るっく、みー!
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(3両目、三角印…っとここやな)
「よっこいせっと」
車椅子用のスロープを下ろしたクラウドはふぅ、と小さく息をつく。
(よし、次のトレイン到着時間は……)
「なぁなぁ、姉ちゃんいーじゃねぇかよ」
「だから、待ち合わせをしているので…」
「そう言ってさっきからずーっと1人じゃねぇの。どうせ来ねえって。だったら俺らと遊びに行こうよ」
(なんや…?)
腕時計で時間を確認していた折に聞こえた不穏な会話にキョロキョロと周囲を見回すと、死角になるような場所で若い女性1人を柄の悪い男性3名が囲んでいる。
女性の方は明らかに迷惑そうな表情を浮かべているが、男3人という数の手前強く出られないようでいた。
断りにくい雰囲気で網を張って女性が折れるのを待っているのだろう。
(あれは、明らかな迷惑行為やな…注意をっと…あ、)
駆けつけようとしたクラウドは一歩踏み出しかけて立ち止まる。
自分が車椅子を利用した乗客が乗った車両を待っている事を思い出したのだ。
(しもた!せやったらインカムで誰か他の……)
「ちょっと!なにしてるのよ!」
突然耳に届いた甲高い声に驚いたクラウドは動きを止め、声のした方をみる。
(あ、あかん、あかんて!)
そこには、小さな女の子が腰に手を当てて男3人に食ってかかっていた。
「おねえさん、こまってるじゃない!やめなさいよ!」
「ぁあ?なんだこのガキ」
クラウドが無線を入れるため慌ててトランシーバー型のインカムを構えた時、横から伸びてきた手がクラウドの手をインカムごと掴み静止させた。
「クダリボス!」
クダリは掴んだ手を離してそのままひらひらと振り、トラブルの渦中に走って行く。
「が、がきじゃないわ!もうりっぱなレディなんだから!」
少女の大人ぶった発言に男3人がゲラゲラと笑う。
「俺たちガキには用ねぇんだわ。さっさとママの元に帰んな」
少女は目から涙を溢れさせながら男3人を睨みつける。
と、そこに軽快な声がかかった。
「こんにちは!ぼく、クダリ。サブウェイマスターをしてる。お兄さんたち、それ迷惑行為!彼女たちすっごく困ってる」
「げっ!サブウェイマスター」
思いもよらない人物の登場に男たちが動揺する。
萎縮した男たちは数歩下がったが、男の1人が声を張り上げたことで踏みとどまった。
「迷惑行為じゃねぇよ!俺たち3人でただ駄弁ってただけだぜ?」
「そーそー!おねーさんとはちょっとお話ししてただけだよなあ?」
「暇そーだったから話し相手になってあげてただけみてぇな?」
1人を真似て他の2人も賛同するように続く。
ニタニタと笑みを浮かべて仲間内で目配せをし、頷き合う。
「うそよ!このおねえさんにしつこくいいよってたわ!」
「何だとこのガキ…!!いででで!!!」
張り上げる声に苛ついた男の1人が少女の頭を掴もうと腕を伸ばし、その腕をクダリが捻った。
「それはダメ。ジュンサーさんに相談しなくちゃならなくなる。いやでしょ?」
ジュンサーという単語に分かりやすく渋い顔をする男たちを気にせず尚も続ける。
「あとね、君たち常習犯。報告、何件か上がってる。気をつけて。これ以上重ねると、厳重注意じゃ済まなくなる」
背筋が凍るようなクダリの声音に男たちは驚愕に目を見開いて黙り込んだ。
一刻も早くこの場から逃げ出したそうな雰囲気だ。
その様子にクダリはパッと腕を離してさっきまでの冷たい空気を切り替え、明るい声でビシッと指をさす。
「それに男なら、ナンパする時はマンツーマン!これ大事!」
クダリは片膝をついて少女と視線を合わせる。
「さっきはありがとね!きみ、とっても勇敢!」
注意を受けた男たちはそそくさとその場を離れていき、囲まれていた女性も少女とクダリに礼を行ってトレインに乗車して行った。
クラウドはそのトレインから乗客を降ろして、車椅子用スロープを畳みながら少女とクダリを遠巻きに眺める。
