知らないけど分かってる。
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知らないけど分かってる。11
* * *
シャワー室の扉の外に、私の声を聞きつけたイッカクの気配を感じた。そりゃそうだ、あんな叫び声を聞いたら何事かと思うだろう…。冷静に考えれば叫ばないという選択肢もあっただろうに、数秒前の頭が回っていない浅はかな自分を恨む。
ただ、どうしても。
この目の前に映った自分の体を見て、冷静ではいられなかった。
普段服に隠されている私の体の至るところに、花びらのようだと言えば聞こえは良いが…
身に覚えのない無数の鬱血痕が散りばめられている。
流石の私でも分かる。
これは男女の行為による、アレだ。
一体誰と?
いつ?
どうして?
寝不足で頭が回らない中で、冷静な判断もできず最悪のシナリオばかり頭に思い描いてしまう。
ただ辛うじて、こんな姿を他人に見られるわけにはいかないと「イッカク、大丈夫。大きな虫がいて、思わず叫んじゃった、本当にごめん。」と寸でのところでイッカクがシャワー室のドアにタックルするのを防いだ。
「本当?大丈夫なの?」
イッカクはいかにも納得していません、と疑うように聞いてくる。とにかく心配させまいと努めて明るい声で「大丈夫、大丈夫。ごめんね。」と続けると、ようやく安心したのか脱衣場の外に出たようだ。扉の閉まる音を聞いてから、恐る恐る自分の体と対峙する。
一度、大声を出すと言う失態をしたからか、幾分冷静になり自分の体を観察する。
無数に付いた紛れもないキスマーク。
気づきたくもなかったが、よくよく見ると色の濃淡があり、つい最近付けられたであろう鮮やかな赤紫の痕から、おそらく数日経過しているだろう鈍く黄みがかった痕まで…。
…これは1回どころの痕じゃない。
何してるんだ、一昨日までの自分。
最早、自分自身のことなのに、過去の自分が何を考え行動して、こんな状況に陥っているのか想像もつかない。目の前に映る自分が全く知らない他人のようで、急に怖くなり鏡の中の自分から目を背けた。
行為の名残となった痕は、鎖骨、乳房、腹、鼠径部、太股の内側…至るところに残っており、これ以上、痕を数えるのも場所を確認する勇気も起きず、私は頭から冷水をぶっかけた。
*
「イッカク、さっきはごめんなさい。」
そう言いながら、〇〇は困ったような笑顔で脱衣場から出てきた。余程慌てていたのか、髪の先からポタポタと滴が垂れている。この気持ちが庇護欲か母性かは分からないが、雨に打たれた小動物を思わせる姿が放っておけず、〇〇が首からかけたタオルを奪い取ると頭をガシガシと拭いてやる。
「あのねぇ、そんな姿だと風邪引くでしょ?ただでさえ、病み上がりと寝不足で体力落ちてるって言うのに。」
「はは、ごめんね。」
また、だ。
この子の困ったような笑顔。
既視感があると思ったら、この船に乗ったばかりの頃はよくこの笑顔を顔に張り付けてた。まだ自分の居場所が分からなくて、ふわふわと渡り鳥のように飛んでいきそうな頃。
もう随分その顔を見ていないと思ったけれど、ある意味それは、ハートの海賊団が〇〇にとって帰るべき巣になったということなのだろう。
そんな矢先の今回の事故。
以前は彼女も自分の意思の下、この船に乗船したが、今回はある意味「気がついたら乗っていた」状態だ。前回と事情は全く異なっている。もうすぐ島に着くというのに、キャプテンも今いちどうしたいのか分からない。〇〇を手元に残したいのか、彼女の新しい人生に自由を与えるのか…。
「恋人なんだから、ガツガツいけば良いものを…。」
「え?」
思わず不満が口に出ていたようで、〇〇が聞き返してくる。なんでもないよと言わんばかりに、私は〇〇の頭をタオルですっぽり包んでやった。
* * *
シャワー室の扉の外に、私の声を聞きつけたイッカクの気配を感じた。そりゃそうだ、あんな叫び声を聞いたら何事かと思うだろう…。冷静に考えれば叫ばないという選択肢もあっただろうに、数秒前の頭が回っていない浅はかな自分を恨む。
ただ、どうしても。
この目の前に映った自分の体を見て、冷静ではいられなかった。
普段服に隠されている私の体の至るところに、花びらのようだと言えば聞こえは良いが…
身に覚えのない無数の鬱血痕が散りばめられている。
流石の私でも分かる。
これは男女の行為による、アレだ。
一体誰と?
