知らないけど分かってる。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
知らないけど分かってる。15
* * *
「あちぃー」
甲板に出て、開口一番に出た台詞。
北の海(ノースブルー)出身のオレにとって、やはり寒さより暑さの方が体に堪える。久しぶりのキャプテンとの稽古、鈍った身体を鍛え直すには嬉しい機会だが、果たしてこの暑さの中、満足のいくパフォーマンスができるのだろうか……防戦一方、全身青痣になり風呂で悲鳴を上げる姿が頭をよぎるが、不吉な未来を追い払うように頭を振った。
「シャチ?」
甲板までエスコートした〇〇が、不思議そうにこちらを見る。ポーラータング号に乗って半年、本来なら稽古も見慣れた光景だろうが、今の〇〇には未知の出来事だ。〇〇が驚かないように、簡単にこれから起こることを伝えてやる。
オレを含むポーラータング号のクルー達は得意不得意はあれども戦いの心得はある。苦手な者は最低限自分を守る術として、逆に長けている者は戦況を有利にしたり味方を守るために、いずれも必要不可欠なスキルだ。
キャプテンの戦闘力の高さたるや、新聞を騒がせている通りだし、王下七武海の名に恥じない強さだ。……となると、タイマンで勝てるわけもなく、悪魔の実の能力なし、鬼哭なしの棒術・体術のみ、クルー側はツーマンセル(2人組)という制約をこれでもかと盛り込んだ形式で稽古を行う。それでも一本とれないのだから、トラファルガー・ローという男は昔からの付き合いとは言え末恐ろしいヤツだ。
ぐうの音も出ない程、こてんぱんにやられるわけだが、もともと医者気質というか、課題点を明らかにして相手に伝えるのが上手い人間なので、クルーの戦い方の悪癖を指摘したり、戦い方の幅が広がるヒントをくれる。そんな繋がりも嬉しくて、身体的疲労は激しいものの、オレ達は皆キャプテンとの稽古の時間が好きだった。
「おい、動きが単調だぞ。ヘバってんじゃねぇ。」
キャプテンの煽りとも言えるような檄が聞こえて、目を向ける。先ほどのキャプテン直々のご指名の通りメイン甲板では、ペンギンとイッカクが2人でキャプテンに挑みかかっている。稽古も中盤なのか、ペンギンは上半身裸、イッカクはタンクトップ姿で滝のような汗をかいている。一方、キャプテンも白いシャツを脱ぎ、普段は隠された刺青を汗で光らせているが……マジであの人、動くフェロモンの塊だな。汗はかいているもののペンギンとイッカクの比ではなく、どこか涼しい顔で2人の攻撃をいなしていた。
キャプテンの檄にあてられてか、ペンギンが姿勢をぐっと下げて、棒術で勢いよくキャプテンに足払いをかける。鋭く薙払われた棒を、高い跳躍で避けたキャプテンを空中でイッカクが待ち構えていた。
「おぉ、上手い!」
普段見ることのない、相棒とイッカクの即興の連携技に思わず声が出た。確かにオペオペの実の能力を使わないならば、空中での移動や体勢変更はたかが知れている。空中で狙い撃ちされたキャプテンにクルーがよもや一撃を加えるか、と固唾を飲んで見守る。
しかし……、流石は器用な男。
キャプテンは足を払うために姿勢を低くしたペンギンの肩に足をかけると、それを足場に更にイッカクを越える高さで跳躍する。ペンギンもキャプテンの体重を一気に肩に受けた拍子にバランスを崩し、「うえっ」と情けない声を出して、盛大に地面に倒れこんだ。
イッカクの上をとったキャプテンは、棒でイッカクの肩を下に向かって押すと、こちらもバランスを崩したイッカクはそのまま一撃もあてることなくペンギンの真上に落下し、ペンギンは本日二度目の蛙が潰れたような声を上げた。
