知らないけど分かってる。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
知らないけど分かってる。3
✳ ✳ ✳
敵船の襲撃を受けたが、こちらも懸賞金と経験で言えば名も知らぬ海賊団に負けるような面子ではない。ただ、無益な殺生は元来好まないこともあり、ポーラータング号の機動性を活かして、そのまま相手を撒くことにした。
相手の背後に回り込んだ後、そのまま潜水しようとしたところ予想だにしない砲撃を食らう。明らかに敵船の砲台はこちらを向いていない。
いったいどこから、どうやって…?
疑問は解決しないが、このまま考えるのは得策ではない。また数発、ポーラータング号に直接当たりはしないものの、大きく海面が揺れた。
「潜水する。全員配置につけ!」
「アイアーイ」とベポの大きな声が聞こえると同時に、ガクンと一際大きな揺れが船を襲った。咄嗟に機材に捕まり体勢を維持する。潜水してしまえば、相手もこちらに手を出すことはできない。とりあえず念には念を…と、潜水後も相手の後方に舵を切り十分に距離をとった。
ようやく船内に落ち着きが戻り、先ほどの砲台ではない何かの攻撃について考えを戻す。
絶対に砲台はこちらを向いていなかった。
甲板にも手持ち大砲を持つような狙撃手はいなかった。
悪魔の実か、何かなのか…。
いずれにせよ名もない海賊だとたかをくくった判断ミスで、ポーラータング号を、クルー達を危険に晒した自分に怒りを覚える。
「お前ら、無事か?!」
点呼のつもりで船内の奥まで聞こえるよう声を張り上げる。「元気でーす」とノリよく答えるシャチとペンギンに安心していたが、目下一番安否が知りたい〇〇の姿も声も確認できない。名指しで名を呼び、その無事を確認したいところだが他のクルーがいる手前、視線を走らせ〇〇の姿を探す。
「〇〇!!!しっかり、大丈夫?!」
そこにイッカクの声が響いた。
背筋に冷たいものが走り、クルーが密集していた操舵室の前線から人をかきわけて、イッカクの元に駆け寄る。クルー達の小さな輪があり、その中心で倒れた〇〇の肩を揺さぶるイッカクの姿があった。
「動かすな!!」
外傷は見当たらないものの目を閉じたままピクリとも動かない〇〇。頭へのダメージなら、原因が分かるまで安易に刺激は与えない方が良い。
『スキャン』
すぐさま鬼哭を手に取り、横になった〇〇にかざすと、ゆっくりと左右に刃を流す。動作を続けながら、〇〇を取り巻くクルー達に順次声をかけ、指示を出した。
「ペンギン、操舵室でハクガンのサポート。シャチはソナー室で敵船の進路並びに距離を確認しとけ。」
スキャンが終わる。脳外科は専門ではないが、注意深く見ても血栓や出血は確認できなかったので、それで一先ず胸を撫で下ろす。ただ状況は何も打開されたわけではない…。
「イッカク、状況が分からねえ。何が起きた?」
イッカク曰く、潜水するタイミングの大きな揺れで船内廊下に詰めかけていた複数名のクルーがバランスを崩して倒れかけた。そしてその先頭にいた〇〇が、後ろのクルー達の体重負荷を受けた状態で、廊下にあるパイプの金属バルブ部分に頭を強打したらしい。
たまに記事にもなるが、集団内で将棋倒しによる事故。それがまさか自分の船で起こるとは想像もしなかった。将棋倒しになると後ろの人間の累積された体重が一気に先頭にぶつけられ、胸部圧迫による重傷など大きな被害に及ぶことがある。〇〇もどれだけの衝撃で頭部を強打したのだろう…血栓や出血などスキャンで分かる範囲に原因はなかった。ただ無事に目を開けるまで、心の警鐘が鳴り続ける。
「とりあえず大きな外傷、頭部の出血もねえ。船長室で休ませる。何か周囲に動きがあれば報告しろ。」
そう周囲に声をかけ、鬼哭を肩にかけると〇〇を抱き上げた。「キャプテン、運ぶ?」とベポが声をかけてきたが、それはいらねぇと言う代わりに俺は踵を返して無言で船長室に向かった。
✳ ✳ ✳
敵船の襲撃を受けたが、こちらも懸賞金と経験で言えば名も知らぬ海賊団に負けるような面子ではない。ただ、無益な殺生は元来好まないこともあり、ポーラータング号の機動性を活かして、そのまま相手を撒くことにした。
相手の背後に回り込んだ後、そのまま潜水しようとしたところ予想だにしない砲撃を食らう。明らかに敵船の砲台はこちらを向いていない。
いったいどこから、どうやって…?
