高飛び
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決意をした時は、極めて計画的かつ理性的でした。
幸いにも、彼女はいまだわたくしの誘いを断るような素振りは一度もありません。
わたくしに対する愛情も確かに感じます。
だとするのであれば、ジョウトでの逢瀬は未だ気の迷いの域を出ない事でしょう。
彼女が初めてジョウト地方に訪れた日を合わせても通算で7日。
仮にその全ての日に"マサキ"という方に会っていたとしても、わたくしと同等かそれ以上の恋愛感情を向けるには、まだ日が浅い。
一通り頭の中で憶測を組み立て最終的な終着点へと切り替える。
であれば彼女がその方と関係を絶ち、わたくしを選ぶ"決定打"さえあればいいのだ、と。
その日の業務を終えたわたくしは予め穴を開けた避妊具をポケットに忍ばせ、深夜の彼女の部屋に急ぐ。
わざわざ外装だけでも避妊具を用意したのは後に薬で種を潰されてしまわぬよう、彼女自身も気付かぬ内に事を進める必要があったからです。
ナマエは明日、休みだったはず。
またジョウトに赴かないとも限りません。
時間が積もれば積もる程、気の迷いは本気の恋に発展して行く事でしょう。
対するわたくしは明日は遅番ですがそれ以降連勤が続き、時間が作れません。
チリチリと身を焦がす焦りが深夜という時間帯を些細な事だと感じさせました。
急がねばならない。計画の決行は早い方がいい。彼女がわたくしではなく"マサキ"と言う方に重きを置く前に。
合鍵で入った彼女の部屋は真っ暗でした。
既に就寝しているのであろうとコートを脱ぎ捨て寝室に向かおうとした時、暗がりの中で緑色のランプが小さく点滅しているのが目に入ったのです。
確か、と思い至るのはライブキャスターのボイスメール。
迷いは一瞬だけでした。
リビングに気配が無いことを確認して電気をつけると、案の定ランプの発信元は彼女のライブキャスターで液晶に表示されているのは無機質な文字の羅列。
"マサキからボイスメールがあります"
ライブキャスターには、個人情報が詰まっているため、通常中身を開くには4桁の暗証番号が必要になります。
親機から解除する手段もありますが、位置情報などと違い、解除履歴やリファラ等の痕跡が残り削除できないため、安心モードの存在自体が子機から露見してしまいます。
ロックを解除する方法…せめて4桁の数字を知る方法。
ふと、彼女のライブキャスターがタッチスクリーン式の最新モデルである事を思い出し、傾けて光に反射させる。
人差し指の指紋が特に集約している場所と重なる数字。
浮かび上がった4桁の数列パターンなどそう多くはありません。
『あ、もしもし?マサキやけど、ナマエさんのライブキャスターですか?あんな、この前言うとったジョウトの物件の話やけど、わいがええとこ見繕っといたで!決めた訳やない言うとったけど、この物件みたら一気に踏ん切りつくかもしれん言うほどめっちゃ粒ぞろいやから楽しみにしときや!また案内したるし、こっち来るとき連絡してな!ほな!』
この時初めて、わたくしは自分の認識が甘かったことを自覚いたしました。
気の迷いというレベルではもはや無かったのです。
"マサキ"は既にわたくしと同じ土俵に立ち、自らのテリトリーに引き込める提案ができる程ナマエとの距離を詰めていたのだ、と。
物件の話はナマエも乗り気なのか、"決めた訳じゃない"という点から"マサキ"が一方的に話を進めているのか。
心に澱が溜まっていくのを感じながら、ボイスメールを削除して足早にリビングを後にします。
寝室に入ると、ナマエはすやすやと寝息を立てていました。
ひとまずはわたくしのやる事は変わりません。
避妊具を出して彼女に近づいた時、微かに聞こえた声。
「………さん……」
軋んだような音は無意識に握りしめた拳が鳴らしたものか、はたまた自分自身の心が発したものか。
「今、一体どちらの名前を呼んだのですか…?」
掌に納めてあった小さな袋を乱雑にポケットに突っ込んで、寝ている彼女の肩を揺する。
「ナマエ…起きてください」
「……ん、…っ!びっくした……えっと……ノボリ…さん…?」
「ええ、そうです。ノボリでございます。ああ、起き上がらなくて結構です」
困惑している彼女を無理やり組み敷いて押さえつけ、体を開かせるべく強引に衣服に手をかける。
「…っ!えっと、あのっ……」
拒絶の言葉を発する前に彼女の口も塞いでおく。
「抵抗しなければ極力痛くもしません」
