知らないけど分かってる。
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知らないけど分かってる。
* * *
「目、覚めたか?」
ゴゥンゴゥンという機械の重低音が頭に響く。うっすらと目を開けると見慣れない天井と、私の足元から抑揚のない静かな声が、まだ鈍い痛みが残る頭に刺激を与えた。
「…ここは?」
声のした方に顔を向けると、切れ長の鋭い目と胸元に大きな刺青を覗かせる男性が、こちらに視線を投げ掛けていた。私はこの男性を知っている…彼はかの有名な王下七武海、死の外科医トラファルガー・ローだ。
「七武海!?なんで、どうして!!」
目の前に悪名高い海賊がいる。状況が読めず、あまりの恐怖に思わず飛び起き、ベッドの上で身を守るように壁に後退る。
「〇〇、おまえ何言ってやがる…」
ローは訝しげに顔をしかめると、こちらに向かって手を伸ばす。私は背後にはもう壁しかないのに、少しでもその手から距離をとろうと身を捩った。
「!?」
予想だにしなかった反応だったのか、ローは伸ばしかけた手を止め、少し宙を彷徨った後、自分を落ち着かせるように腕を組み、大きく息を吐いた。
「お前、自分の名前は分かるか?」
「〇〇…」
「俺の名前を知っているか?」
「王下七武海、死の外科医トラファルガー・ロー…」
「…。…お前、自分が何故ここにいるか分かってるか?」
この質問に思わず固まる。私はなぜこの海賊と一緒にいるのだろうか。しかもベッドに横になって…。
急に押し黙った私の様子をしばらく何も言わずに見ていたローは、はぁと大きく息を吐くと「少しここにいろ」と言い残し部屋を出ていく。
急に1人になり緊張がとけたからか、またドサッとベッドに体を沈ませた。天井を仰ぎ見ながら、何とか自分の記憶を掘り起こす。自分の名前、年齢は分かる。この部屋に置かれた物の名前、時計や本、地球儀、椅子…こういった名称や使い方も分かるようだ。でも、私〇〇が何者で、ここで何をしているのか靄がかかったようにはっきりしない。それが気持ち悪く、目が回るようで思わずギュッと強く目を閉じた。
* * *
気がついたら眠ってしまっていたのか、ふと目を開けるとベッドの脇に大きな白いモコモコの塊が乗っかっている。
「なに、これ…?」
白い塊に恐る恐る触れようとした時、塊はピクリと小さく動いた後、ガバリとすごい勢いで伸び上がった。
「!?!?」
声にならない声が口をつく。小さな塊が小山になった…とよくよく見れば、ハートの海賊団の航海士ベポだ。彼についても私との関係性は全く分からないが、存在として頭は認識しているようだった。
彼はどうやらベットの横に座り込み、ベッドに頭を乗せてうたた寝していたらしい。私の気配に気がついて、慌てて目を覚ましたようだった。
「あっ、〇〇目が覚めたんだね」
ベポは嬉しそうに目を細めると、「〇〇の側にいるようにキャプテンに言われて、眺めてるうちに気がついたら寝てたよ」とモゴモゴと言い訳するように続ける。
少なくとも寝起きに視界に入った生物がベポで良かった。また目が覚めて、この船の船長の人を殺しかねないあの射るような視線は耐え難かった。
「ねぇ、〇〇。本当に何も覚えてないの?」
ベポが悲しそうに訪ねる。その姿に罪悪感を覚えながら、私は小さく頷く。はっきり責められているわけではないのだが、自分のせいで彼を少なからず傷つけてしまっていることには責任を感じてしまうのだ。
「ベポ…くん。私が何故ここにいるのか、私と君達の関係を教えてくれない?」
熊相手に「さん」付けで呼ぶのが正しいのか分からず言い澱んでしまったが、私は彼に今一番知りたいことを質問した。
* * *
「目、覚めたか?」
ゴゥンゴゥンという機械の重低音が頭に響く。うっすらと目を開けると見慣れない天井と、私の足元から抑揚のない静かな声が、まだ鈍い痛みが残る頭に刺激を与えた。
「…ここは?」
声のした方に顔を向けると、切れ長の鋭い目と胸元に大きな刺青を覗かせる男性が、こちらに視線を投げ掛けていた。私はこの男性を知っている…彼はかの有名な王下七武海、死の外科医トラファルガー・ローだ。
「七武海!?なんで、どうして!!」
目の前に悪名高い海賊がいる。状況が読めず、あまりの恐怖に思わず飛び起き、ベッドの上で身を守るように壁に後退る。
「〇〇、おまえ何言ってやがる…」
ローは訝しげに顔をしかめると、こちらに向かって手を伸ばす。私は背後にはもう壁しかないのに、少しでもその手から距離をとろうと身を捩った。
「!?」
予想だにしなかった反応だったのか、ローは伸ばしかけた手を止め、少し宙を彷徨った後、自分を落ち着かせるように腕を組み、大きく息を吐いた。
「お前、自分の名前は分かるか?」
「〇〇…」
「俺の名前を知っているか?」
「王下七武海、死の外科医トラファルガー・ロー…」
「…。…お前、自分が何故ここにいるか分かってるか?」
この質問に思わず固まる。私はなぜこの海賊と一緒にいるのだろうか。しかもベッドに横になって…。
急に押し黙った私の様子をしばらく何も言わずに見ていたローは、はぁと大きく息を吐くと「少しここにいろ」と言い残し部屋を出ていく。
急に1人になり緊張がとけたからか、またドサッとベッドに体を沈ませた。天井を仰ぎ見ながら、何とか自分の記憶を掘り起こす。自分の名前、年齢は分かる。この部屋に置かれた物の名前、時計や本、地球儀、椅子…こういった名称や使い方も分かるようだ。でも、私〇〇が何者で、ここで何をしているのか靄がかかったようにはっきりしない。それが気持ち悪く、目が回るようで思わずギュッと強く目を閉じた。
* * *
気がついたら眠ってしまっていたのか、ふと目を開けるとベッドの脇に大きな白いモコモコの塊が乗っかっている。
「なに、これ…?」
白い塊に恐る恐る触れようとした時、塊はピクリと小さく動いた後、ガバリとすごい勢いで伸び上がった。
「!?!?」
声にならない声が口をつく。小さな塊が小山になった…とよくよく見れば、ハートの海賊団の航海士ベポだ。彼についても私との関係性は全く分からないが、存在として頭は認識しているようだった。
彼はどうやらベットの横に座り込み、ベッドに頭を乗せてうたた寝していたらしい。私の気配に気がついて、慌てて目を覚ましたようだった。
「あっ、〇〇目が覚めたんだね」
ベポは嬉しそうに目を細めると、「〇〇の側にいるようにキャプテンに言われて、眺めてるうちに気がついたら寝てたよ」とモゴモゴと言い訳するように続ける。
少なくとも寝起きに視界に入った生物がベポで良かった。また目が覚めて、この船の船長の人を殺しかねないあの射るような視線は耐え難かった。
「ねぇ、〇〇。本当に何も覚えてないの?」
ベポが悲しそうに訪ねる。その姿に罪悪感を覚えながら、私は小さく頷く。はっきり責められているわけではないのだが、自分のせいで彼を少なからず傷つけてしまっていることには責任を感じてしまうのだ。
「ベポ…くん。私が何故ここにいるのか、私と君達の関係を教えてくれない?」
熊相手に「さん」付けで呼ぶのが正しいのか分からず言い澱んでしまったが、私は彼に今一番知りたいことを質問した。
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