「…身のこなしが早いイッカクが対空中戦に持ち込むのは良いが、イッカクが上だと攻撃が軽くて相手のダメージに繋がりにくい。だとしたら、跳躍力と打撃の強さのバランスがとれてるペンギンが上が良いんじゃねえか。とはいえ、普段連携をとる機会が少ないお前らが、即興で考えたにしては良いコンビネーションだった。」
こうやってツンの後にデレるから、人たらしなんだあの人は。次の相手はジャンバールとウニのようだ、じゃあ俺はまだ先かななんて考えながら、隣の〇〇の様子を伺う。
尊敬とも畏怖ともつかない表情で、真剣な眼差しをキャプテンに向けている。
……頬なんて赤らめちゃって可愛いなぁ。
なんて呑気に思っていたが、真剣な表情と相反して上半身が水中の水草のようにふらついている〇〇を見て、そういえばこの子は寝不足なんだったと炎天下の中で立ちっぱなしの彼女を慌てて気遣う。
「あー!〇〇、ごめんな。寝不足だし、直射日光だし、しんどかったよな!?休むか?船内戻るか!!な?な?」
慌てふためくオレを見て、〇〇はふふと軽く微笑む。「あ、可愛い」と理性を飛び越えて本能がポロリと口から出てきた。素直に見惚れてしまうがこんな感情はキャプテンにばれないよう墓まで持っていこうと心に誓う。
「シャチ、ありがとう。ちょっと疲れたけど、大丈夫。もう少し皆の稽古を見ていたいな。すごい、カッコいい……。昨日のご飯の時と、雰囲気がまた全然違うね。」
こんな熱い目で見つめられるなら、よーしオレも頑張っちゃおうかな。なんて俄然やる気が出てきたとは言え、〇〇がフラフラなのは看過できず、まずは少し日陰で休むように伝える。
「どうせ次の立ち会いが始まるまで、少し休憩もあるし、こっちで休みな。」
オレと〇〇はサブ甲板から下を覗き込むように見学していたけど、ここにはビーチパラソルとビーチチェアが一脚だけ用意されている。稽古をしているみんなの荷物置きになっているが、〇〇が座れるように荷物を適当に退かすと「ささ、どうぞお嬢さん。」と持ち前のスマートさで〇〇を誘った。
* * *
「あちぃー」
甲板に出て、開口一番に出た台詞。
北の海(ノースブルー)出身のオレにとって、やはり寒さより暑さの方が体に堪える。久しぶりのキャプテンとの稽古、鈍った身体を鍛え直すには嬉しい機会だが、果たしてこの暑さの中、満足のいくパフォーマンスができるのだろうか……防戦一方、全身青痣になり風呂で悲鳴を上げる姿が頭をよぎるが、不吉な未来を追い払うように頭を振った。
「シャチ?」
甲板までエスコートした〇〇が、不思議そうにこちらを見る。ポーラータング号に乗って半年、本来なら稽古も見慣れた光景だろうが、今の〇〇には未知の出来事だ。〇〇が驚かないように、簡単にこれから起こることを伝えてやる。
オレを含むポーラータング号のクルー達は得意不得意はあれども戦いの心得はある。苦手な者は最低限自分を守る術として、逆に長けている者は戦況を有利にしたり味方を守るために、いずれも必要不可欠なスキルだ。
キャプテンの戦闘力の高さたるや、新聞を騒がせている通りだし、王下七武海の名に恥じない強さだ。……となると、タイマンで勝てるわけもなく、悪魔の実の能力なし、鬼哭なしの棒術・体術のみ、クルー側はツーマンセル(2人組)という制約をこれでもかと盛り込んだ形式で稽古を行う。それでも一本とれないのだから、トラファルガー・ローという男は昔からの付き合いとは言え末恐ろしいヤツだ。
ぐうの音も出ない程、こてんぱんにやられるわけだが、もともと医者気質というか、課題点を明らかにして相手に伝えるのが上手い人間なので、クルーの戦い方の悪癖を指摘したり、戦い方の幅が広がるヒントをくれる。そんな繋がりも嬉しくて、身体的疲労は激しいものの、オレ達は皆キャプテンとの稽古の時間が好きだった。