いつ?
どうして?
寝不足で頭が回らない中で、冷静な判断もできず最悪のシナリオばかり頭に思い描いてしまう。
ただ辛うじて、こんな姿を他人に見られるわけにはいかないと「イッカク、大丈夫。大きな虫がいて、思わず叫んじゃった、本当にごめん。」と寸でのところでイッカクがシャワー室のドアにタックルするのを防いだ。
「本当?大丈夫なの?」
イッカクはいかにも納得していません、と疑うように聞いてくる。とにかく心配させまいと努めて明るい声で「大丈夫、大丈夫。ごめんね。」と続けると、ようやく安心したのか脱衣場の外に出たようだ。扉の閉まる音を聞いてから、恐る恐る自分の体と対峙する。
一度、大声を出すと言う失態をしたからか、幾分冷静になり自分の体を観察する。
無数に付いた紛れもないキスマーク。
気づきたくもなかったが、よくよく見ると色の濃淡があり、つい最近付けられたであろう鮮やかな赤紫の痕から、おそらく数日経過しているだろう鈍く黄みがかった痕まで…。
…これは1回どころの痕じゃない。
何してるんだ、一昨日までの自分。
最早、自分自身のことなのに、過去の自分が何を考え行動して、こんな状況に陥っているのか想像もつかない。目の前に映る自分が全く知らない他人のようで、急に怖くなり鏡の中の自分から目を背けた。
行為の名残となった痕は、鎖骨、乳房、腹、鼠径部、太股の内側…至るところに残っており、これ以上、痕を数えるのも場所を確認する勇気も起きず、私は頭から冷水をぶっかけた。
*
「イッカク、さっきはごめんなさい。」
そう言いながら、〇〇は困ったような笑顔で脱衣場から出てきた。余程慌てていたのか、髪の先からポタポタと滴が垂れている。この気持ちが庇護欲か母性かは分からないが、雨に打たれた小動物を思わせる姿が放っておけず、〇〇が首からかけたタオルを奪い取ると頭をガシガシと拭いてやる。
「あのねぇ、そんな姿だと風邪引くでしょ?ただでさえ、病み上がりと寝不足で体力落ちてるって言うのに。」
「はは、ごめんね。」
また、だ。
この子の困ったような笑顔。
既視感があると思ったら、この船に乗ったばかりの頃はよくこの笑顔を顔に張り付けてた。まだ自分の居場所が分からなくて、ふわふわと渡り鳥のように飛んでいきそうな頃。
もう随分その顔を見ていないと思ったけれど、ある意味それは、ハートの海賊団が〇〇にとって帰るべき巣になったということなのだろう。
そんな矢先の今回の事故。
以前は彼女も自分の意思の下、この船に乗船したが、今回はある意味「気がついたら乗っていた」状態だ。前回と事情は全く異なっている。もうすぐ島に着くというのに、キャプテンも今いちどうしたいのか分からない。〇〇を手元に残したいのか、彼女の新しい人生に自由を与えるのか…。
「恋人なんだから、ガツガツいけば良いものを…。」
「え?」
思わず不満が口に出ていたようで、〇〇が聞き返してくる。なんでもないよと言わんばかりに、私は〇〇の頭をタオルですっぽり包んでやった。