「とうぜんよ!わたしはしょうらい、たくさんの"しようにん"をかかえる、おじょうさまになるんだから!もっとりっぱなレディにならなきゃ!」
胸を張る少女にクダリは一つ頷いて静かに続けた。
「うん。でもね、大人の中には1人で近づいちゃいけない人もいる。きみみたいな素敵な女性も平気で泣かせる悪い大人」
自身のハンカチを取り出して、少しだけ泣きあとの残る少女の頬を優しく拭う。
「立派なレディになるなら自分の事も大切にしてあげなくちゃ!泣かされちゃったら、可愛い顔だって台無しになっちゃう」
そのままハンカチを少女に握らせてニッコリと笑った。
「だからまず、周りの大人を頼ってみて!きみを守って助けてくれる心強い大人」
「はくばのおうじさまみたいなひと?なら、あなたをたよるわ!」
少女はほんのり頬を染めてキラキラと目を輝かせて言った。
クダリは一瞬目を丸くしたが、すぐに少女と同じくらいの笑顔を浮かべる。
「うん!任せて!じゃあぼく、きみを守れるくらいの素敵な男にならなきゃ!」
普段何かとノボリの比較対象にされるため気づきにくいが、この一連のやり取りにクラウドは確かにクダリも"大人"であり、ノボリに劣らずの"紳士"であると思った。
(これをナマエちゃんに出来とったらなぁ…)
故に、同様の対応をナマエに対して発揮できないクダリを惜しいとも思った。
「クラウド!」
「あ、ボス!さっきはすいません。助かりました」
集中管理室で作業をしていたクラウドを呼び止めたクダリは気にしないでと首を振った。
「あれは仕方ない!ちゃんとインカムで報告しようとしてたし、正しい判断!それよりね、今日、業務終わってから時間ある?」
「え?まぁ、ありますけど…」
「じゃあ、1時間ぐらい、ぼくに時間割いてほしい!」
こそこそと、声を落とすクダリを怪訝に思いながらも了承の意を伝えるとクダリは分かりやすい程に上機嫌になった。
「ありがと!ナマエ!」
「はい、何ですか?」
同じく集中管理室で業務に当たっていたナマエに突然声をかける。
「今日、業務終わってからクラウドとご飯食べに行く!ぼくの奢り!せっかくだからナマエも来れば?」
(え、何それ…初耳…)
思わず隣のクダリを苦笑いで凝視するクラウド。
クダリは普段通りを意識しているようだがそわそわと視線を彷徨わせ、ぎこちなさが滲み出る態度で返事を待っている。
…確かに、業務が終わった後時間があると言ったし、クダリに時間を割くとも言った。
だが…
(…白ボス…ナンパはマンツーマンが鉄則やったんとちゃうのん…)
乗りやすい誘い文句で網を張るクダリの隣で"ボスの奢りやし時間あったらどうや?"と援護射撃をしながら、繰り返し惜しいと思うクラウドだった。
「よっこいせっと」
車椅子用のスロープを下ろしたクラウドはふぅ、と小さく息をつく。
(よし、次のトレイン到着時間は……)
「なぁなぁ、姉ちゃんいーじゃねぇかよ」
「だから、待ち合わせをしているので…」
「そう言ってさっきからずーっと1人じゃねぇの。どうせ来ねえって。だったら俺らと遊びに行こうよ」
(なんや…?)
腕時計で時間を確認していた折に聞こえた不穏な会話にキョロキョロと周囲を見回すと、死角になるような場所で若い女性1人を柄の悪い男性3名が囲んでいる。
女性の方は明らかに迷惑そうな表情を浮かべているが、男3人という数の手前強く出られないようでいた。
断りにくい雰囲気で網を張って女性が折れるのを待っているのだろう。
(あれは、明らかな迷惑行為やな…注意をっと…あ、)
駆けつけようとしたクラウドは一歩踏み出しかけて立ち止まる。
自分が車椅子を利用した乗客が乗った車両を待っている事を思い出したのだ。
(しもた!せやったらインカムで誰か他の……)
「ちょっと!なにしてるのよ!」
突然耳に届いた甲高い声に驚いたクラウドは動きを止め、声のした方をみる。
(あ、あかん、あかんて!)