濁った感情は脅しのような言葉を吐き出させ、残った理性を急速に蝕んでいきました。
ナマエが体から力を抜いたのを確認して、自身もベルトを引き抜く。
『───今は"マサキ"などと言う方の事など忘れて、目の前のわたくしの事だけを感じてください…』
最後の一欠片の自制、それを声に出さず飲み込めたことだけが唯一の救いであると自嘲して。
"こと"の最中わたくしを見つめる彼女は終始、嬉しそうな、悲しそうな、そんな表情をしていました。
それでも確かに彼女の瞳に写っているのは紛れもないわたくしで。
胸を掻き毟りたくなるような凶暴な感情に、吐き気すら覚える程止め処なく溢れる優越感と快楽。
…何が計画的で理性的なものか。
いざ実行に移す筈だった日は自身の中で濁流のように渦巻く感情に呑まれ、とても取り繕えたものではありませんでした。
それは後日、お詫びという形でナマエに料理を振る舞ったときの話です。
あの日の翌日は早番に1人欠員が出てしまったため、わたくしが穴を埋めるため早番枠に入ることになり、気を失った彼女と言葉を交わすことは叶いませんでした。
きちんとした時間を作れたのは結構日が経ってからでしたが、ボイスメールを消したおかげか、その間彼女の位置情報がジョウトから発信される事はありませんでした。
2人で食卓を囲んでいる時、唐突に彼女が料理を戻してしまったのです。
話を聞くとこの症状がここ最近暫く続いていると言います。
料理のリクエストを聞いた時も酸味のあるものがいいと、彼女の好みとは違う要望でした。
まさかという淡い期待に心が震えます。
落ち着いた彼女を寝室に運んでカレンダーに視線を向けると、あの日から悪阻が始まる時期にも合います。
わたくしは確信いたしました。
これで、"マサキ"よりも自分の方が彼女との繋がりがより強固なものになった、と内心ほくそ笑んだのです。
「ノボリさん、なんだか機嫌が良さそうですね。いい事でもあったんですか?」
「あった…そうですね。もう直ぐある、が正しいでしょうか」
「もうすぐ……」
「ええ、もう直ぐ、とても素敵なことが…」
──あなたも、身を持って知ることになりますよ。
と、心の内で囁きかけ、彼女の胎の部分を布団越しに撫でながら、わたくしは今だけでも顔も知らない相手へ湧き出でる愉悦に身を任せることにしました。
幸いにも、彼女はいまだわたくしの誘いを断るような素振りは一度もありません。
わたくしに対する愛情も確かに感じます。
だとするのであれば、ジョウトでの逢瀬は未だ気の迷いの域を出ない事でしょう。
彼女が初めてジョウト地方に訪れた日を合わせても通算で7日。
仮にその全ての日に"マサキ"という方に会っていたとしても、わたくしと同等かそれ以上の恋愛感情を向けるには、まだ日が浅い。
一通り頭の中で憶測を組み立て最終的な終着点へと切り替える。
であれば彼女がその方と関係を絶ち、わたくしを選ぶ"決定打"さえあればいいのだ、と。
その日の業務を終えたわたくしは予め穴を開けた避妊具をポケットに忍ばせ、深夜の彼女の部屋に急ぐ。
わざわざ外装だけでも避妊具を用意したのは後に薬で種を潰されてしまわぬよう、彼女自身も気付かぬ内に事を進める必要があったからです。
ナマエは明日、休みだったはず。
またジョウトに赴かないとも限りません。
時間が積もれば積もる程、気の迷いは本気の恋に発展して行く事でしょう。
対するわたくしは明日は遅番ですがそれ以降連勤が続き、時間が作れません。
チリチリと身を焦がす焦りが深夜という時間帯を些細な事だと感じさせました。
急がねばならない。計画の決行は早い方がいい。彼女がわたくしではなく"マサキ"と言う方に重きを置く前に。
合鍵で入った彼女の部屋は真っ暗でした。
既に就寝しているのであろうとコートを脱ぎ捨て寝室に向かおうとした時、暗がりの中で緑色のランプが小さく点滅しているのが目に入ったのです。
確か、と思い至るのはライブキャスターのボイスメール。
迷いは一瞬だけでした。
リビングに気配が無いことを確認して電気をつけると、案の定ランプの発信元は彼女のライブキャスターで液晶に表示されているのは無機質な文字の羅列。
"マサキからボイスメールがあります"
ライブキャスターには、個人情報が詰まっているため、通常中身を開くには4桁の暗証番号が必要になります。
親機から解除する手段もありますが、位置情報などと違い、解除履歴やリファラ等の痕跡が残り削除できないため、安心モードの存在自体が子機から露見してしまいます。