「おい、動きが単調だぞ。ヘバってんじゃねぇ。」
キャプテンの煽りとも言えるような檄が聞こえて、目を向ける。先ほどのキャプテン直々のご指名の通りメイン甲板では、ペンギンとイッカクが2人でキャプテンに挑みかかっている。稽古も中盤なのか、ペンギンは上半身裸、イッカクはタンクトップ姿で滝のような汗をかいている。一方、キャプテンも白いシャツを脱ぎ、普段は隠された刺青を汗で光らせているが……マジであの人、動くフェロモンの塊だな。汗はかいているもののペンギンとイッカクの比ではなく、どこか涼しい顔で2人の攻撃をいなしていた。
キャプテンの檄にあてられてか、ペンギンが姿勢をぐっと下げて、棒術で勢いよくキャプテンに足払いをかける。鋭く薙払われた棒を、高い跳躍で避けたキャプテンを空中でイッカクが待ち構えていた。
「おぉ、上手い!」
普段見ることのない、相棒とイッカクの即興の連携技に思わず声が出た。確かにオペオペの実の能力を使わないならば、空中での移動や体勢変更はたかが知れている。空中で狙い撃ちされたキャプテンにクルーがよもや一撃を加えるか、と固唾を飲んで見守る。
しかし……、流石は器用な男。
キャプテンは足を払うために姿勢を低くしたペンギンの肩に足をかけると、それを足場に更にイッカクを越える高さで跳躍する。ペンギンもキャプテンの体重を一気に肩に受けた拍子にバランスを崩し、「うえっ」と情けない声を出して、盛大に地面に倒れこんだ。
イッカクの上をとったキャプテンは、棒でイッカクの肩を下に向かって押すと、こちらもバランスを崩したイッカクはそのまま一撃もあてることなくペンギンの真上に落下し、ペンギンは本日二度目の蛙が潰れたような声を上げた。
「…身のこなしが早いイッカクが対空中戦に持ち込むのは良いが、イッカクが上だと攻撃が軽くて相手のダメージに繋がりにくい。だとしたら、跳躍力と打撃の強さのバランスがとれてるペンギンが上が良いんじゃねえか。とはいえ、普段連携をとる機会が少ないお前らが、即興で考えたにしては良いコンビネーションだった。」
こうやってツンの後にデレるから、人たらしなんだあの人は。次の相手はジャンバールとウニのようだ、じゃあ俺はまだ先かななんて考えながら、隣の〇〇の様子を伺う。
尊敬とも畏怖ともつかない表情で、真剣な眼差しをキャプテンに向けている。
……頬なんて赤らめちゃって可愛いなぁ。
なんて呑気に思っていたが、真剣な表情と相反して上半身が水中の水草のようにふらついている〇〇を見て、そういえばこの子は寝不足なんだったと炎天下の中で立ちっぱなしの彼女を慌てて気遣う。
「あー!〇〇、ごめんな。寝不足だし、直射日光だし、しんどかったよな!?休むか?船内戻るか!!な?な?」
慌てふためくオレを見て、〇〇はふふと軽く微笑む。「あ、可愛い」と理性を飛び越えて本能がポロリと口から出てきた。素直に見惚れてしまうがこんな感情はキャプテンにばれないよう墓まで持っていこうと心に誓う。
「シャチ、ありがとう。ちょっと疲れたけど、大丈夫。もう少し皆の稽古を見ていたいな。すごい、カッコいい……。昨日のご飯の時と、雰囲気がまた全然違うね。」
こんな熱い目で見つめられるなら、よーしオレも頑張っちゃおうかな。なんて俄然やる気が出てきたとは言え、〇〇がフラフラなのは看過できず、まずは少し日陰で休むように伝える。
「どうせ次の立ち会いが始まるまで、少し休憩もあるし、こっちで休みな。」
オレと〇〇はサブ甲板から下を覗き込むように見学していたけど、ここにはビーチパラソルとビーチチェアが一脚だけ用意されている。稽古をしているみんなの荷物置きになっているが、〇〇が座れるように荷物を適当に退かすと「ささ、どうぞお嬢さん。」と持ち前のスマートさで〇〇を誘った。