そこには、小さな女の子が腰に手を当てて男3人に食ってかかっていた。
「おねえさん、こまってるじゃない!やめなさいよ!」
「ぁあ?なんだこのガキ」
クラウドが無線を入れるため慌ててトランシーバー型のインカムを構えた時、横から伸びてきた手がクラウドの手をインカムごと掴み静止させた。
「クダリボス!」
クダリは掴んだ手を離してそのままひらひらと振り、トラブルの渦中に走って行く。
「が、がきじゃないわ!もうりっぱなレディなんだから!」
少女の大人ぶった発言に男3人がゲラゲラと笑う。
「俺たちガキには用ねぇんだわ。さっさとママの元に帰んな」
少女は目から涙を溢れさせながら男3人を睨みつける。
と、そこに軽快な声がかかった。
「こんにちは!ぼく、クダリ。サブウェイマスターをしてる。お兄さんたち、それ迷惑行為!彼女たちすっごく困ってる」
「げっ!サブウェイマスター」
思いもよらない人物の登場に男たちが動揺する。
萎縮した男たちは数歩下がったが、男の1人が声を張り上げたことで踏みとどまった。
「迷惑行為じゃねぇよ!俺たち3人でただ駄弁ってただけだぜ?」
「そーそー!おねーさんとはちょっとお話ししてただけだよなあ?」
「暇そーだったから話し相手になってあげてただけみてぇな?」
1人を真似て他の2人も賛同するように続く。
ニタニタと笑みを浮かべて仲間内で目配せをし、頷き合う。
「うそよ!このおねえさんにしつこくいいよってたわ!」
「何だとこのガキ…!!いででで!!!」
張り上げる声に苛ついた男の1人が少女の頭を掴もうと腕を伸ばし、その腕をクダリが捻った。
「それはダメ。ジュンサーさんに相談しなくちゃならなくなる。いやでしょ?」
ジュンサーという単語に分かりやすく渋い顔をする男たちを気にせず尚も続ける。
「あとね、君たち常習犯。報告、何件か上がってる。気をつけて。これ以上重ねると、厳重注意じゃ済まなくなる」
背筋が凍るようなクダリの声音に男たちは驚愕に目を見開いて黙り込んだ。
一刻も早くこの場から逃げ出したそうな雰囲気だ。
その様子にクダリはパッと腕を離してさっきまでの冷たい空気を切り替え、明るい声でビシッと指をさす。
「それに男なら、ナンパする時はマンツーマン!これ大事!」
クダリは片膝をついて少女と視線を合わせる。
「さっきはありがとね!きみ、とっても勇敢!」
注意を受けた男たちはそそくさとその場を離れていき、囲まれていた女性も少女とクダリに礼を行ってトレインに乗車して行った。
クラウドはそのトレインから乗客を降ろして、車椅子用スロープを畳みながら少女とクダリを遠巻きに眺める。
「とうぜんよ!わたしはしょうらい、たくさんの"しようにん"をかかえる、おじょうさまになるんだから!もっとりっぱなレディにならなきゃ!」
胸を張る少女にクダリは一つ頷いて静かに続けた。
「うん。でもね、大人の中には1人で近づいちゃいけない人もいる。きみみたいな素敵な女性も平気で泣かせる悪い大人」
自身のハンカチを取り出して、少しだけ泣きあとの残る少女の頬を優しく拭う。
「立派なレディになるなら自分の事も大切にしてあげなくちゃ!泣かされちゃったら、可愛い顔だって台無しになっちゃう」
そのままハンカチを少女に握らせてニッコリと笑った。
「だからまず、周りの大人を頼ってみて!きみを守って助けてくれる心強い大人」
「はくばのおうじさまみたいなひと?なら、あなたをたよるわ!」
少女はほんのり頬を染めてキラキラと目を輝かせて言った。
クダリは一瞬目を丸くしたが、すぐに少女と同じくらいの笑顔を浮かべる。
「うん!任せて!じゃあぼく、きみを守れるくらいの素敵な男にならなきゃ!」
普段何かとノボリの比較対象にされるため気づきにくいが、この一連のやり取りにクラウドは確かにクダリも"大人"であり、ノボリに劣らずの"紳士"であると思った。
(これをナマエちゃんに出来とったらなぁ…)
故に、同様の対応をナマエに対して発揮できないクダリを惜しいとも思った。
「クラウド!」
「あ、ボス!さっきはすいません。助かりました」
集中管理室で作業をしていたクラウドを呼び止めたクダリは気にしないでと首を振った。
「あれは仕方ない!ちゃんとインカムで報告しようとしてたし、正しい判断!それよりね、今日、業務終わってから時間ある?」
「え?まぁ、ありますけど…」
「じゃあ、1時間ぐらい、ぼくに時間割いてほしい!」
こそこそと、声を落とすクダリを怪訝に思いながらも了承の意を伝えるとクダリは分かりやすい程に上機嫌になった。
「ありがと!ナマエ!」
「はい、何ですか?」
同じく集中管理室で業務に当たっていたナマエに突然声をかける。
「今日、業務終わってからクラウドとご飯食べに行く!ぼくの奢り!せっかくだからナマエも来れば?」
(え、何それ…初耳…)
思わず隣のクダリを苦笑いで凝視するクラウド。
クダリは普段通りを意識しているようだがそわそわと視線を彷徨わせ、ぎこちなさが滲み出る態度で返事を待っている。
…確かに、業務が終わった後時間があると言ったし、クダリに時間を割くとも言った。
だが…
(…白ボス…ナンパはマンツーマンが鉄則やったんとちゃうのん…)
乗りやすい誘い文句で網を張るクダリの隣で"ボスの奢りやし時間あったらどうや?"と援護射撃をしながら、繰り返し惜しいと思うクラウドだった。