ロックを解除する方法…せめて4桁の数字を知る方法。
ふと、彼女のライブキャスターがタッチスクリーン式の最新モデルである事を思い出し、傾けて光に反射させる。
人差し指の指紋が特に集約している場所と重なる数字。
浮かび上がった4桁の数列パターンなどそう多くはありません。
『あ、もしもし?マサキやけど、ナマエさんのライブキャスターですか?あんな、この前言うとったジョウトの物件の話やけど、わいがええとこ見繕っといたで!決めた訳やない言うとったけど、この物件みたら一気に踏ん切りつくかもしれん言うほどめっちゃ粒ぞろいやから楽しみにしときや!また案内したるし、こっち来るとき連絡してな!ほな!』
この時初めて、わたくしは自分の認識が甘かったことを自覚いたしました。
気の迷いというレベルではもはや無かったのです。
"マサキ"は既にわたくしと同じ土俵に立ち、自らのテリトリーに引き込める提案ができる程ナマエとの距離を詰めていたのだ、と。
物件の話はナマエも乗り気なのか、"決めた訳じゃない"という点から"マサキ"が一方的に話を進めているのか。
心に澱が溜まっていくのを感じながら、ボイスメールを削除して足早にリビングを後にします。
寝室に入ると、ナマエはすやすやと寝息を立てていました。
ひとまずはわたくしのやる事は変わりません。
避妊具を出して彼女に近づいた時、微かに聞こえた声。
「………さん……」
軋んだような音は無意識に握りしめた拳が鳴らしたものか、はたまた自分自身の心が発したものか。
「今、一体どちらの名前を呼んだのですか…?」
掌に納めてあった小さな袋を乱雑にポケットに突っ込んで、寝ている彼女の肩を揺する。
「ナマエ…起きてください」
「……ん、…っ!びっくした……えっと……ノボリ…さん…?」
「ええ、そうです。ノボリでございます。ああ、起き上がらなくて結構です」
困惑している彼女を無理やり組み敷いて押さえつけ、体を開かせるべく強引に衣服に手をかける。
「…っ!えっと、あのっ……」
拒絶の言葉を発する前に彼女の口も塞いでおく。
「抵抗しなければ極力痛くもしません」
濁った感情は脅しのような言葉を吐き出させ、残った理性を急速に蝕んでいきました。
ナマエが体から力を抜いたのを確認して、自身もベルトを引き抜く。
『───今は"マサキ"などと言う方の事など忘れて、目の前のわたくしの事だけを感じてください…』
最後の一欠片の自制、それを声に出さず飲み込めたことだけが唯一の救いであると自嘲して。
"こと"の最中わたくしを見つめる彼女は終始、嬉しそうな、悲しそうな、そんな表情をしていました。
それでも確かに彼女の瞳に写っているのは紛れもないわたくしで。
胸を掻き毟りたくなるような凶暴な感情に、吐き気すら覚える程止め処なく溢れる優越感と快楽。
…何が計画的で理性的なものか。
いざ実行に移す筈だった日は自身の中で濁流のように渦巻く感情に呑まれ、とても取り繕えたものではありませんでした。
それは後日、お詫びという形でナマエに料理を振る舞ったときの話です。
あの日の翌日は早番に1人欠員が出てしまったため、わたくしが穴を埋めるため早番枠に入ることになり、気を失った彼女と言葉を交わすことは叶いませんでした。
きちんとした時間を作れたのは結構日が経ってからでしたが、ボイスメールを消したおかげか、その間彼女の位置情報がジョウトから発信される事はありませんでした。
2人で食卓を囲んでいる時、唐突に彼女が料理を戻してしまったのです。
話を聞くとこの症状がここ最近暫く続いていると言います。
料理のリクエストを聞いた時も酸味のあるものがいいと、彼女の好みとは違う要望でした。
まさかという淡い期待に心が震えます。
落ち着いた彼女を寝室に運んでカレンダーに視線を向けると、あの日から悪阻が始まる時期にも合います。
わたくしは確信いたしました。
これで、"マサキ"よりも自分の方が彼女との繋がりがより強固なものになった、と内心ほくそ笑んだのです。
「ノボリさん、なんだか機嫌が良さそうですね。いい事でもあったんですか?」
「あった…そうですね。もう直ぐある、が正しいでしょうか」
「もうすぐ……」
「ええ、もう直ぐ、とても素敵なことが…」
──あなたも、身を持って知ることになりますよ。
と、心の内で囁きかけ、彼女の胎の部分を布団越しに撫でながら、わたくしは今だけでも顔も知らない相手へ湧き出でる愉悦に身を任せることにしました。