッチもスパゲッティも、どこの国の料理だか分からない小麦製品も、様々な料理があったにも関わらず、2個のおにぎりを選んだのだ。こんなことで喜ぶなんて、俺はどうしちまったんだ、と呆れながらも彼女の中に「俺」がどんな形であっても残っていることが、素直に嬉しかった。
〇〇自身が、それに気づいていなかったとしても。
* * *
クルーの皆さんの熱量がすごい。
ものすごく熱い。
普通、海賊団の船長とはこんなに慕われるものなのだろうか。慕うというより、これは崇拝に近い。でもどこまでが誇大表現か分からないエピソードの数々を聞いていたが、本質的にトラファルガー・ローは不必要な虐殺や支配をする類いの海賊ではないようだった。ジャンバールの過去と、結果として天竜人の奴隷を略奪した行動に驚きを隠せなかったが、彼の自由を重んじ、理不尽を嫌う性格を考えると自然なのかもしれない。
何をローの性格を知った風なことを、と思わず自分にツッコミを入れる。
怖いけど、目を奪われてしまう。
冷酷無比のように見えて、情が深い。
愛なんか求めてない素振りで、実は愛情に飢えている。
困ったことに連想ゲームのように、勝手にこの男のイメージが湧いてくるのだ。これではまるで昔から彼のことを知っているようではないか…。
「おい、〇〇。何でも良いから適当に食い物をこっちに回してくれ。」
こちらの悶々とした思考を断ち切るように、当の本人に声をかけられる。彼の眼前の皿のほとんどがベポくんの体内に納まっているようだった。慌てて取り皿を持ち、イッカク側にある食べ物をいくつかよそおうとする。
「食べたいもの、あります?」
「いや、任せる。何でも良い。」
任せると言われても…。海賊とは普段からこんなに品数多く、豪勢な食生活なのだろうか。それならば海賊も案外楽しいのかもと思う程に、どの料理も美味しい。
テーブルには、海王類のステーキ、海草のサラダ、チーズたっぷりのピザ、魚介とトマトのスパゲッティ、クラブハウスサンドイッチ、色んな形のおにぎり、黄金色のコーンスープ、深海魚の煮付け、フルーツたっぷりのケーキ、タコのカルパッチョなど…所狭しと料理が並ぶ。
ローは迷う私を、面白そうに見ている。ほろ酔いなのか、口角も少し上がっていた。
好き嫌いがないなら何でも良いだろう。適当に2~3品をお皿に取り分け、彼に渡す。
「旨そうだ。ありがとな。」
私が取り分けた食べ物をまじまじと見ると、素直に礼を述べて、もぐもぐと頬張った。大口を開けておにぎりを食べながら、彼はまた私に視線を戻す。
何だろう…。
そんなにじっと見られると、また条件反射で目をそらしたくなる。ただ、先ほどよりもずっと視線が柔らかいので無下にそらすことができない。背中がこそばゆく、頬が火照っているのが自分でも分かる。彼はおにぎり一つをあっという間に食べ終えると、ククッと小さく笑った。
「全部俺の好きなものだ。よく分かったな。」
「…な!」
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〇〇に取り分けてもらった皿をまじまじと眺める。深海魚の煮付け、海王類の串焼き、野菜の浅漬けに、そしておにぎり2個。
今日は大盤振る舞いとばかりにコックは、いつもの倍のラインナップで料理をテーブルに並べている。これだけの品数の中で、〇〇は何を選ぶのかと思ってはいたが、まさか全部自分の好物を選ぶとは思っていなかった。彼女の前にはピザもサンドイッチもスパゲッティも、どこの国の料理だか分からない小麦製品も、様々な料理があったにも関わらず、2個のおにぎりを選んだのだ。こんなことで喜ぶなんて、俺はどうしちまったんだ、と呆れながらも彼女の中に「俺」がどんな形であっても残っていることが、素直に嬉しかった。
〇〇自身が、それに気づいていなかったとしても。