疑問は解決しないが、このまま考えるのは得策ではない。また数発、ポーラータング号に直接当たりはしないものの、大きく海面が揺れた。
「潜水する。全員配置につけ!」
「アイアーイ」とベポの大きな声が聞こえると同時に、ガクンと一際大きな揺れが船を襲った。咄嗟に機材に捕まり体勢を維持する。潜水してしまえば、相手もこちらに手を出すことはできない。とりあえず念には念を…と、潜水後も相手の後方に舵を切り十分に距離をとった。
ようやく船内に落ち着きが戻り、先ほどの砲台ではない何かの攻撃について考えを戻す。
絶対に砲台はこちらを向いていなかった。
甲板にも手持ち大砲を持つような狙撃手はいなかった。
悪魔の実か、何かなのか…。
いずれにせよ名もない海賊だとたかをくくった判断ミスで、ポーラータング号を、クルー達を危険に晒した自分に怒りを覚える。
「お前ら、無事か?!」
点呼のつもりで船内の奥まで聞こえるよう声を張り上げる。「元気でーす」とノリよく答えるシャチとペンギンに安心していたが、目下一番安否が知りたい〇〇の姿も声も確認できない。名指しで名を呼び、その無事を確認したいところだが他のクルーがいる手前、視線を走らせ〇〇の姿を探す。
「〇〇!!!しっかり、大丈夫?!」
そこにイッカクの声が響いた。
背筋に冷たいものが走り、クルーが密集していた操舵室の前線から人をかきわけて、イッカクの元に駆け寄る。クルー達の小さな輪があり、その中心で倒れた〇〇の肩を揺さぶるイッカクの姿があった。
「動かすな!!」
外傷は見当たらないものの目を閉じたままピクリとも動かない〇〇。頭へのダメージなら、原因が分かるまで安易に刺激は与えない方が良い。
『スキャン』
すぐさま鬼哭を手に取り、横になった〇〇にかざすと、ゆっくりと左右に刃を流す。動作を続けながら、〇〇を取り巻くクルー達に順次声をかけ、指示を出した。
「ペンギン、操舵室でハクガンのサポート。シャチはソナー室で敵船の進路並びに距離を確認しとけ。」
スキャンが終わる。脳外科は専門ではないが、注意深く見ても血栓や出血は確認できなかったので、それで一先ず胸を撫で下ろす。ただ状況は何も打開されたわけではない…。
「イッカク、状況が分からねえ。何が起きた?」
イッカク曰く、潜水するタイミングの大きな揺れで船内廊下に詰めかけていた複数名のクルーがバランスを崩して倒れかけた。そしてその先頭にいた〇〇が、後ろのクルー達の体重負荷を受けた状態で、廊下にあるパイプの金属バルブ部分に頭を強打したらしい。
たまに記事にもなるが、集団内で将棋倒しによる事故。それがまさか自分の船で起こるとは想像もしなかった。将棋倒しになると後ろの人間の累積された体重が一気に先頭にぶつけられ、胸部圧迫による重傷など大きな被害に及ぶことがある。〇〇もどれだけの衝撃で頭部を強打したのだろう…血栓や出血などスキャンで分かる範囲に原因はなかった。ただ無事に目を開けるまで、心の警鐘が鳴り続ける。
「とりあえず大きな外傷、頭部の出血もねえ。船長室で休ませる。何か周囲に動きがあれば報告しろ。」
そう周囲に声をかけ、鬼哭を肩にかけると〇〇を抱き上げた。「キャプテン、運ぶ?」とベポが声をかけてきたが、それはいらねぇと言う代わりに俺は踵を返して無言で船長室に向かった。